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6桁の数字と幻影ビルの金塊
019 六道輪廻
しおりを挟むブラインドの隙間から3階のフロアを縞模様に照らしていた夕焼けは、もう見えない。
時空の歪んだこのビルでも、時間は進んでいるみたい。
薄暗い3階のフロアに、低いイビキだけが響いている。
いつの間にかジョーが寝ちゃったのだ。
ぼくはランタンのスイッチを入れた。
寄り添って座るぼくと美玲ちゃんを、やさしい色の明かりが照らす。
とつぜん美玲ちゃんはぼくを抱き上げると、正座している自分の膝に前を向かせて座らせた。
泣きはらした顔を見られるのが恥ずかしかったんだと思う。
ぼくの頭に顎を乗せて、話しかけてきた。
「……ところでミッケくんは、なんで人間の子どもになっちゃったの?」
自分の小さな手を見つめながら考える。
突然そんなこと聞かれても、ぼくにもわからないよ……。
「……やっぱあれよね? わたしが居なくなったら、萌と優斗くんって付き合っちゃうのかな?」
美玲ちゃん???
とりとめのない質問にちょっと混乱したけれど、美玲ちゃんはひとしきり泣いて少し気が落ち着いたのかもしれない。
子どものように泣いたことを誤魔化したいのだろう、努めて明るく振舞いながら独り言を続けた。
「萌もさぁ、もうちょっとわたしに気を遣うべきじゃない? 一応、優斗くんとは、わたしの方が先に知り合いだったんだからさぁ」
「そのくせ、シショウにもちょっかい出そうとしてるんだから……。そういえばシショウって変な苗字って萌が笑ってたね!」
「シショウって『四聖』って書くのよね……。どういう意味なんだろうね、ちょっと調べてみようか」
美玲ちゃんが斜め掛けしているチャーシューのカバンから、ノートPCを取り出した。
ぼくも美玲ちゃんの膝に座ったまま、開いたノートPCの画面を見つめる。
「ネット、繋がるの?」
「繋がらないね……。あっ辞書アプリがあるよ」
美玲ちゃんが辞書アプリの検索窓に『四聖』と入れた。
表示される検索結果に目を走らせている。
「どお、意味わかった?」
だけど美玲ちゃんは、ぼくの質問も聞こえないくらい、真剣な目つきで画面を見つめている。
「どしたの……?」
「……関連ワードをクリックしてたら、ほら見て、『六道』って文字が出てきた」
「六道ってこのビルの名前の? クリックしてみて!」
青色で表示されているその文字を、美玲ちゃんがクリックする。
「六道……輪廻……?」
そのときだった。
静まり返った3階のフロアに、とつぜんベルの音が鳴り響いたのだ。
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