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第7章 クラスメイト

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 「情報ってなに? ぼくにも教えてくれ!」

 必死なメグルの姿に、取り囲む男子の一人が、にやりと笑みを浮かべて言った。

 「お前みたいな新入りには関係ねえよ。おれたちは街の平和を守って……」

 「ば、ばか、黙れ!」
 いきなりタカシが怒鳴った。

 「人を選んで話せって、親に言われただろっ!」

 言葉をさえぎられた男子が、しまったとばかりに手で口を押さえる。

 一瞬、焦りの色を浮かべたタカシだったが、すぐにまた挑発的な笑みへと戻り、さげすんだ目でメグルを見下ろして続けた。

 「そんなに教えて欲しけりゃ、おれに土下座してあやまりな。そしたらおれたちの仲間として認めてやらあ。トモルをいじめる訳も、教えてやってもいいぜ」

 その態度にメグルはひどく憤慨ふんがいした。

 (人間界を一度で卒業し、すでに天界行きが確定済みの超エリートのぼくが、なんで修羅しゅら界上がりのタカシなんかに頭を下げなくちゃならないんだ!)

 心の中で地団駄じだんだを踏みつつも、トモルが保健室で流した涙を思い出し、草むらに膝をつく。

 「ごめんなさい、タカシくん……。ぼくをみんなの仲間に入れてください……」

 自尊心を深く傷つけながら、なんとか重たい口を開けることに成功したメグル。
 その謝罪を一語一句聞き逃しまいと、耳をそばだてて聞いていたタカシは、やがて得意満面の笑みを浮かべて取り巻きの男子たちを見まわすと、ここぞとばかりに大声で笑いだした。

 「あーっははは! ウソだよ、ば~か! 誰がお前なんか仲間にするか! お前もトモルもみんなで無視だ。ざまあ……み……ろ……」

 タカシの言葉が尻すぼみに消えていく。その顔からは笑みも消え、ついにはその場にへたり込んでしまった。


 無理もない――。


 立ち上がると同時に少しずつ上げたメグルの顔は、怒り狂う阿修羅あしゅらのごとき形相ぎょうそうでタカシを睨みつけていたのだ。


 そのとき、何も知らずにメグルの背後を取り囲んでいた男子たちが騒ぎだした。

 「そこにもいるぞ。あっ、あそこにも。早く捕まえろ!」

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