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第一章 神々と記憶の欠けた少女
10 食堂にて局長の能力? を見る
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食堂。
売店の隣にある食堂。売店と同じ構造で、ロビー側の入り口には改札口のようなゲートがある。
反対側にはゲートのない入り口がある。配達員以外の局員はあの入り口を使うのだろう。
その入口に挟まれて、たくさんのテーブルが並んでいる。そこで、たくさんの人達が食事を楽しんでいるようだ。
現世が朝だからなのかいつも通りなのかわからないが、たくさんの日本人らしい人が食事をしていたり、行列を作ったりしていた。
行列の前には券売機がある。
「ここも相変わらずだよなぁ。土の男神はここの渋滞もどうにかしてくれないのかな? 端末で注文して、支払いは売店みたいな無人レジ、みたいな感じで。それにしても、腹減ってるのに行列に並ぶのはきついぜ……」
たしかに、券売機の前で今日は何食べようかなって悩んでいる人をチラチラと見かける。
ゲンは腹を空かせているようなので、飴玉を渡した。
「それ食べて、もうちょっと頑張って。売店のレジシステムはどう要望して改善してくれたの?」
「売店で買い物をした土の男神が、『レジが古い! まだ人を使っているのか! 』とか怒鳴っていたみたいでな、『わしが改善する! 』と言って買う物買って会議に出ずに土星に帰りやがったな。あの時の日の女神は怖かったぜ……。まあ、神々が全柱揃うことは今まで無いがな。……土の男神をここに招待してみるか?」
ゲンはうーむと唸っている。
「あのお方は自炊派です。招待しても来ないと思われます」
と、ゲンの側で助言しているルイ。
神様って自炊するんだ! てっきりお供え物しか食べないもんだと思っていた!
「私が土の男神様に会った時に話してみるね」
「うーん……。普通の人間のお願いを聞く神では無いからな……。期待はしないでおく」
と、喋っている間に、券売機の前まで到達していた。私はお金を入れ、表示されたメニューをの中から、カレーライスを選んだ。
「わたくしはいつもの日替わり定食を選ぶとしましょう」
「俺はカレーうどんでいいぞ」
ルイとゲンが横からボタンを押していく。
その後、おつりのボタンを押し、お金を回収した。券を取り、カウンターの方へと出した。
カウンターの向こうにいるおばちゃんがそれを回収し、番号の書かれた呼び出し端末を渡してきた。
「こちらで食事をいたしましょう」
どうやらルイとゲンが席を取っていてくれたようだ。私はそこに向かう。
「席を取ってくれたんだ。ありがとうございます」
「いえいえ。ご馳走していただくので、このくらいはしないとバチが当たります」
ルイは楽しそうに笑っている。
「お、サンキュー。呼ばれたら俺が取りに行かせるから座ってゆっくりしていな。あと水も取りに行かせているから気にするな」
ゲンが番号の書かれた呼び出し端末を受け取り、不思議なことを言った。
「私達以外に誰かいらっしゃるの?」
「いや、来ないぞ? どうしてだ?」
「取りにいかせているって……」
「ああ、その事か! 俺は物体に魂を分けることができるんだ。そうするとその物体を動かすことができる。このぬいぐるみもそうやって動かしているんだ」
ゲンは、私と同行していたぬいぐるみをテーブルの上に置き、それを触らずに動かして見せた。
「へえ……本当に自分で動いているのね。腹話術か見えない糸で動かしているのかと思ってたわ」
私のその発言に、ゲンはいやいやと呟き、ルイはくすくすと笑っている。
「ま、まあ、普通はそう思うんだろうな。それで話を戻すが、魂の分割はせいぜい10個程度だ。触れた無機物だったら何でも動かせるし、遠隔でまた憑依させることもできるぜ」
「へえ、すごいね! それにしてもぬいぐるみが多いけど、局長ってぬいぐるみ好き?」
私は横たわっている猫のぬいぐるみを指で突いた。
「ほら、局長。好きだって言っちゃえば楽ですよ。告白じゃないんですから」
「しーっ! それでも恥ずかしいだろ」
「どうせバレることです。先に話しておいた方がいいですよ」
2人でこそこそと耳打ちし合ってる。
いや、普通に聞こえています。
私は手で口を抑え、くすくすと笑う。
「う……。まあ、普通くらいかな……。作るのが趣味だ」
「好きなんだね! それに、作れるってすごいさぁ! 今度あたしにも教えてほしいなー」
