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第二章 カケラの切手と不思議な壺
58 夜の病院……怖いよ!
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神々と別れ、私達は1階フロア奥の診察室などを捜索していた。さっきの反省で、1人きりにならないことを最優先とし、お互いの死角をカバーするように捜索をしている。
私はビクビクしながら周囲を警戒している。
「夜の病院……怖いよ! 何でそんなに平気そうなの……?」
「いや、もちろん怖いけど、あたし以上に怖がっている人が側にいるとね?」
「幽霊は怖くないけど、雰囲気が駄目なんだよね……」
はははと苦笑する。
「それにしても、主いないやっさー。ニオイで確認しようとしても、そこら中に魂のニオイが漂っているからわからないばーよ」
「そうなんだ。他の局員に怪我を負わせているから、霧散した魂が漂っているんだろうね」
「うーん……だぁるはず。うり、手くるくる回したら集まるさぁ」
夢羽は指をくるくると回転させる。するとそこにどんどんモヤモヤが集まって塊になってきた。
「うわ! 犠牲者多すぎない?」
「だからね。ここで集めても導いてくれる月の光が無いから、あたしが持っていかないといけないんだよ……」
「夢の中だもんね」
「うん……まあ、現世で回収できると思うから置いておくさぁ」
そう言って夢羽は、渋々集めた魂の塊を手放す。
「ニオイでわからないってことは、もう地道に探すしかないのね、教団の連中がどう動くかわからないから怖いけど、この状況じゃ教団も動けないかもね」
「だはずね」
1つの診察室を調べ終えた。机の下やベッドの下に隠れてないかも調べているため、少し時間がかかっている。いくつか調べ終わったが、まだまだ奥があるので時間がかかりそうだ。
「ルーナ。そっちはどう?」
「こっちは異常ないですよ」
夢羽が無線も何も使わずに神々とやり取りしている。『分身』の能力の一部で、通信機なしで連絡を取り合うことができるそうだ。すごく便利な能力だなと思う。
「夢羽殿。全部のイスをロボットに作り変え終えたぞい。十数体は送ったから、4階以外にも分散したぞい」
「ありがとね。他の階にもロボットが行ったので、間違って攻撃しないでね」
「わかりましたわ」「りょーかいなのじゃ」「はい、わかりました」
全員の返事を聞き、夢羽は私に頷いた。
その後、更に診察室や処置室を捜索したが、主らしき人物を見つけることができなかった。
救急処置室は明かりが灯っており、たくさんの医師や看護師が慌ただしく動き回っている様子が見えた。
「ここにはいなさそうね」
「だぁるね。ここだけは魂のニオイはしないさぁ」
ニオイまで確認し、まだ行っていない方向へ行こうとした。
―――ガシャーン!
すると、さっき捜索した方向から何かが倒れた音が響いた。
それと同時に、あの後ろから見られている感覚が再び襲いかかってきた。
「あげー! なんねー? ……あの辺りってさっき……」
「うん、探した所だよ」
「うーん……どうしよ……あ! あの下に隠れよう」
私は夢羽の提案に頷き、ペンライトを消した。その瞬間、なぜか見られている感覚が消えた。
私達はさっき見られた所から少し離れたベッドの下に身を隠した。
しーんと静まり返った部屋から、少し足音が聞こえる。そして、その足音が速いペースこちら側に近づいてきたが、どこかで足音が止まった。もしかして、さっき私達がいた場所かな?
私達は、呼吸が聞こえないように袖で口と鼻を覆った。
目がどんどん暗闇に慣れてきた。凝らして見ると、骸骨顔が履いていた同じ革靴が、さっきとは違いゆっくりとこちらに近づいてきた。そして、
―――カツン
私達のベッドの前で立ち止まった。
気づいてませんように! 気づいてませんように!
私は恐怖のあまり震える。
ブンッという風を切る音と共に、大きな鉈の先端がチラリと見えた。そして、
「「―――!!!」」
布が裂ける音と共に、私達の目の前に鉈の先端が床に突き刺さった。
やばいやばい! こいつとここで戦うのは不利すぎる! 『隠密』と『鏡界』は見る能力のあるこいつには使えない……。砂の星の主から貰ったカケラはまだ試していない……どうする!?
