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第6択
須藤 杏子③
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小野塚は傷んだ白髪を頭部に覆っていた。事件から20年が経った今、痩せ細ってシワだらけになった彼に当時の面影はない。
「私に何か用か?」
「こうして、顔を合わせるのは初めてですね。私のことは分かりますか?」
視線をずっと下に向けていた小野塚は、チラリと生気のない瞳を向けてきた。
「申し訳ない」
「須藤 杏子と申します」
この名を聞いて、小野塚の目は悪霊でも見るかのように見開く。
「ああ……、すまないっ、本当に申し訳ございませんでした!」
彼は椅子を突き飛ばして土下座をして額を床に擦り付けた。それがパフォーマンスとしてなのか本気の謝罪なのか判断に苦しいが、いずれにしても私の憤怒はメラメラと滾って握り拳の方へと伝播していく。
「須藤さん、冷静に」
ボソリと八柳 俊介に気持ちを鎮撫させられ、私は一呼吸入れることに。
「意味を成さない謝罪は結構です。それよりも貴方のことを聞かせてください」
「……私の事と言われても、誰も信じやしないよ」
「ある男性が≪悪魔の脳≫と名付け、それよって苦しめられています。それは、選択肢の出現と共に選択の自由を奪われるものです」
ゴクリと唾を太く鳴らした小野塚は、土下座から這い上がるよう、アクリル板に手の平を滑らせる。
「そうか、奴らは別の獲物に切り替えているんだな」
「奴らとは?」
「知らん! でも、私を殺人鬼に変えた奴らだ!」
ハァハァと洗い息をしている彼が落ち着くまで、私は大人しく待つ。大学生の存在がある手前、感情的になるなと本能の抑制が利いている。八柳を連れてきて、どうやら正解であったようだ。
「今でも同じ現象が?」
小野塚は椅子を引っ張ってきて座り直す。
「そうとも。だけど、違う」
「違うとはどういう意味ですか?」
「務所にぶち込まれた俺は、本当に精神がおかしくなった。つまり、本当に頭がイカれて見えちゃうのさ。ありもしない選択肢をな」
その言い様であれば、家族を殺害したときは自身の意志が働いてなかったということになる。
「そもそも檻の中に入った俺に奴らは興味なんか示さない」
「どうしてですか?」
八柳が身を乗り出して割り込む。そんな彼の存在を今更ながらに認知する小野塚は、推し測るように八柳を見つめる。
「そうかい。君が標的に選ばれたんだな。それはなんとも不憫な」
心の底から憐れんでいる目をする。経験した者にしか分からない親近感があるのだろうか。2人の間には無警戒な緊張があった。
「いいかい。君が名付けた≪悪魔の脳≫、なるほどと納得する名だと思う。悪魔は人間の不幸を餌に喜びを得る存在。つまり、無期懲役を食らった私にこれ以上の不幸はなく、奴らにとっては利用価値の失ったオモチャになったというわけだ」
悪魔だって? そんなファンタジー要素満載の話を信じろとでも言うのか。
「仮定の話ですよ。本物の悪魔なんかじゃない」
「私をメルヘンチックなおばさんとして見ている?」
「いや、なんだか怖い顔をしていたもので」
元から愛想の良い顔をするのは苦手である。と、弁解するのも面倒なので、私は小野塚に向き直る。面会時間は決められている。この時間を無駄に過ごすわけにはいかなかった。
「いつから発症を?」
「はっきりと覚えている。2002年11月8日、その日の事故を境に人生は大きく変わってしまった」
事故。私と八柳はピンと頭に過り、互いに顔を見合わせる。
事前に彼から聞いた話し通りであれば、ハレモドロ・サニャというメキシコ人も意識不明の重体後に≪悪魔の脳≫を発症している。
2つの判例では決定付けるには足らないが、3つが共通した時点で、起因が事故であることが濃厚になった。
「その事故について詳しく教えてください」
私はメモ帳とペンを手に握り、小野塚の回顧をメモしていった。
