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第一章 神々と記憶の欠けた少女
35 有銘 夢羽《ありめ むう》
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月経由で星間郵便局に到着し、いつも以上に無性にお腹が空いたので、すぐに食堂へと向かった。
なぜかいつもより視線を感じる。
食堂に入り、いつもの列に並んで注文し、焼魚定食を食べ始めた。
食堂でも私に気づいた周囲にいる人は、驚いた顔でこちらを見る。
拝んでいる人までいる。そして誰も近くで食べようとしない。
1つ目の定食を食べ終え、2つ目を注文するためにまた列へと並んだ。そして、焼肉定食を受け取り食べ始める。
生前はこんなにお腹が空くことはなかったのにな、と思いながら料理を食べた。
そういえば、前も2人ほど看取った時もいつもよりお腹空いてたな。いつもより力を使ってる? それか、幽体離脱状態だったのが1人になったから、2人分を摂っているってことになるのかな? それはなんか違う気がするな。
私は周り気にせず、首を傾げる。
私は2つ目の定食を食べ終え席を立ち、お膳を片付け、3つ目の料理を注文するために自販機の列に並んだ。
「……ムウだよな? なんでそんなに食ってるんだ? いくら霊でも限度があるぞ……。破裂しても知らんぞー」
と言いがらゲンが後ろに並んでいる。
「あ、ゲンだー! 食事? 一緒に食べよー!」
私は後ろを振り向いた。
「なんでそんなにテンション高いんだよ。雰囲気変わりすぎで怖いんだが……」
ゲンは若干引いている。
「あたしは元々こんなテンションだよー?」
私は首を傾げる。
「いやいや、おかしいだろ。それに雰囲気もなんか神々(こうごう)しくなってる気がするし、容姿も少し変わってね? 何があった……」
ゲンは更に引いている。
「容姿? 何も変えてないんだけど? 天使やら悪魔やら、女神って言われたことはあるけど神々しいってのは言われたことないさぁ。何かがあったことは確かだけど、食事と一緒に聞く?」
「いや、食事中に仕事の話はいい。食事を楽しもうぜ」
ゲンはそう言って、いつものカレーうどんを注文する。
私は、今度は生姜焼き定食にした。
なぜかまだぽっかり空いていた先程いた席に座り、早速生姜焼きを一口食べる。
「んで、なんだよその変わり様は」
「あ、結局今仕事の話するんだ」
ゲンはカレーうどんをすすった後、気になっていたのか、仕事の話を始めた。
「仕事の話じゃなくてお前の話だよ。めちゃくちゃ気になる雰囲気と容姿とテンションと喋り方まで変わってるんだぜ? 話題はこれしかないだろ」
とゲンは言った。
私はカバンの中から手鏡を取り出し、顔を確認した。
何も付けてなかった目尻の下にピンクに近い赤い紅が塗られていた。
あと、前に売店で買ったアクセサリー類がほんのり光っている。
指輪はお腹が空きすぎて気づかなかった。
「あはぁ! 道理でさっきから周囲の視線を感じるわけね。拝んでいる人もいたし。てっきり大食いな所に驚いているのかと思ってたやっさー。光ってる理由もわからないし、前みたいに落ち着けー落ち着けーって念じておくさぁ」
周囲の視線の理由がわかったので、くすくすと笑った。
「いやいや、勝手に光ってるものだし消えるわけないだろ……」
と言い、ゲンはカレーうどんをすする。
「うん、まあいいや! この紅も落ちないみたいだし、気にしないでおく。落ち着けー落ち着けー……うり、消えた」
私は目尻の紅を軽く触ってみたが、指先に化粧がつくことはなかった。アクセサリー類の光は消えてくれた。
「消えたのかよ! ……てか、気にしろよ。そのテンションと喋り方、あとその雰囲気の違い、もう別人だぞ。あと発音訛ってるし」
「今まで行った星などの出来事や思い出は思い出せるんだけど、その辺りが思い出せないんだよね。生前からこんな感じだったよとしか言いようがないのよ」
「待て! ……今生前からって言ったか?」
ゲンはバンと音を立てて立ち上がった。
周囲の人の視線がこちらに集中する。
