緑の丘の銀の星

ひろみ透夏

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第5話 はじめてのツナ缶

01

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「どなたですか? って聞いたら、宅配便です。フルーツの詰め合わせのお届けものです。って言うからさ、もう急いでドアを開けたわ。確かにフルーツの詰め合わせよ。パイナップルみたいな髪型の男と、メロンみたいに傷だらけの顔の男が、イチゴとバナナがらのシャツ着て、笑って立っていたの。急いでドア閉めたよ。だってあんなごついフルーツ、美味しいわけないじゃない!」

 トモミがいつも通り、昼すぎに現れた。

 涼やかな空色のワンピースを、ひらりとひらめかせて小型宇宙船をかけ上がり、わたしの右どなりに座った。

「明日は何が届けられると思う? きっと産地直送野菜よ。ごついカボチャ顔の男と、ゴーヤみたいな肌の男が、キュウリ柄のネクタイしめて、えげつない笑顔で立っているんだわ」

 その口から次から次へと出てくる単語は、すべて地球の食べ物だろうか?
 なんだか食欲を刺激された気がするし、あとで調べるとしよう。

 それにしても、今日も朝からとても暑かった。

 小型宇宙船の上で仰向あおむけに寝ているわたしを見て、トモミはジンギスカンみたいと笑った。

 わたしはジンギスカンとは何かとたずねた。どうやら半球状の鉄板の上で、肉やら野菜やらを焼いて食べるものらしい。

 ……また食べ物だ。


「ジンギスカンの鉄板があんな形してるのは、昔、モンゴル帝国の皇帝チンギス・ハンが、羊の肉を鉄兜てつかぶとの上で焼いていた名残なごりなんだよねぇ」

 アユムがいつも通り、トモミのあとに現れた。

 ずるずると小型宇宙船をよじのぼるアユムの頭を、トモミが両手で押さえつける。

「ひどいよトモミぃ、のぼれないよぅ」

 アユムが笑うと、トモミもはじけるように笑った。

 その笑顔に、きのうの夕方、泣きはらした目で夜景を見つめていたトモミの姿が重なり、わたしの心はひどく痛んだ。
 しかし、どんな言葉をかけるよりも、三人でいつも通りの日々を過ごすことが一番ではないだろうか?

 わたしたちの日常は、こんなにも笑顔であふれているのだから――。

 わたし自身、そんな日常をくれたトモミとアユムにとても感謝していた。
 ふたりは突然現れたわたしのことを、当然のように受け入れて友だちになってくれた。

 だからこそわたしは、この星を旅立つ前に、必ずふたりに恩返しをすると心に決めたのだ。


「ふたりに重大な発表があるんだ」


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