もじもじとしていたゲンの両手を取って握り、身体を前に出す。身体が勝手に動いたので、自分でもびっくりしている。ゲンも私の勢いに驚いて、少し後ろに引く。
ルイは側でくすくすと笑っている。
「うお! い、いきなりテンション上がったな! そんなにぬいぐるみ作り見てみたいのか?」
ゲンは猫のぬいぐるみを取って言った。
「はい。ぜひ、見せてください」
「りょーかい。それにしてもムウがぬいぐるみ作りに興味あるとはな……。一瞬喋り方も変わるくらいテンション上がったし」
「え? 喋り方変わった?」
「え?」
私とゲンは固まっている。
その様子を見てルイは少し考える仕草を見せる。そして
「生前の未練が関係するんですかね? 無意識下で未練を晴らしたいと思ったとかですね」
ルイは右手人差し指を立てて話している。
「うーん……そうなのかな? たしかに身体が勝手に動いたね。だけど、喋り方が変わったことは覚えていないね」
3人とも腕を前に組み考え込む。
するとゲンに渡した呼び出し端末が振動して、テーブルの上でカタカタ音を鳴らし始めた。
「お、出来上がったみたいだな。それじゃ、俺のぬいぐるみ部隊に取ってきてもらうか。ほい、よろしくな」
と言ってゲンはカバンの中から手のひらサイズのぬいぐるみを3体出した。
それぞれに呼び出し端末を持たせた。入れ違いで、水回収部隊の2体が、トレーに水の入ったコップを3つ載せて持ってきた。
「わー、すごい! 本当に複数体同時に動かせるんだ。お水ありがとうございます」
私は小さな音で拍手し、水の入ったコップを受け取った。
「まぁ、中身俺だしな。勝手に動いてくれるし、色々と便利だぞ」
話しているうちに、注文した食事を運んだぬいぐるみも到着した。
各自の前にお膳が置かれ、ゲンの前に5体のぬいぐるみが揃った。
「1、2、3、4、5……よし」
ゲンが点呼をすると、ぬいぐるみは手を上げて合図をした後、ゲンのカバンの中に入った。
「では、いただくとするか」
「はい、いただきます」
「いただきます」
3人とも両手を合わせて食事を始めた。
---
自室。
食事を終え、制服からいつの間にかあった部屋着を着た。
部屋着の他にも、ファッション誌などのカタログが入っており、これで服を買えと言わんばかりの注文用紙も置かれていた。
他にも何か増えていたが、それらを見ずにベッドの上に寝転がり、夢が覚めないので天井のシミを数えている。
綺麗な部屋なので、シミを見つけるのに苦労する。
今日の夢は色々とあった。私が死んでいるとか、郵便局員として働き始めるとか……。
夢の星へ行き、おばあちゃんを看取り、少年を大きな魚から護り、夢なのに疲れた感じがする。
結構ボリュームのある夢だったから、たぶんたくさん寝ているのかもしれない。
起きたら、まずはアルバイトを探さないといけない。そして、働きながら正社員として働ける仕事を探さないとだね…。
郵便局員になった夢を見たんだから、もしかしたらそれになれってことなのかな? 募集しているか確認してみようかな。
そう思いながら天井を見ていると、すごい眠気と共に意識が落ちた。
売店の隣にある食堂。売店と同じ構造で、ロビー側の入り口には改札口のようなゲートがある。
反対側にはゲートのない入り口がある。配達員以外の局員はあの入り口を使うのだろう。
その入口に挟まれて、たくさんのテーブルが並んでいる。そこで、たくさんの人達が食事を楽しんでいるようだ。
現世が朝だからなのかいつも通りなのかわからないが、たくさんの日本人らしい人が食事をしていたり、行列を作ったりしていた。
行列の前には券売機がある。
「ここも相変わらずだよなぁ。土の男神はここの渋滞もどうにかしてくれないのかな? 端末で注文して、支払いは売店みたいな無人レジ、みたいな感じで。それにしても、腹減ってるのに行列に並ぶのはきついぜ……」
たしかに、券売機の前で今日は何食べようかなって悩んでいる人をチラチラと見かける。
ゲンは腹を空かせているようなので、飴玉を渡した。
「それ食べて、もうちょっと頑張って。売店のレジシステムはどう要望して改善してくれたの?」
「売店で買い物をした土の男神が、『レジが古い! まだ人を使っているのか! 』とか怒鳴っていたみたいでな、『わしが改善する! 』と言って買う物買って会議に出ずに土星に帰りやがったな。あの時の日の女神は怖かったぜ……。まあ、神々が全柱揃うことは今まで無いがな。……土の男神をここに招待してみるか?」
ゲンはうーむと唸っている。
「あのお方は自炊派です。招待しても来ないと思われます」
と、ゲンの側で助言しているルイ。
神様って自炊するんだ! てっきりお供え物しか食べないもんだと思っていた!
