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第一章 神々と記憶の欠けた少女

17 鳥居の呪いは老いるが如し

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 何事もなく入り口の鳥居の所まで戻ってくることができた。辺りは、来た時と同じくらいの夕暮れ時になっていた。

 私は『一』の鳥居から出て着地した。

 たぶん私が通れなかった『十三』の鳥居は、呪いか結界の類いがあったのだろう。

 この加護のおかげで、それらに入らずに済んだのかもしれない。

 私は自身の腕のバングルを見た。

 引き返す時に鳥居の数を数えたが、通れなかった物を含めて13あった。

 その13の鳥居でどんどん弱らせた局員を、何かしらの方法で霧散させていたのかもしれない。


「鳥居の呪いは老いるがごとし……か」


 私は振り向き、鳥居を見上げながら呟く。

 とりあえず星間郵便局に戻って、配達保留できるか聞いてみよう。

 私は空の見える所まで行こうとすると、後ろから気配を感じた。


「お客さん。帰るんだ。残念ね」

「お姉さん。帰るんだ。またね」


 双子は私に向かって手を振っている。

 私は振り返り、手を振って空へと飛び立った。


---


 ある程度高度を上げた後、入り口のあった1点を見下ろした。

 双子がまだ見上げてこちらを見ている。少し寂しそうな雰囲気を感じる。


「また行くからねー!」


 私は大声でそう言い、大きく手を振った。

 双子はそれに気づき、手を振ってきた。

 よし、帰ろう。

 飛ぶスピードを上げ、一気に夢の星を抜け出した。


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 鳥居の星上空。


 特に何にも阻まれることなく、星の外に出ることができた。夢の星は変わらず白く光っている。

 私はカバンの中から手紙を出して切手を見る。特に変わった様子はなく、同じ風景が描かれている。それを確認し、手紙をカバンの中に入れた。

 それと同じタイミングで端末が振動している。誰かからの着信だろう。私は通話に出る。


「良かった繋がった……。ムウさん大丈夫ですか? 怪我とかしていませんか?」

「いえ、大丈夫よ。だけど、手紙は届けることできなかったわ」

「それは仕方がないです。何か対策を思いついたらまた届けに行きましょう。今は帰還が先です」

「うん、わかった」


 私は急ぎめで星間郵便局へと帰還した。


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 星間郵便局ロビー。


 ロビーに到着すると、いつも以上に騒がしい感じがした。そして、周囲からの視線が私に向かっているのを感じる。驚いた顔をした人や拝んでいる人もいる。

 何だろう? 何か目立つ物でもあるのかな?

 私は自身の身体や、身に着けている物を確認する。すると

 あ、バングルが光っている!

 月の紋様が描かれたバングルがまだ光っていた。

 私はバングルに手をかざし、落ち着けー落ち着けーと唱えた。

 まあ、そんなことで光が消えるってことはないでしょ。

 と思っていると、バングルの光が弱まってきた。

 あ、消えた!

 消えたのを確認したからか、視線を向けていた人々が散り散りと立ち去って行った。

 なんだったんだろう? とりあえず、ちょっと目立っちゃったからここからは出よう。

 そう思いロビーを出ようとすると、端末がカバンの中で震え始めた。


「あ、ルイさんからだ。はい、もしもし」

「お疲れ様です。そのガヤガヤ感はもうロビーに着いたのですか?」


 ルイに周囲のガヤガヤも聞こえているようだ。


「うん、先程着いたよ」

「速いですね。生身でここまで速い人、ムウさんしかいないですよ……」

「そうなんだね! そういえば、皆どうやって移動しているの? 走っている人とか泳いでいる人しか見たことないけど……」

「皆、車を借りていますよ。ロビーにレンタカー屋があると思います。局の建物近くでは乗り物禁止なので、徒歩で移動してますね。……あれ? もしかしてレンタカー案内してませんでした?」


 ルイから慌てている様子を感じる。


「うん、そのもしかしてだね……」

「ごめんなさい! わたくしのミスです……」

「いえいえ、気にしないでいいよ。おかげで速く飛ぶ方法がわかったので」

「心遣い感謝します。あ、すいません。要件は、局長がお呼びなので、局長室に来てくださいとのことです」

「わかったわ。今から伺うね」


 そう言って通話を切った。

 さて、局長室ってどこだろう? ルイさんの事務所があった所の奥に、まだ部屋があった気がする。たしか看板に局長室って書いてあったかも。

 私はロビーを出るためにゲートをくぐった。
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