異世界チートスキル持ちの奴隷は逆異世界転移させられる

ロシキ

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1章 逆転移編

11話 元奴隷は服を着てから女と話す

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女が叫んでから、近くにあった家に入って服を着た。
というか、さっきは疑問に思わなかったが、なんでここら辺の家には鍵が掛かってないんだ?
家の中も、荒らされていたというよりも慌てていたといった方がしっくりくるような感じだったし、急いで逃げたりしたのか?

そんな事を考えつつも、服を着終わったので女が待っている部屋へと向かった。
女は俺が部屋に入ると座っていた所から立ち上がって、俺に話しかけてきた。

「こ、こほん。それで?お前は何者なんだ?」

「その前に、なぜ部屋の端に行ってから話しかけてくるんだ?話すなら、もっと近くで良いだろう。

あぁ、もしかして俺の全裸を見たのを気にしているのか?別に俺は女に全裸を見られたのを気にする人間じゃないから気にするな。まあ、男が好きな男に全裸を見られたら、その男を殺すかもしれんが。

それにあんたの全裸を見た訳じゃないんだから、別に問題は無いだろう?」

「う、うるさい!!それとこれとは関係ない!!良いから、早く答えろ!!」

俺がした質問に女は顔を赤くして叫んだ。
さっきから叫びまくっている女だが、よくよく見ると顔はかなり美人だな。


おそらく年齢も20歳になるか、ならないかくらいだろうし、先程は見えなかったが白い瞳に白い長髪で汚し難い印象を受ける見た目だ。

それに、俺の全裸を見るまでは強く、少し男勝りに聞こえるが、気高い印象を受ける言葉使いに、1人で危険かと思われる場所にも行く行動力、更にはその言動を自身だけでも行って見せる為に必要な強さも持ち合わせてる。
それなのに、男の全裸を見ただけで恥じらう純粋さ。
下手をすれば狂人者が出ても、おかしくはなさそうな人間像だな。

少し悪い例えかもしれないが俺を奴隷にしていた国の貴族の連中なら、全財産の8割までなら失ってでも、この女を汚したいと思う人間も居るかもしれない。


そんな事を考えていると、女が再び叫んだ。

「おい!!何か、言ったらどうだ!!」

「ん?あぁ、すまない。強い上に、あんた程汚し難い女は見たことが無かったからな。少し見惚れていた」

「ん!?ん、んん、そ、そうか。そ、それなら、まあ良い。それで、お前は何者だ?」

俺の軽口に対して、女は一瞬だけ動揺したが、咳払いをする事で自身を落ち着けて、俺に質問してきた。
俺は女の問に対して、答えるよりも先に自己紹介をした。

「その前に俺はロキだ、よろしく。それであんたは?」

因みに、親が付けてくれた本当の名前は全く違う名前なのだが、世界が違えば名をつける際の基準も違うだろうし、名前自体も全く違う事になるだろうと思い、無駄なボロを出さないためにも誰かに遭遇したら、何処にでもありそうな名前(個人的な意見)のロキで名乗ると決めていた。
まあ、ロキは適当に決めたので、怪しまれるかもしれないが、それならそれでこの女から離れれば良いだけだ。

俺が元々決めていた名で自己紹介をすると、女は忘れていたとばかりに頷いた。

「ん、そういえば、自己紹介もしていなかったな。私は無代むたい、『無代 白貴しろき』だ。無代と呼んでくれ。

それでロキは性は何と言うんだ?」

「いや、性は無いが?」

「性は誰でもあるものじゃないか?」

ムタイにそう言われて、俺は『失敗した』と心の中で舌打ちした。

基本的に、俺が元居た世界は平民は性を持たない。
性を持っているのは、貴族とその子供、後は大商会の上の方の人間くらいだ。

何故なら、平民はそこまで街から動く事が無いし、魔物の討伐や護衛依頼で街を離れる冒険者だって「何処の街出身の何々」だと自己紹介すれば、それで済む。
更に、街に元々住んでいる人間なら、『何処の通りに面している店で働いている何々』と自己紹介すれば終わるし、平民は年に1回自己紹介すれば多い方だ。

そんな人間が性を持っていても無駄だという理由から、性を持っているのは性が必要となる貴族と大商会の上の方の人間くらいなのだ。
まあ、性を持ちたいと申請して、一定額の金を出せば性を持てるから、金持ちは性を持っているものが多くなるのは当然と言えるだろう。

その為、元々普通の平民である俺が性を持っていないのは当たり前なのだが、良い言い訳が思いつかない。
なんと答えるかを考えていると、ムタイが少し目を伏せながらいった。

「訳ありなら、何も言わなくていい。最近は訳ありじゃない人間の方が少ないからな。だが、ロキが生き返った理由は話してもらう」

「生き返った理由か。まあ、それだけなら構わない。それに理由と言っても、単純な事だ。

俺は死んでも、火の中から蘇生する事が出来る。だから、火が世界から無くならない限り、俺が死ぬ事は無い。ただ、それだけの話だ」

俺がそう答えると、ムタイはため息をついた。

「はぁ~、そうか。復活が私にも使えれば、もう少し無茶を出来るようになると思ったのだがな」

「もう少し無茶をって、既に十分無茶をしているんじゃないか?ムタイと一瞬だが攻防をして、後衛向きだというのは理解出来た。

もちろん、前衛の真似はするんだろうが、それは前衛がいる前提で、前衛がムタイの所まで来る時間を稼ぐために身に着けたものだろ?それなのに前衛も連れないで1人で行動して、どうしたんだ?」

俺がムタイとの攻防を思い出しつつ、そう言うとムタイが少し呆けたような顔を向けて来た。
それに首を傾げていると、ムタイは左手を首の裏に回しつつ苦い顔をした。

「まさか、あの一瞬で見抜かれるとは思わなかった。その事だが出来れば、誰にも言わないで貰えると助かる」

「それは構わないが、なぜだ?ムタイの体の動きを見ていれば分かることだろうに」

「私のステータスが全体的に高すぎるせいで、他の者は気がついていない。なにせ全力で回し蹴りを放てばオークの頭蓋骨くらいは吹き飛ばせるような、怪力女だからな私は」

ムタイは自嘲するように少しだけ暗い顔をしながら、そう言った。
以前の世界にもオークの頭蓋骨を蹴り飛ばす様な女は居たし、別に怪力女と言うほどではない。

だが、問題はステータスとやらが、何の事か分からない事だ。
これは本を全部読んでから拠点を探すべきだったか?

このままだと、ムタイに話を合わせることも出来ずに、何らかの理由でこちらの世界の一般常識すら分からないとバレてしまう。
いや、バレる事自体は不味くないが、それにより俺に不利益を降り掛かる可能性を捨てきれない都合上、見過ごせない。

さて、どうするか。
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