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6桁の数字と幻影ビルの金塊
027 ロケット鉛筆ルーレット
しおりを挟む「待たせたなぁ、親分さんよぉ! 勝負の方法が決まったんだぜ!」
奴隷の塔のてっぺんにある玉座に向かって、ジョーが声を張り上げた。
すると威圧感漂う低い声が、玉座の人影から聞こえてきた。
「……説明しろ」
ジョーがロケット鉛筆を掲げて、さっき美玲ちゃんに言われた通りの説明を始めた。
「ここに少し変わった一本の鉛筆がある。こいつぁ、おれも初めて見るんだが、透明な筒の中に、ライフル弾みたいな形の鉛筆の芯が10本入っているんだぜ。見てみるかい?」
「わしの奴隷に渡せ」
ジョーが辺りを見回すと、ぼくらの背後を取り囲んでいる人影の一人が暗闇から姿を現し、鉛筆を受け取った。
そして四つん這いになった奴隷たちを踏みつけ、奴隷の塔をよじ登っていく。
塔のてっぺんは暗くてよく見えないけど、さっきの奴隷が玉座に到達できたのだろう、王の低い声が返ってきた。
「変わった鉛筆だな。これで何をする?」
「透明な筒の中に詰め込まれた状態じゃあよお、芯の先端は前の芯のケツの部分、つまりライフル弾で言う所の薬莢部分に隠れて見えないよなぁ? だがそのうち1本だけ、実は芯の先端が折れているんだぜ。これでロシアンルーレットをやろうってわけよ!」
「うむ、折れた芯を出した奴が負けか。しかし、誰が芯を詰めるのだ?」
「あんたの奴隷でいいぜ。ただし、あんたもおれも見えない所で詰めるんだ」
やがて、さっきの奴隷が降りてきた。
ジョーに両手を見せる。
片手にロケット鉛筆の透明な筒とキャップ、もう片方の手に10本の芯を持っていた。
そのうち1本の芯の先端が折れている。
「問題ねぇ。だが、芯を詰めるのは他の奴隷だ。すでに幾つ目に入れるか打ち合わせされてちゃあ、かなわんからなぁ。……おいそこの、出てきな」
ぼくらの背後から別の奴隷がまた一人、姿を現した。
透明な筒と10本の芯を受け取り、背中を向けて芯を詰め始めた。
そして、ジョーと玉座の王に向けて、完成したロケット鉛筆を見せる。
「……念のため、おれの舎弟に改めさせてもらうぜ。おっと心配には及ばねぇ、まだ幼い子どもなんだ。……おい小僧、確認しな!」
ぼくは小僧でも、顎のおっさんの舎弟でもないやい!
……と、内心イライラしたけれど、ここは美玲ちゃんの計画通り、素直に確認へ行く。
奴隷が持っているロケット鉛筆にランタンの灯りを近づけ、あくまでもさらっと、しかし鋭い目つきで確認した。
透明な筒のなかに、10本の芯が入っている。
「大丈夫だよ」
平静を保ちつつジョーに向かってそう言うと、美玲ちゃんのところに走って戻った。
そして怯えた子どものように、美玲ちゃんの背後に隠れながら手を握る。
……1、2、3、4、5、6、7。
そう。
美玲ちゃんにだけわかるように、こっそり7回、その手を握った。
「やめてよジョー、負けたら目玉を取られちゃうんだよ!」
美玲ちゃんが悲痛な表情で、ジョーに訴えかけた。
涙で目を潤ませながら瞬きをする。
あくまで自然に、7回。
「ここでやらなきゃよぉ~、あぁ、男が廃るってぇもんだぜっ!!」
ジョーが見得を切ってこたえた。
大袈裟すぎ……。
それはもう、歌舞伎だよ。
「まずは順番を決めとこうぜ! あんたが決めな、先攻か、後攻か?」
ジョーが玉座に向かって声を張り上げる。
「では、わしが先攻だ」
「へへ、遠慮がねぇやな。いいぜ、あんたが先攻だ……」
ジョーがニヤリと笑った。
「一度に押し出せる芯は2つまで! おれとあんたは一切鉛筆を触らない。奴隷に数だけ申告するんだ。いいな?」
「……よかろう」
「それじゃあ始めようぜ! 金塊と目玉を賭けた、男の勝負をなぁっ!!」
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