「……とりあえず、飯食ってから局長室で話そう……」
「りょーかい」
ゲンは残りのうどんがすすっている。
この定食で最後にしようと思い、ゲンのペースに合わせてゆっくり食べた。
---
食事を終えて、私は売店の方で鮭おにぎりをいくつか買った。まだ食べるのかよと後ろから聞こえたが気にしないでおく。
売店から出た2人は、そのまままっすぐ局長室へと向かった。局長室の入り口にはすでに、噂を聞きつけたと思われるルイがいた。
「ムウさんご無事の帰還何よりです。それと生前関係の進捗があったようで、わたくしも同席するために参りました」
ルイはそう言い、局長室の扉を開けてくれた。
「ありがとう。それでは、早速だが、青一色の切手の星について教えてくれ」
「その前に、改めて自己紹介するね。あたしは、有銘 夢羽よ。よろしくね、ゲン、ルイ」
私は一礼をする。
「ああ、よろしくな」
「よろしくお願いしますね」
2人も私に丁寧に一礼した。そしてゲンは椅子に座り、私を見上げる。
私は青く透き通った星であった事を話した。
ゲンは驚いた顔をしながら私を見た。
ルイは、喋り方が訛ってる……と違う意味で驚きながら呟いている。
「いや普通、自分の夢の星なんて入ることできないぞ? ……そうか、まだ生きていたけどずっと寝たきり状態だったから、こっちのムウには記憶がなかったわけか」
ゲンはなるほどと頷いている。
「うん。もう1人のあたしから手紙を受け取った瞬間何かが流れ込んでくる感じがして、全ての記憶を思い出したよ」
私は、渡したはずの手紙を持って言う。
「おそらく、現世の夢羽は長くなかったのだろう。こっちのムウに記憶が行くように、手紙を送ってきたのだろうな」
「うん、いるかわからなかったけど、あたしの名前を書いてお手紙を送ってみたさぁ。でもなぜか手元にあるけどね」
私は手紙を見る。
「渡した手紙は他の誰も触ることができない。昔に聞いたことのある話だ。渡したくなかった手紙を渡して、やっぱり返してと取ろうとしたら取れなかったという話さ」
ゲンは手紙を取ろうとするが、触れることすらできなかった。
「ということは、これはあたし宛で、もう1人のあたしもあたしだから会うことができたってこと?」
「そういうことだろうな。ムウの雰囲気と喋り方が変わったのも幽体離脱が元の1つに戻ったからで、記憶などが残っていた生前の方が優位として上書きされたのかもしれん。仮説だがほぼ合っているだろう。それはこれでOKだとして、なんで記憶が戻って容姿とオーラも変わっているんだ?」
ゲンは記録を取るためか、ノートに書きながら話をしている。
「さあ?」
私は首を横に振った。
「ふーん……それで? 喋り方の発音とか聞きなれない言葉とか出てくるが、方言か何かか?」
ゲンは私の個人情報を探しているのか、ものすごく分厚い本を取り出してペラペラと捲っている。
「うん、あたし沖縄出身だよ」
「沖縄って、あの世のお金って言って燃やす風習がある場所か」
ゲンは星間通貨を見せながら言った。
「うん、だぁるよ」
「それじゃあれか、ここに来た時に特別支給って入ってきたのって、燃やしてもらったってことか」
「いや、その時はまだ死んでなかったから燃やしていないはずだよ。そもそも、亡くなってすぐに燃やすものではないしね。早くて初七日かなー。地域にもよるはず」
「そうなのか。じゃあ一体どこからなんだ……」
うーむとか言いながら、ゲンはペンを上唇に乗せて考え始めた。
「割り込みごめんなさいね。この目の下の紅は落ちないんですか? ちょっと気になって……」
ルイが自分の目の下をなぞるように触った。
「それさっき試したんだけど、落ちなかったよ。ちょっとそこの手洗い場を借りるねー」
私は手洗い場で顔を洗ってみた。しかし
「うん、やっぱり落ちないさぁ。これ、何なんだろうね?」
私は自分の目尻の下の紅を軽く触る。
「ゴシゴシしてみたらどうだ?」
「「それはやー(だめです)」」
私とルイは同時にツッコミを入れる。
「だめですよ? 女の子にそんなことしたら絶交ものですからね」
ルイが珍しく怒っている。そりゃ怒るよね。
「だーわかってるよ。冗談だよ」
