緑の丘の銀の星

ひろみ透夏

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第15話 託された世界

01

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女王陛下じょおうへいか、早く脱出してください! 階下かいかからキリ星の攻撃船が迫ってきます!」

 母船の最上階、古城の中にある女王のに、女王は親衛隊長とともにいた。

「監視からの報告によると、あの船にオラキル博士が乗っているそうですね?」

 報告にきた親衛隊員に、女王がみずから質問をした。
 うろたえる隊員に、親衛隊長がうなづいてみせる。

「……は、はい! 博士が地球人に連れられて洞窟へ入ったあと、攻撃船が動きだしたそうです!」

 そこまで報告して、隊員は再び状況確認のため部屋から出ていった。


「親衛隊長は、隊を連れて、すみやかにこの場から去るように」

 女王の言葉に、親衛隊長は、まっすぐ前を見つめたまま何もこたえなかった。

「聞こえませんか? 親衛隊はこの場から……」
「聞こえません!」

 親衛隊長がきっぱりとこたえた。

「親衛隊の命は陛下とともに。陛下が死を覚悟なさるのなら、わたしたちとて同じこと。わかっておられるはずです」

「しかし、これはわたくしの個人的な……」

 そこまで言って女王はやめた。親衛隊長の性格はわかっている。自分が動かない限り、親衛隊を動かすことはないだろう。

 女王が大きくため息をつく。

「ここまでか……」


 そのとき、親衛隊員が、また息をはずませながら部屋に飛び込んできた。

「報告します! キリ星の攻撃船が消滅しました。母船内部との摩擦まさつえきれず、爆発したとのことです!」

 女王が立ちあがった。

「脱出した者は? 生存者はいましたか?」

「キリ星の攻撃船の乗員は、すべて爆発に巻き込まれたと思われます! 跡形あとかたもなく、吹き飛んだそうです!」

 笑顔でこたえる隊員。
 しかし女王は、その場にくずれ落ちた。


           *


「トモミ、起きて」

 うっすらと開けた瞳に、まっ青な空が映り込んでいる。

「気がついた?」

 突然のぞき込んだわたしの顔を見て、トモミはびっくりして体を起こした。
 つき抜けるような青空のもと、鮮やかな緑の野原がどこまでもつづく景色を、トモミは不思議そうにながめている。

「ここ、緑が丘? ハカセ、わたしたち助かったの?」

「…………」

「ハカセ?」

「ここは緑が丘じゃない。ここにいるのはみな、死に絶えたはずの生き物ばかりだもの」

 トモミが息をのんだ。
 わたしたちのまわりは、いろいろな生物たちであふれている。しかしそのどれもが、トモミの見たことのない生き物ばかりだろう。

 目の前を細長い尾を引きながら蝶が飛んで行く。四つの翼を持つ小鳥がさえずりながら大空を舞い、草かげから、うさぎのように長い耳をもつ、きつねの親子が顔を出した。

「待ってぇー」

 ヘビのように長い体のトンボを追いかけて、アユムが野原を走っている。


「……でも、いい。ハカセやアユムと一緒なら」


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