――よそ見運転をしていた彼はガードレールに突っ込み、頭部強打及び全身骨折の重体となり、緊急搬送される。同乗していた婚約者は即死し、彼はそんな最悪な結果になっていることも知らずに一命を取り留めてしまう。
目覚めてからなお、しばらくの間は入院を余儀なくされた彼は哀しみと絶望の淵に苛まれていた。初めてそれが発症したのは、いつまでも塞ぎ込んでいる彼に叱咤してきた父親に対してだった。
意思に逆らい、彼は父親に対して思ってもみない酷い言葉を投げてしまったのだ。そこからは肉親との間に溝が出来てしまったという。
孤独ながらも生きていくために働いていた小野塚だったが、それの症状は緩和することなく、むしろどんどんと酷い選択肢ばかりになっていき、日常生活に大きな弊害が生まれてしまう。
会社での立場をも失った彼。その心の中に宿ったのは、誰とも関わらずに金を得ようとする浅ましき考えだった。
理性は残っていた。ちゃんと自我で抑制が利いていたはずだった。
しかし――。それは残酷にも現れる。強制的に選ばれた【強盗をする】という選択肢は、彼の人生を終わらせに掛かっていた。
強盗するだけなら良かった。留守宅に強盗に入った彼が、金品を盗んで持ち去ろうとしたときだった。最悪なタイミングで帰宅してきた家主とその妻、さらに息子と鉢合わせをしてしまう。
小野塚はそのまま観念して謝罪しようと考える。いや、そうするべきだと本心で思っていたという。
思いは無碍にされる。
容赦なくそれの次の手が出現するのだった。
選択肢の中で1番避けたいものが紛れていた。小野塚は心から拒絶する。必死に何度も心の中で拒否した結果、その選択肢が選ばれてしまうのだった。
【3人を殺す】
▽
その話が本当で小野塚が抵抗できなかったにせよ、やはり彼への憎しみをが消えることはない。
ただ、彼にしても八柳にしても、誰かに操られていたのだとすれば不憫な話ではある。
「大体の症状は同じだね」
「基本はそうですね。ですが、今聞いた話では、赤字の選択肢は出ていません」
小野塚は頭にクエスチョンマークを浮かべ、その意味合いを理解できていなかった。
「赤字の選択肢を選ばれると、1分が経過しても自由を取り戻すことはできないのです」
その説明を聞いて、彼の頭の上には余計にハテナの数が増える。
「ちょっと待ってくれ。赤字の選択肢というのも知らないが、1分で自由を取り戻すなんて、そんな馬鹿な……」
これには八柳も険しい顔をして、聞き間違いではないかと尋問調に確認を取る。
「本当に自由は取り戻せなかったのですか? であれば、どれほどの時間を拘束されていたのでしょうか?」
「そりゃ、私の頭の中の野郎が満足するまでさ。時間なんか決まっちゃいねえ。30秒で終わることもあれば、半日を思想だけで過ごしたときもあった」
どうやら、製品は同じ見た目だが、中身の機能にバラつきがあるようだ。
どちらがいいかは断言できないが、時系列で言えば、八柳の≪悪魔の脳≫が改良版といったところか。
「20年の間、君以外の発症者は?」
「どうでしょう。知人が調べた限りは、過去で事例があるのは貴方とメキシコ人だけのようです」
「サニャか。彼は私の発症した2年ほど前に発症していたな」
「お知り合いなんですか?」
「まあ、少し。それにしても、サニャと私の間に間隔はあまりないが、君との間に20年もの長い月日が開いていることが気になる。どうだろう? 私も真実を知りたい1人として、知っていることは何でも話そう。≪悪魔の脳≫と言ったな、それの正体を是非とも暴いてほしい」
最終的に小野塚と八柳の2者が結託するような会話で落ち着き、私は疎外感を与えられた。確かに小野塚の話を加味して整理すると、裏で何かが糸を引いているような気もしないでもない。
彼の言ったように20年の空白は気掛かりであるし、此方でも改めて調べ直す必要があるのかもしれない。
「最後に2人きりにしてもらえんか?」
まったく。急に2人がお熱い関係になったようで、私は1人で面会室を出ることに。
