しすとら

sayure

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鎖の意味

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鏡に映る自分とじゃんけんしているかの様に、あいこは続く。

少し遅れて出す後出しじゃんけんにも、息をぴったりと合わせてあいこ。

何で俺は吉木とじゃんけんを付き合ってあげているんだ?

止めればいいだろう。

バカらしい。

そう思って、最後にパーを出して、あいこの後、僕はじゃんけんを止めてみた。

そうしたら、吉木もじゃんけんを止めて、僕の顔を笑みを浮かべたまま見つめ、僕の次の動きを待つ。

この場を去るっていうのは、どうかな?

いい案だよ。

だから、僕は踵を返して…どうする?

帰るのか、な。

凛春りんしゅんは、家にいる…訳がない。

あの虎模様の自販機で一ノ鎖を買ってここにいるんだ。

僕はここで何をやれば、あの自販機の前に戻れるんだ?

夢だから、適当に過ごしていればいいのかな。

別に夢である保証はないけれど。

あの1000円で買った一ノ鎖の意味って、何だろう。

吉木が現れた事に、何か意味があるのか。

フフフ、バカらしい。

ぼったくり自販機に真剣に考えちゃっているよ。

夢が覚めるのを待つしかないな。













覚めないじゃないか。



退屈だ。



だからと言って、またあいこにしかならない様なじゃんけんをしたくはない。



吉木、引っ越しする前に、最後に県大会の試合で決着つけたかったのかな?



悪かったよ、吉木。



僕との対戦は決まっていたんだ、やりたかったよね。




後悔は、吉木にはあるのかな。



ちなみに、僕の方には、特にはない。だって、僕は君との試合、負けるとは思っていないんだから。



変則的な突きは、確かに動きを読むのが難しい。



でも、ただ一度、読めれば、そこで試合は終わる。



君が、僕の上段回し蹴りの警戒を下げた時、僕は普通のさらに上からの上段回し蹴りを君に出せば、君はもらってしまうんだ。



視界から外れた所から食らうから、君は何が起きたのかわからない様子だったけれど。



その対策を取る方法。



君は、その得意な突きを抑え、蹴り主体にすれば、上半身が上がり、頭が上がり、僕の蹴りは君の視界に入る様になるはず。




でも、君は得意技の出し惜しみなんて、しない性格だろう?だから、僕は君には、負けないんだ。



でも、



一ノ鎖って…



何かの心残り?



何かの因縁?



何かに縛られているって事?



それを解き放つ機会を、1000円で買ったのかな?



フフフ、バカな事を考えているよ、僕は。



ほら。



吉木、じゃんけんの続きだ。



じゃーん、


けーん。






ほら、行くよ。





チョキ!




ほら、またあいこ。




これをエンドレスで続ける気はないよ。




吉木、いい加減決着をつけるか?




君も、望んでいただろう。






僕は出したチョキの手を引っ込め、素早く左構えを取り、そのまま腰を回して吉木の横っ面を狙って、上段回し蹴りを放った。



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