「そこのお前! そこで何をしている!」
私が目の前にいる骸骨顔への対処法を考えていると、遠くから男の人の声が聞こえ、ライトで骸骨顔が照らされた。
その瞬間、大きな鉈と骸骨顔の足が見えなくなり、叫び声の後に発砲音が数回、その後ドサッという音と共に、何かが落ちて割れる音が聞こえた。その音と同時にライトの光も消えた。
「あいつ!」
「夢羽、落ち着いて。これ、夢の内容だから、どの道あの男の人は骸骨顔にやられていたと思うよ」
「でも……」
「あの骸骨顔に夢の主がやられないように、私達が守らないと……ね?」
「……わかった」
小さな声で夢羽と話す。夢羽は渋々了承したようだ。
話していると、骸骨顔がまたこっちに向かって走ってきた。
話し声に気づいたかと身構えていたが、私達が隠れているベッドの横を通り過ぎていった。
あれ? 気づいていない?
よーく耳を澄ませて聞くと、私達が向かう予定だった所からキュルキュルというタイヤの摩擦音が聞こえてきた。おそらくサトゥルヌスが作ったロボットの音だろう。
「サトゥルヌス。1階フロアに骸骨顔が出た。ロボットの方に向かったから気をつけさせて」
「わかったぞい!」
その返事の後、鉄と鉄が接触する音が響き渡った。鉈とロボットの身体が接触したのだろう。
「夢羽、今のうちに移動しよう。1階にはいなさそうよ」
「りょーかい。それじゃあ、カリンとルーナの所に行こう」
ベッドの下から這い出て、男の人の遺体がありそうな廊下を避け、診察室の中から2階へと向かった。
---
2階に上がり、2柱がまだ探していないエリアを捜索することになった。1階のあと半分のエリアはサトゥルヌスのロボットが捜索済みで、現在戦闘中ということもあり、避けることになった。
1階の戦闘区域の増員をするため、ロボットを集結させることになった。そのため、ユーピテルの亡霊を4階にも向かわせることにした。
「少しだけ亡霊ちゃんで攻撃してみましたが、ピクリともしませんでしたわ。なんですの! あの化け物」
「たしかに化け物やっさー……銃弾受けても平気そうだったし」
「ジュピター、あいつの弱点はなんですの?」
「調べていますが、わかりません」
夢羽が病室入口で木の双神とやり取りをしている間に、私は中を見て回っている。全ての病室に患者さんが入っているようで、主が隠れている感じはしない。
「夢羽よ。2階以上に主がおるようには思えぬ」
「ロボットと亡霊であの骸骨顔の人を足止めしている間に、住宅街を探しましょう」
カリンとルーナが私達と合流し、提案をしてきた。
たしかに、これだけ人が動き回っている所に隠れ続けるのは難しいだろう。
「一旦残りの2柱と合流して話をしよう」
階段を下りて、下の階にいるユーピテルとサトゥルヌスと合流した。
「ということで、病院内の捜索は終了。次は住宅街を探すことになったよ。それぞれペアで捜索しようか」
「ジュピターとユーピテル、サトゥルヌス、足止めをお願いね。厳しくなったら引くんだよ」
「ガハハ! ロボットが勝手にやるから、わしはもう退散するぞい」
「わたくしも3階の亡霊ちゃんを下に降ろして、ここから出ますわ」
それを聞き、夢羽は神々に視線を送り、私を見て頷いた。
「私達はこっち方面行くね」
「わしらはこっちじゃ」
「じゃあ、わたくし達はこちらですわ」
「うむ……残ったのはこっち方面だな。わしが行くぞい」
さっきと同じように、カリンとルーナ、私と夢羽のペアで分かれることになった。
ユーピテルには亡霊の群れ、サトゥルヌスにはロボットの集団がいるので1柱ずつでいいようだ。
「何かあったら連絡すること。すぐに飛んでいくさーね」
たぶん言葉通り飛んでいくのだろう。
「そうならないように気をつけますね。あの夢の中の月でも私の力は使えるようですし、カリンについていきながら住宅街全体を確認します」
「ありがとね。助かるさぁ」
空を見上げると、大きな満月があった。満月でしかも快晴。
夜なのに常に明るい状態という、追いかける側からするとすごく好条件な環境だ。
霞がかって視界は悪いが、見る能力のある骸骨顔には関係ないだろう。
あ! 霞がかっている場所!