喫煙所でタバコを吸っていると、しばらくしてから八柳が合流する。何を言われたのか分からないが、顔色が優れないように窺える。
「大丈夫?」
「はい。帰りましょう」
力の抜けた返事に私は肩をすくめ、それ以上は何も聞かないことにした。
「私に何か用か?」
「こうして、顔を合わせるのは初めてですね。私のことは分かりますか?」
視線をずっと下に向けていた小野塚は、チラリと生気のない瞳を向けてきた。
「申し訳ない」
「須藤 杏子と申します」
この名を聞いて、小野塚の目は悪霊でも見るかのように見開く。
「ああ……、すまないっ、本当に申し訳ございませんでした!」
彼は椅子を突き飛ばして土下座をして額を床に擦り付けた。それがパフォーマンスとしてなのか本気の謝罪なのか判断に苦しいが、いずれにしても私の憤怒はメラメラと滾って握り拳の方へと伝播していく。
「須藤さん、冷静に」
ボソリと八柳 俊介に気持ちを鎮撫させられ、私は一呼吸入れることに。
「意味を成さない謝罪は結構です。それよりも貴方のことを聞かせてください」
「……私の事と言われても、誰も信じやしないよ」
「ある男性が≪悪魔の脳≫と名付け、それよって苦しめられています。それは、選択肢の出現と共に選択の自由を奪われるものです」
ゴクリと唾を太く鳴らした小野塚は、土下座から這い上がるよう、アクリル板に手の平を滑らせる。
「そうか、奴らは別の獲物に切り替えているんだな」
「奴らとは?」
「知らん! でも、私を殺人鬼に変えた奴らだ!」
ハァハァと洗い息をしている彼が落ち着くまで、私は大人しく待つ。大学生の存在がある手前、感情的になるなと本能の抑制が利いている。八柳を連れてきて、どうやら正解であったようだ。
「今でも同じ現象が?」
小野塚は椅子を引っ張ってきて座り直す。
「そうとも。だけど、違う」
「違うとはどういう意味ですか?」
「務所にぶち込まれた俺は、本当に精神がおかしくなった。つまり、本当に頭がイカれて見えちゃうのさ。ありもしない選択肢をな」
その言い様であれば、家族を殺害したときは自身の意志が働いてなかったということになる。
「そもそも檻の中に入った俺に奴らは興味なんか示さない」
「どうしてですか?」
八柳が身を乗り出して割り込む。そんな彼の存在を今更ながらに認知する小野塚は、推し測るように八柳を見つめる。
「そうかい。君が標的に選ばれたんだな。それはなんとも不憫な」
心の底から憐れんでいる目をする。経験した者にしか分からない親近感があるのだろうか。2人の間には無警戒な緊張があった。
「いいかい。君が名付けた≪悪魔の脳≫、なるほどと納得する名だと思う。悪魔は人間の不幸を餌に喜びを得る存在。つまり、無期懲役を食らった私にこれ以上の不幸はなく、奴らにとっては利用価値の失ったオモチャになったというわけだ」
悪魔だって? そんなファンタジー要素満載の話を信じろとでも言うのか。
「仮定の話ですよ。本物の悪魔なんかじゃない」
「私をメルヘンチックなおばさんとして見ている?」
「いや、なんだか怖い顔をしていたもので」
元から愛想の良い顔をするのは苦手である。と、弁解するのも面倒なので、私は小野塚に向き直る。面会時間は決められている。この時間を無駄に過ごすわけにはいかなかった。
「いつから発症を?」
「はっきりと覚えている。2002年11月8日、その日の事故を境に人生は大きく変わってしまった」
事故。私と八柳はピンと頭に過り、互いに顔を見合わせる。
事前に彼から聞いた話し通りであれば、ハレモドロ・サニャというメキシコ人も意識不明の重体後に≪悪魔の脳≫を発症している。
2つの判例では決定付けるには足らないが、3つが共通した時点で、起因が事故であることが濃厚になった。
「その事故について詳しく教えてください」
私はメモ帳とペンを手に握り、小野塚の回顧をメモしていった。
――よそ見運転をしていた彼はガードレールに突っ込み、頭部強打及び全身骨折の重体となり、緊急搬送される。同乗していた婚約者は即死し、彼はそんな最悪な結果になっていることも知らずに一命を取り留めてしまう。
