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オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》

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ロリコン万堂……

英雄……🎼🎶🎹🎶

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『♪♪♪♪♪……』


 こんなに胸踊ることがあるだろうか。



 私のためのピアノだ。誰に気兼ねもなくピアノを弾ける。

 アキラが私のために取り寄せてくれたピアノだ。


 中古だと言うが関係ない。最高だ。



「フフ……、いいのか。自由に弾いても」
 ピアノの前へ座ると、自然に顔がほころんでくる。
 ゆっくり指先で鍵盤の感触を確かめた。



「ああァ、どうぞ。レイラのために買ったんだからな。どうせ弾けると言っても『猫踏んじゃった♪』くらいだろうけど」
 相変わらずアキラは笑みを浮かべ上から目線だ。



「じゃァ……、一発、ビビんなよ!!」
 久しぶりなので嬉しくて仕方がない。



「おいおい、お嬢様が一発とか、ビビんなとか使うかよ」
 さっそく言葉遣いにクレームがついた。




「フフゥン、じゃァショパンのピアノの曲『英雄』だ!!」
 思いっきり好きなだけピアノが弾けるんだ。
 楽しい。こんなに楽しい事は久々だ。

「ショパンの英雄……!!」
 アキラは、まさかと言う顔だ。



『♪♪♪♪♪♪……』
 私の大好きなショパンの『英雄』を弾いてみせた。


 
 昨夜、クソ親父たちにコスプレイベントで暴行されかけた事件も、殴られ蹴られした少女時代も。

 ピアノを弾いている時だけ全て忘れられる。


『♪♪♪♪♪……』

 嫌な事も蔑まれて、イジメられた事も今の私には関係ない。



 ピアノを弾いている時だけが唯一、何も考えずに済んだ。




「うッ、ううゥ……」アキラも圧倒されている。
 そりゃァ、そうだろう。私がピアノを弾けると言っても、『猫踏んじゃった♪』くらいだと思っていたはずだ。

 それがショパンの『英雄』を弾いてみせたのだ。
 驚くのが当然だろう。




 もちろんあのクソ親父がピアノを買ってくれるはずもない。


 それどころか、ピアノ教室へ通う金もないので習ったことすらない。


 
 完全な独学だ。しかも音符もろくに読めないので、全て耳コピして覚えた。


 だいたい一度聞けば、何とかコピーは出来る。
 それが私の特技だ。しかし苦手な曲もある。



『ダッダァーン♪♪』



「うゥ……!!」
 ピアノを弾き終わった途端、アキラも唖然として声にならないようだ。




「どうだった。アキラ?」自信満々に訊いた。


「えェ……?」アキラも放心状態だ。


「良かったのか。それとも悪かったのか」
 別にアキラの評価など訊く必要もない。
 カレの表情を見れば一目瞭然だ。


「……」アキラは驚きの表情のまま静止している。
 


「いや、済まない。ルナ……、いやレイラ。これほどとは思わなかったよ」
 レイラと呼ぶ約束だったのに、それすらも忘れるほど驚いていた。


「フフゥン、それッて褒め言葉だよね」


「ああァ、もちろんだ。レイラお嬢様と入れ代わる最大のネックがピアノだと思っていた……」
 アゴでピアノを差した。


「どうだ。誤魔化せるか」

「いやァ……、まァ、オレはピアノに関しては素人だからな。プロか聞けば違うと思うかもしれないが。
 しかし問題はリストだ」


「リスト……、『ラ・カンパネラ』か……!!」
 聞いた途端、眉をひそめた。

 だが、どんなに練習しても無理なんだ。あの曲だけは。
 苦手な曲のひとつだ。



「そうだ。お嬢様が得意としている曲だ」


「得意……」レイラが。
 あの難しい曲を弾けるのか。



「腱鞘炎だとか、言って……。逃げ回るつもりだったが、いずれは父親の龍崎家当主の前で披露しなければならない」



「龍崎仁の前で……。リストのラ・カンパネラを」










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