「風羽、どうしたの? もうみんな行っちゃったよ。あたし達も行こう」
「あ、うん、ごめんね。行こうか」
私は考え事をしながら夢羽の後を追った。
---
病院から出てしばらく病院周辺の住宅街を捜索しているが、夢の主らしき人物を見つけることができていない。
「ルーナ様。霞がかってる場所は変わっていない?」
「ええ、そうですね。病院を中心に半球状に霞がかっています」
探す箇所が多すぎて、どこを探せばいいかわからないだろと思うだろう。
だが、広範囲で見ることができる場合は意外と簡単だ。
この星に着いた時に夢羽が気づいた、霞がかっているという点だ。
「病院を中心にして探せばいいのだな。さあお前たち出番だぜ」
サトゥルヌスの通信から、ハンマーで何かを砕く音が聞こえる。一体何で何を作っているんだろう……。
夢の主が近くにいると、その周辺の環境に変化が起こる類だとすごく探しやすい。
今まで旅をした夢の星だと、『泡の星』がその類だろう。あの星は飛んでいた時にいきなり水の中に入った感覚があった。
「わたくしの亡霊ちゃんも負けませんわよ!」
ユーピテルの通信から、周囲の悲鳴も一緒に聞こえる。
他の夢の星は、主に近づくとその星の固有生物が出現する傾向が多かった。この星では、骸骨顔から逃げる役の人間が多数いるようだ。
「って……ユーピテル様はまたイタズラしてるの?」
「イタズラではないですわ! 隈なく探すために亡霊ちゃんを住宅の中とかに入らせて探してもらっているのですわ!」
「それがパニック状態を作っている気がするのだけど……」
「あ、そうでしたの!」
あちゃー……やっぱりやらかしてしまったね……。やっぱり亡霊は人形とかで癒しにしないとだめだね。
「あ! 風羽あれ! 人形屋さんじゃない? ユーピテルに使わせたらいいはずよ」
たしかに夢羽が指した方に人形の専門店があった。だが、
「いやー……さすが、ホラー映画の星だね……。あのお店だけでも雰囲気あるわ……」
フランス人形専門店で、今にも動きそうな雰囲気がある。あれが勝手に動き回ったら更に騒動が起きそうだ。
「夢羽ちゃん! 霞に動きがありました!」
「風羽! 何かが近づいてくる!」
「ルーナ様、霞はどちら側に動いているの?」
「夢羽ちゃん達の所です!」
「あ、あれ!」
夢羽は私の後ろを指した。
「ひぃー! そこの人達! お助けをー!」
壺を抱えた中年の男と、あの骸骨顔がこちらに走ってきた。
私はビクビクしながら周囲を警戒している。
「夜の病院……怖いよ! 何でそんなに平気そうなの……?」
「いや、もちろん怖いけど、あたし以上に怖がっている人が側にいるとね?」
「幽霊は怖くないけど、雰囲気が駄目なんだよね……」
はははと苦笑する。
「それにしても、主いないやっさー。ニオイで確認しようとしても、そこら中に魂のニオイが漂っているからわからないばーよ」
「そうなんだ。他の局員に怪我を負わせているから、霧散した魂が漂っているんだろうね」
「うーん……だぁるはず。うり、手くるくる回したら集まるさぁ」
夢羽は指をくるくると回転させる。するとそこにどんどんモヤモヤが集まって塊になってきた。
「うわ! 犠牲者多すぎない?」
「だからね。ここで集めても導いてくれる月の光が無いから、あたしが持っていかないといけないんだよ……」
「夢の中だもんね」
「うん……まあ、現世で回収できると思うから置いておくさぁ」
そう言って夢羽は、渋々集めた魂の塊を手放す。
「ニオイでわからないってことは、もう地道に探すしかないのね、教団の連中がどう動くかわからないから怖いけど、この状況じゃ教団も動けないかもね」
「だはずね」
1つの診察室を調べ終えた。机の下やベッドの下に隠れてないかも調べているため、少し時間がかかっている。いくつか調べ終わったが、まだまだ奥があるので時間がかかりそうだ。
「ルーナ。そっちはどう?」
「こっちは異常ないですよ」
夢羽が無線も何も使わずに神々とやり取りしている。『分身』の能力の一部で、通信機なしで連絡を取り合うことができるそうだ。すごく便利な能力だなと思う。
「夢羽殿。全部のイスをロボットに作り変え終えたぞい。十数体は送ったから、4階以外にも分散したぞい」
「ありがとね。他の階にもロボットが行ったので、間違って攻撃しないでね」
「わかりましたわ」「りょーかいなのじゃ」「はい、わかりました」
全員の返事を聞き、夢羽は私に頷いた。
その後、更に診察室や処置室を捜索したが、主らしき人物を見つけることができなかった。
救急処置室は明かりが灯っており、たくさんの医師や看護師が慌ただしく動き回っている様子が見えた。
「ここにはいなさそうね」
「だぁるね。ここだけは魂のニオイはしないさぁ」
ニオイまで確認し、まだ行っていない方向へ行こうとした。
―――ガシャーン!