目覚めてからなお、しばらくの間は入院を余儀なくされた彼は哀しみと絶望の淵に苛まれていた。初めてそれが発症したのは、いつまでも塞ぎ込んでいる彼に叱咤してきた父親に対してだった。
意思に逆らい、彼は父親に対して思ってもみない酷い言葉を投げてしまったのだ。そこからは肉親との間に溝が出来てしまったという。
孤独ながらも生きていくために働いていた小野塚だったが、それの症状は緩和することなく、むしろどんどんと酷い選択肢ばかりになっていき、日常生活に大きな弊害が生まれてしまう。
会社での立場をも失った彼。その心の中に宿ったのは、誰とも関わらずに金を得ようとする浅ましき考えだった。
理性は残っていた。ちゃんと自我で抑制が利いていたはずだった。
しかし――。それは残酷にも現れる。強制的に選ばれた【強盗をする】という選択肢は、彼の人生を終わらせに掛かっていた。
強盗するだけなら良かった。留守宅に強盗に入った彼が、金品を盗んで持ち去ろうとしたときだった。最悪なタイミングで帰宅してきた家主とその妻、さらに息子と鉢合わせをしてしまう。
小野塚はそのまま観念して謝罪しようと考える。いや、そうするべきだと本心で思っていたという。
思いは無碍にされる。
容赦なくそれの次の手が出現するのだった。
選択肢の中で1番避けたいものが紛れていた。小野塚は心から拒絶する。必死に何度も心の中で拒否した結果、その選択肢が選ばれてしまうのだった。
【3人を殺す】
▽
その話が本当で小野塚が抵抗できなかったにせよ、やはり彼への憎しみをが消えることはない。
ただ、彼にしても八柳にしても、誰かに操られていたのだとすれば不憫な話ではある。
「大体の症状は同じだね」
「基本はそうですね。ですが、今聞いた話では、赤字の選択肢は出ていません」
小野塚は頭にクエスチョンマークを浮かべ、その意味合いを理解できていなかった。
「赤字の選択肢を選ばれると、1分が経過しても自由を取り戻すことはできないのです」
その説明を聞いて、彼の頭の上には余計にハテナの数が増える。
「ちょっと待ってくれ。赤字の選択肢というのも知らないが、1分で自由を取り戻すなんて、そんな馬鹿な……」
これには八柳も険しい顔をして、聞き間違いではないかと尋問調に確認を取る。
「本当に自由は取り戻せなかったのですか? であれば、どれほどの時間を拘束されていたのでしょうか?」
「そりゃ、私の頭の中の野郎が満足するまでさ。時間なんか決まっちゃいねえ。30秒で終わることもあれば、半日を思想だけで過ごしたときもあった」
どうやら、製品は同じ見た目だが、中身の機能にバラつきがあるようだ。
どちらがいいかは断言できないが、時系列で言えば、八柳の≪悪魔の脳≫が改良版といったところか。
「20年の間、君以外の発症者は?」
「どうでしょう。知人が調べた限りは、過去で事例があるのは貴方とメキシコ人だけのようです」
「サニャか。彼は私の発症した2年ほど前に発症していたな」
「お知り合いなんですか?」
「まあ、少し。それにしても、サニャと私の間に間隔はあまりないが、君との間に20年もの長い月日が開いていることが気になる。どうだろう? 私も真実を知りたい1人として、知っていることは何でも話そう。≪悪魔の脳≫と言ったな、それの正体を是非とも暴いてほしい」
最終的に小野塚と八柳の2者が結託するような会話で落ち着き、私は疎外感を与えられた。確かに小野塚の話を加味して整理すると、裏で何かが糸を引いているような気もしないでもない。
彼の言ったように20年の空白は気掛かりであるし、此方でも改めて調べ直す必要があるのかもしれない。
「最後に2人きりにしてもらえんか?」
まったく。急に2人がお熱い関係になったようで、私は1人で面会室を出ることに。
喫煙所でタバコを吸っていると、しばらくしてから八柳が合流する。何を言われたのか分からないが、顔色が優れないように窺える。
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