「冗談でも言ってはいけません」
「はい、ごめんなさい……」
「分かればよろしい」
ゲンは素直に謝った。
「それにしてもその紅、七曜の神々がしてる化粧に似てないか?」
ゲンがまじまじと目の下辺りを見ている。恥ずかしい。
「そうだば? あたしは神々にまだ2柱しか会ってないからわからないさぁ」
私は手鏡でじっくり見る。ルイは何かに気づいたようで、私の方に近づいてくる。
「すごく見られて恥ずかしい場面かなと思ったのですが、違いました?」
昨日はわくわくしている所を見られて恥ずかしいと顔を隠されてましたけど……と耳元で話すルイ。
「んや、全然ー?」
私は普通に答えた。
「あら……どうしてでしょう?」
「なんでだろ?」
私は首を傾げる。
「あれじゃないか。今朝までの性格はのんびり屋で、今が活発屋と違うからという理由じゃね?」
ゲンがルイに視線を向けた後、私に視線を向けた。
「活発屋? が他人の視線を恥ずかしいと感じなくなるとは限らないけどね。私が単純に恥ずかしいとは感じなかっただけだはずー」
私が自身のことを話すと、ゲンとルイはなるほどなと頷いた。そしてゲンが何かに気づいた様子。
「あーそうか! 今までのんびり屋だったのは、記憶が抜けていたからってことか」
これが本来のムウかと呟くゲン。
「のんびり屋だったのかなー?」
夢羽は思い出すような素振りをしている。私はのんびり屋じゃないもん……。
「それで、その神々しい雰囲気と化粧の心当たりは?」
「さあ? これのせいじゃない? ……うん? カケラの切手が無いわね。ロッカーかなー?」
私は心当たりのある物だけを伝えた。
カバンに入れていたはずのカケラの切手が見つからない。後で自室のロッカーを調べようと思う。
「カケラが影響ね……そしたら他のカケラ持ちもそうなるから違うと思うがなー。まあ、記録しておく」
そう言いゲンは手帳に今話したことを記している。
「あたし、部屋に戻るね」
手に持った手紙を見ながら私は扉の方へと進んだ。
「おう。今日は部屋には行かないから、1人で記憶の整理をするといい」
ゲンとルイは手を振って見送ってくれた。
「りょーかい」
そう言い私は部屋を出た。
なぜかいつもより視線を感じる。
食堂に入り、いつもの列に並んで注文し、焼魚定食を食べ始めた。
食堂でも私に気づいた周囲にいる人は、驚いた顔でこちらを見る。
拝んでいる人までいる。そして誰も近くで食べようとしない。
1つ目の定食を食べ終え、2つ目を注文するためにまた列へと並んだ。そして、焼肉定食を受け取り食べ始める。
生前はこんなにお腹が空くことはなかったのにな、と思いながら料理を食べた。
そういえば、前も2人ほど看取った時もいつもよりお腹空いてたな。いつもより力を使ってる? それか、幽体離脱状態だったのが1人になったから、2人分を摂っているってことになるのかな? それはなんか違う気がするな。
私は周り気にせず、首を傾げる。
私は2つ目の定食を食べ終え席を立ち、お膳を片付け、3つ目の料理を注文するために自販機の列に並んだ。
「……ムウだよな? なんでそんなに食ってるんだ? いくら霊でも限度があるぞ……。破裂しても知らんぞー」
と言いがらゲンが後ろに並んでいる。
「あ、ゲンだー! 食事? 一緒に食べよー!」
私は後ろを振り向いた。
「なんでそんなにテンション高いんだよ。雰囲気変わりすぎで怖いんだが……」
ゲンは若干引いている。
「あたしは元々こんなテンションだよー?」
私は首を傾げる。
「いやいや、おかしいだろ。それに雰囲気もなんか神々(こうごう)しくなってる気がするし、容姿も少し変わってね? 何があった……」
ゲンは更に引いている。
「容姿? 何も変えてないんだけど? 天使やら悪魔やら、女神って言われたことはあるけど神々しいってのは言われたことないさぁ。何かがあったことは確かだけど、食事と一緒に聞く?」
「いや、食事中に仕事の話はいい。食事を楽しもうぜ」
ゲンはそう言って、いつものカレーうどんを注文する。
私は、今度は生姜焼き定食にした。
なぜかまだぽっかり空いていた先程いた席に座り、早速生姜焼きを一口食べる。
「んで、なんだよその変わり様は」