すると、さっき捜索した方向から何かが倒れた音が響いた。
それと同時に、あの後ろから見られている感覚が再び襲いかかってきた。
「あげー! なんねー? ……あの辺りってさっき……」
「うん、探した所だよ」
「うーん……どうしよ……あ! あの下に隠れよう」
私は夢羽の提案に頷き、ペンライトを消した。その瞬間、なぜか見られている感覚が消えた。
私達はさっき見られた所から少し離れたベッドの下に身を隠した。
しーんと静まり返った部屋から、少し足音が聞こえる。そして、その足音が速いペースこちら側に近づいてきたが、どこかで足音が止まった。もしかして、さっき私達がいた場所かな?
私達は、呼吸が聞こえないように袖で口と鼻を覆った。
目がどんどん暗闇に慣れてきた。凝らして見ると、骸骨顔が履いていた同じ革靴が、さっきとは違いゆっくりとこちらに近づいてきた。そして、
―――カツン
私達のベッドの前で立ち止まった。
気づいてませんように! 気づいてませんように!
私は恐怖のあまり震える。
ブンッという風を切る音と共に、大きな鉈の先端がチラリと見えた。そして、
「「―――!!!」」
布が裂ける音と共に、私達の目の前に鉈の先端が床に突き刺さった。
やばいやばい! こいつとここで戦うのは不利すぎる! 『隠密』と『鏡界』は見る能力のあるこいつには使えない……。砂の星の主から貰ったカケラはまだ試していない……どうする!?
「そこのお前! そこで何をしている!」
私が目の前にいる骸骨顔への対処法を考えていると、遠くから男の人の声が聞こえ、ライトで骸骨顔が照らされた。
その瞬間、大きな鉈と骸骨顔の足が見えなくなり、叫び声の後に発砲音が数回、その後ドサッという音と共に、何かが落ちて割れる音が聞こえた。その音と同時にライトの光も消えた。
「あいつ!」
「夢羽、落ち着いて。これ、夢の内容だから、どの道あの男の人は骸骨顔にやられていたと思うよ」
「でも……」
「あの骸骨顔に夢の主がやられないように、私達が守らないと……ね?」
「……わかった」
小さな声で夢羽と話す。夢羽は渋々了承したようだ。
話していると、骸骨顔がまたこっちに向かって走ってきた。
話し声に気づいたかと身構えていたが、私達が隠れているベッドの横を通り過ぎていった。
あれ? 気づいていない?
よーく耳を澄ませて聞くと、私達が向かう予定だった所からキュルキュルというタイヤの摩擦音が聞こえてきた。おそらくサトゥルヌスが作ったロボットの音だろう。
「サトゥルヌス。1階フロアに骸骨顔が出た。ロボットの方に向かったから気をつけさせて」
「わかったぞい!」
その返事の後、鉄と鉄が接触する音が響き渡った。鉈とロボットの身体が接触したのだろう。
「夢羽、今のうちに移動しよう。1階にはいなさそうよ」
「りょーかい。それじゃあ、カリンとルーナの所に行こう」
ベッドの下から這い出て、男の人の遺体がありそうな廊下を避け、診察室の中から2階へと向かった。
---
2階に上がり、2柱がまだ探していないエリアを捜索することになった。1階のあと半分のエリアはサトゥルヌスのロボットが捜索済みで、現在戦闘中ということもあり、避けることになった。
1階の戦闘区域の増員をするため、ロボットを集結させることになった。そのため、ユーピテルの亡霊を4階にも向かわせることにした。
「少しだけ亡霊ちゃんで攻撃してみましたが、ピクリともしませんでしたわ。なんですの! あの化け物」
「たしかに化け物やっさー……銃弾受けても平気そうだったし」
「ジュピター、あいつの弱点はなんですの?」
「調べていますが、わかりません」
夢羽が病室入口で木の双神とやり取りをしている間に、私は中を見て回っている。全ての病室に患者さんが入っているようで、主が隠れている感じはしない。
「夢羽よ。2階以上に主がおるようには思えぬ」
「ロボットと亡霊であの骸骨顔の人を足止めしている間に、住宅街を探しましょう」
カリンとルーナが私達と合流し、提案をしてきた。
たしかに、これだけ人が動き回っている所に隠れ続けるのは難しいだろう。