「私が土の男神様に会った時に話してみるね」
「うーん……。普通の人間のお願いを聞く神では無いからな……。期待はしないでおく」
と、喋っている間に、券売機の前まで到達していた。私はお金を入れ、表示されたメニューをの中から、カレーライスを選んだ。
「わたくしはいつもの日替わり定食を選ぶとしましょう」
「俺はカレーうどんでいいぞ」
ルイとゲンが横からボタンを押していく。
その後、おつりのボタンを押し、お金を回収した。券を取り、カウンターの方へと出した。
カウンターの向こうにいるおばちゃんがそれを回収し、番号の書かれた呼び出し端末を渡してきた。
「こちらで食事をいたしましょう」
どうやらルイとゲンが席を取っていてくれたようだ。私はそこに向かう。
「席を取ってくれたんだ。ありがとうございます」
「いえいえ。ご馳走していただくので、このくらいはしないとバチが当たります」
ルイは楽しそうに笑っている。
「お、サンキュー。呼ばれたら俺が取りに行かせるから座ってゆっくりしていな。あと水も取りに行かせているから気にするな」
ゲンが番号の書かれた呼び出し端末を受け取り、不思議なことを言った。
「私達以外に誰かいらっしゃるの?」
「いや、来ないぞ? どうしてだ?」
「取りにいかせているって……」
「ああ、その事か! 俺は物体に魂を分けることができるんだ。そうするとその物体を動かすことができる。このぬいぐるみもそうやって動かしているんだ」
ゲンは、私と同行していたぬいぐるみをテーブルの上に置き、それを触らずに動かして見せた。
「へえ……本当に自分で動いているのね。腹話術か見えない糸で動かしているのかと思ってたわ」
私のその発言に、ゲンはいやいやと呟き、ルイはくすくすと笑っている。
「ま、まあ、普通はそう思うんだろうな。それで話を戻すが、魂の分割はせいぜい10個程度だ。触れた無機物だったら何でも動かせるし、遠隔でまた憑依させることもできるぜ」
「へえ、すごいね! それにしてもぬいぐるみが多いけど、局長ってぬいぐるみ好き?」
私は横たわっている猫のぬいぐるみを指で突いた。
「ほら、局長。好きだって言っちゃえば楽ですよ。告白じゃないんですから」
「しーっ! それでも恥ずかしいだろ」
「どうせバレることです。先に話しておいた方がいいですよ」
2人でこそこそと耳打ちし合ってる。
いや、普通に聞こえています。
私は手で口を抑え、くすくすと笑う。
「う……。まあ、普通くらいかな……。作るのが趣味だ」
「好きなんだね! それに、作れるってすごいさぁ! 今度あたしにも教えてほしいなー」
もじもじとしていたゲンの両手を取って握り、身体を前に出す。身体が勝手に動いたので、自分でもびっくりしている。ゲンも私の勢いに驚いて、少し後ろに引く。
ルイは側でくすくすと笑っている。
「うお! い、いきなりテンション上がったな! そんなにぬいぐるみ作り見てみたいのか?」
ゲンは猫のぬいぐるみを取って言った。
「はい。ぜひ、見せてください」
「りょーかい。それにしてもムウがぬいぐるみ作りに興味あるとはな……。一瞬喋り方も変わるくらいテンション上がったし」
「え? 喋り方変わった?」
「え?」
私とゲンは固まっている。
その様子を見てルイは少し考える仕草を見せる。そして
「生前の未練が関係するんですかね? 無意識下で未練を晴らしたいと思ったとかですね」
ルイは右手人差し指を立てて話している。
「うーん……そうなのかな? たしかに身体が勝手に動いたね。だけど、喋り方が変わったことは覚えていないね」
3人とも腕を前に組み考え込む。
するとゲンに渡した呼び出し端末が振動して、テーブルの上でカタカタ音を鳴らし始めた。
「お、出来上がったみたいだな。それじゃ、俺のぬいぐるみ部隊に取ってきてもらうか。ほい、よろしくな」
と言ってゲンはカバンの中から手のひらサイズのぬいぐるみを3体出した。
それぞれに呼び出し端末を持たせた。入れ違いで、水回収部隊の2体が、トレーに水の入ったコップを3つ載せて持ってきた。
「わー、すごい! 本当に複数体同時に動かせるんだ。お水ありがとうございます」
私は小さな音で拍手し、水の入ったコップを受け取った。
「まぁ、中身俺だしな。勝手に動いてくれるし、色々と便利だぞ」
話しているうちに、注文した食事を運んだぬいぐるみも到着した。
各自の前にお膳が置かれ、ゲンの前に5体のぬいぐるみが揃った。
「1、2、3、4、5……よし」
ゲンが点呼をすると、ぬいぐるみは手を上げて合図をした後、ゲンのカバンの中に入った。
「では、いただくとするか」
「はい、いただきます」
「いただきます」
3人とも両手を合わせて食事を始めた。
---
自室。
食事を終え、制服からいつの間にかあった部屋着を着た。
部屋着の他にも、ファッション誌などのカタログが入っており、これで服を買えと言わんばかりの注文用紙も置かれていた。
他にも何か増えていたが、それらを見ずにベッドの上に寝転がり、夢が覚めないので天井のシミを数えている。
綺麗な部屋なので、シミを見つけるのに苦労する。
今日の夢は色々とあった。私が死んでいるとか、郵便局員として働き始めるとか……。
夢の星へ行き、おばあちゃんを看取り、少年を大きな魚から護り、夢なのに疲れた感じがする。
結構ボリュームのある夢だったから、たぶんたくさん寝ているのかもしれない。
起きたら、まずはアルバイトを探さないといけない。そして、働きながら正社員として働ける仕事を探さないとだね…。
郵便局員になった夢を見たんだから、もしかしたらそれになれってことなのかな? 募集しているか確認してみようかな。
そう思いながら天井を見ていると、すごい眠気と共に意識が落ちた。
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