「あ、結局今仕事の話するんだ」
ゲンはカレーうどんをすすった後、気になっていたのか、仕事の話を始めた。
「仕事の話じゃなくてお前の話だよ。めちゃくちゃ気になる雰囲気と容姿とテンションと喋り方まで変わってるんだぜ? 話題はこれしかないだろ」
とゲンは言った。
私はカバンの中から手鏡を取り出し、顔を確認した。
何も付けてなかった目尻の下にピンクに近い赤い紅が塗られていた。
あと、前に売店で買ったアクセサリー類がほんのり光っている。
指輪はお腹が空きすぎて気づかなかった。
「あはぁ! 道理でさっきから周囲の視線を感じるわけね。拝んでいる人もいたし。てっきり大食いな所に驚いているのかと思ってたやっさー。光ってる理由もわからないし、前みたいに落ち着けー落ち着けーって念じておくさぁ」
周囲の視線の理由がわかったので、くすくすと笑った。
「いやいや、勝手に光ってるものだし消えるわけないだろ……」
と言い、ゲンはカレーうどんをすする。
「うん、まあいいや! この紅も落ちないみたいだし、気にしないでおく。落ち着けー落ち着けー……うり、消えた」
私は目尻の紅を軽く触ってみたが、指先に化粧がつくことはなかった。アクセサリー類の光は消えてくれた。
「消えたのかよ! ……てか、気にしろよ。そのテンションと喋り方、あとその雰囲気の違い、もう別人だぞ。あと発音訛ってるし」
「今まで行った星などの出来事や思い出は思い出せるんだけど、その辺りが思い出せないんだよね。生前からこんな感じだったよとしか言いようがないのよ」
「待て! ……今生前からって言ったか?」
ゲンはバンと音を立てて立ち上がった。
周囲の人の視線がこちらに集中する。
「……とりあえず、飯食ってから局長室で話そう……」
「りょーかい」
ゲンは残りのうどんがすすっている。
この定食で最後にしようと思い、ゲンのペースに合わせてゆっくり食べた。
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食事を終えて、私は売店の方で鮭おにぎりをいくつか買った。まだ食べるのかよと後ろから聞こえたが気にしないでおく。
売店から出た2人は、そのまままっすぐ局長室へと向かった。局長室の入り口にはすでに、噂を聞きつけたと思われるルイがいた。
「ムウさんご無事の帰還何よりです。それと生前関係の進捗があったようで、わたくしも同席するために参りました」
ルイはそう言い、局長室の扉を開けてくれた。
「ありがとう。それでは、早速だが、青一色の切手の星について教えてくれ」
「その前に、改めて自己紹介するね。あたしは、有銘 夢羽よ。よろしくね、ゲン、ルイ」
私は一礼をする。
「ああ、よろしくな」
「よろしくお願いしますね」
2人も私に丁寧に一礼した。そしてゲンは椅子に座り、私を見上げる。
私は青く透き通った星であった事を話した。
ゲンは驚いた顔をしながら私を見た。
ルイは、喋り方が訛ってる……と違う意味で驚きながら呟いている。
「いや普通、自分の夢の星なんて入ることできないぞ? ……そうか、まだ生きていたけどずっと寝たきり状態だったから、こっちのムウには記憶がなかったわけか」
ゲンはなるほどと頷いている。
「うん。もう1人のあたしから手紙を受け取った瞬間何かが流れ込んでくる感じがして、全ての記憶を思い出したよ」
私は、渡したはずの手紙を持って言う。
「おそらく、現世の夢羽は長くなかったのだろう。こっちのムウに記憶が行くように、手紙を送ってきたのだろうな」
「うん、いるかわからなかったけど、あたしの名前を書いてお手紙を送ってみたさぁ。でもなぜか手元にあるけどね」
私は手紙を見る。
「渡した手紙は他の誰も触ることができない。昔に聞いたことのある話だ。渡したくなかった手紙を渡して、やっぱり返してと取ろうとしたら取れなかったという話さ」
ゲンは手紙を取ろうとするが、触れることすらできなかった。
「ということは、これはあたし宛で、もう1人のあたしもあたしだから会うことができたってこと?」
