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魔物討伐戦線:其のニ

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【魔銃士】村本早希
気配を操作して薄くし、魔物の知覚から外れて下から上段回し蹴りを入れる。
横から伸びた手に対して、斜めに入り、関節部を叩いて力を抜く。
力の抜けた腕を掴み取り、体を移動させて背中が魔物の正面になるように入り込む。
足で膝裏を叩いて抵抗をなくし、浮いた体を腰に乗せて投げる。
生々しい音を出しながら他の魔物とぶつかって散り散りになって吹き飛ぶ。
ユウに最初この投げ技を掛けられたときはとってもびっくりした。
驚きすぎて受け身も取れないぐらい。
結局そのときはユウが高速で激突しないように間に挟まってくれた。
覚えるのは時間がかかったし、痛いこともあったけど今役立っているなら良いんじゃないかと思うの。
ユウに教えてもらったものは何一つ無駄じゃなくて、何処かで役立っている。
今、この場でも。
前から突き出された拳に手を当ててひっくり返す。
合気の技。力を受け流して抵抗を抜き、指先の動きでひっくり返す技だ。
これも覚えるのに時間はかかったけれどとても役に立つ技。
ひっくり返した魔物の腕を掴んで、背中に膝を落として銃でとどめを刺す。
炎の魔弾を撒き散らして周囲と壁を作って一本の銃を取り出す。
ワイバーンの素材を基としたスナイパーライフルのような長銃。
私の身長を優に超える三メートルの銃。
これを一人で扱うことはとっても難しい。
それも、扱うのが同い年ならさらに可能性は低くなるだろう。
でも、銃士の派生職、【魔銃士】の私の、銃に関する補正とユウから教わった衝撃を逃す技術がそれを成す。
紫電を発生させながら轟音と共に飛び出した弾丸が射線上にいた魔物を根刮ぎ刈り取って道を作る。
同時に、右横の魔物の群れも宗谷さんのおかげで壊滅する。
あとは左横だけ。
そう思って左横を向いたその時
耳を劈く轟音と蒼く見える雷が空から降って魔物を殲滅し尽くした。
その技は攻略中に何度も見た魔法。
美奈代さんが到着したのかな。
人類の中で最強に近い位置にいる魔法使い。
なんでこっちに来てくれたんだろう?
ユウの方に行ったんじゃなかったのかな?
「美奈代。お前悠一郎の方行ったんじゃねえのか?」
「悠一郎はちょっと戦いに熱が入ってたからほっといてこっちきた。」
「あの野郎一人で楽しみやがって!許さんぞ!戦いの悦びを知りやがって!」
そう言って宗谷さんは駆けて行ってしまった。
私も行ったほうが良いのかな…
でもユウは夢中みたいだし…
美奈代さんは残るみたいだし一緒に残ろうかな。
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