「一旦残りの2柱と合流して話をしよう」
階段を下りて、下の階にいるユーピテルとサトゥルヌスと合流した。
「ということで、病院内の捜索は終了。次は住宅街を探すことになったよ。それぞれペアで捜索しようか」
「ジュピターとユーピテル、サトゥルヌス、足止めをお願いね。厳しくなったら引くんだよ」
「ガハハ! ロボットが勝手にやるから、わしはもう退散するぞい」
「わたくしも3階の亡霊ちゃんを下に降ろして、ここから出ますわ」
それを聞き、夢羽は神々に視線を送り、私を見て頷いた。
「私達はこっち方面行くね」
「わしらはこっちじゃ」
「じゃあ、わたくし達はこちらですわ」
「うむ……残ったのはこっち方面だな。わしが行くぞい」
さっきと同じように、カリンとルーナ、私と夢羽のペアで分かれることになった。
ユーピテルには亡霊の群れ、サトゥルヌスにはロボットの集団がいるので1柱ずつでいいようだ。
「何かあったら連絡すること。すぐに飛んでいくさーね」
たぶん言葉通り飛んでいくのだろう。
「そうならないように気をつけますね。あの夢の中の月でも私の力は使えるようですし、カリンについていきながら住宅街全体を確認します」
「ありがとね。助かるさぁ」
空を見上げると、大きな満月があった。満月でしかも快晴。
夜なのに常に明るい状態という、追いかける側からするとすごく好条件な環境だ。
霞がかって視界は悪いが、見る能力のある骸骨顔には関係ないだろう。
あ! 霞がかっている場所!
「風羽、どうしたの? もうみんな行っちゃったよ。あたし達も行こう」
「あ、うん、ごめんね。行こうか」
私は考え事をしながら夢羽の後を追った。
---
病院から出てしばらく病院周辺の住宅街を捜索しているが、夢の主らしき人物を見つけることができていない。
「ルーナ様。霞がかってる場所は変わっていない?」
「ええ、そうですね。病院を中心に半球状に霞がかっています」
探す箇所が多すぎて、どこを探せばいいかわからないだろと思うだろう。
だが、広範囲で見ることができる場合は意外と簡単だ。
この星に着いた時に夢羽が気づいた、霞がかっているという点だ。
「病院を中心にして探せばいいのだな。さあお前たち出番だぜ」
サトゥルヌスの通信から、ハンマーで何かを砕く音が聞こえる。一体何で何を作っているんだろう……。
夢の主が近くにいると、その周辺の環境に変化が起こる類だとすごく探しやすい。
今まで旅をした夢の星だと、『泡の星』がその類だろう。あの星は飛んでいた時にいきなり水の中に入った感覚があった。
「わたくしの亡霊ちゃんも負けませんわよ!」
ユーピテルの通信から、周囲の悲鳴も一緒に聞こえる。
他の夢の星は、主に近づくとその星の固有生物が出現する傾向が多かった。この星では、骸骨顔から逃げる役の人間が多数いるようだ。
「って……ユーピテル様はまたイタズラしてるの?」
「イタズラではないですわ! 隈なく探すために亡霊ちゃんを住宅の中とかに入らせて探してもらっているのですわ!」
「それがパニック状態を作っている気がするのだけど……」
「あ、そうでしたの!」
あちゃー……やっぱりやらかしてしまったね……。やっぱり亡霊は人形とかで癒しにしないとだめだね。
「あ! 風羽あれ! 人形屋さんじゃない? ユーピテルに使わせたらいいはずよ」
たしかに夢羽が指した方に人形の専門店があった。だが、
「いやー……さすが、ホラー映画の星だね……。あのお店だけでも雰囲気あるわ……」
フランス人形専門店で、今にも動きそうな雰囲気がある。あれが勝手に動き回ったら更に騒動が起きそうだ。
「夢羽ちゃん! 霞に動きがありました!」
「風羽! 何かが近づいてくる!」
「ルーナ様、霞はどちら側に動いているの?」
「夢羽ちゃん達の所です!」
「あ、あれ!」
夢羽は私の後ろを指した。
「ひぃー! そこの人達! お助けをー!」
壺を抱えた中年の男と、あの骸骨顔がこちらに走ってきた。
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