「そういうことだろうな。ムウの雰囲気と喋り方が変わったのも幽体離脱が元の1つに戻ったからで、記憶などが残っていた生前の方が優位として上書きされたのかもしれん。仮説だがほぼ合っているだろう。それはこれでOKだとして、なんで記憶が戻って容姿とオーラも変わっているんだ?」
ゲンは記録を取るためか、ノートに書きながら話をしている。
「さあ?」
私は首を横に振った。
「ふーん……それで? 喋り方の発音とか聞きなれない言葉とか出てくるが、方言か何かか?」
ゲンは私の個人情報を探しているのか、ものすごく分厚い本を取り出してペラペラと捲っている。
「うん、あたし沖縄出身だよ」
「沖縄って、あの世のお金って言って燃やす風習がある場所か」
ゲンは星間通貨を見せながら言った。
「うん、だぁるよ」
「それじゃあれか、ここに来た時に特別支給って入ってきたのって、燃やしてもらったってことか」
「いや、その時はまだ死んでなかったから燃やしていないはずだよ。そもそも、亡くなってすぐに燃やすものではないしね。早くて初七日かなー。地域にもよるはず」
「そうなのか。じゃあ一体どこからなんだ……」
うーむとか言いながら、ゲンはペンを上唇に乗せて考え始めた。
「割り込みごめんなさいね。この目の下の紅は落ちないんですか? ちょっと気になって……」
ルイが自分の目の下をなぞるように触った。
「それさっき試したんだけど、落ちなかったよ。ちょっとそこの手洗い場を借りるねー」
私は手洗い場で顔を洗ってみた。しかし
「うん、やっぱり落ちないさぁ。これ、何なんだろうね?」
私は自分の目尻の下の紅を軽く触る。
「ゴシゴシしてみたらどうだ?」
「「それはやー(だめです)」」
私とルイは同時にツッコミを入れる。
「だめですよ? 女の子にそんなことしたら絶交ものですからね」
ルイが珍しく怒っている。そりゃ怒るよね。
「だーわかってるよ。冗談だよ」
「冗談でも言ってはいけません」
「はい、ごめんなさい……」
「分かればよろしい」
ゲンは素直に謝った。
「それにしてもその紅、七曜の神々がしてる化粧に似てないか?」
ゲンがまじまじと目の下辺りを見ている。恥ずかしい。
「そうだば? あたしは神々にまだ2柱しか会ってないからわからないさぁ」
私は手鏡でじっくり見る。ルイは何かに気づいたようで、私の方に近づいてくる。
「すごく見られて恥ずかしい場面かなと思ったのですが、違いました?」
昨日はわくわくしている所を見られて恥ずかしいと顔を隠されてましたけど……と耳元で話すルイ。
「んや、全然ー?」
私は普通に答えた。
「あら……どうしてでしょう?」
「なんでだろ?」
私は首を傾げる。
「あれじゃないか。今朝までの性格はのんびり屋で、今が活発屋と違うからという理由じゃね?」
ゲンがルイに視線を向けた後、私に視線を向けた。
「活発屋? が他人の視線を恥ずかしいと感じなくなるとは限らないけどね。私が単純に恥ずかしいとは感じなかっただけだはずー」
私が自身のことを話すと、ゲンとルイはなるほどなと頷いた。そしてゲンが何かに気づいた様子。
「あーそうか! 今までのんびり屋だったのは、記憶が抜けていたからってことか」
これが本来のムウかと呟くゲン。
「のんびり屋だったのかなー?」
夢羽は思い出すような素振りをしている。私はのんびり屋じゃないもん……。
「それで、その神々しい雰囲気と化粧の心当たりは?」
「さあ? これのせいじゃない? ……うん? カケラの切手が無いわね。ロッカーかなー?」
私は心当たりのある物だけを伝えた。
カバンに入れていたはずのカケラの切手が見つからない。後で自室のロッカーを調べようと思う。
「カケラが影響ね……そしたら他のカケラ持ちもそうなるから違うと思うがなー。まあ、記録しておく」
そう言いゲンは手帳に今話したことを記している。
「あたし、部屋に戻るね」
手に持った手紙を見ながら私は扉の方へと進んだ。
「おう。今日は部屋には行かないから、1人で記憶の整理をするといい」
ゲンとルイは手を振って見送ってくれた。
「りょーかい」
そう言い私は部屋を出た。
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