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月見草
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月見草自体の育て方は単純で日中は陽の光が当たらない場所に置いてやり、陽が沈み月と星が輝き始めたらその光を浴びせてやるという夜行性の植物の育て方だった。単純だが単純ゆえに朝陽を浴びせてしまうということが多く、育てるのを失敗しやすいのだ。
数日間それを繰り返していると、ある晩透明な繭が葉先にぶら下がっているのにトゥエが気が付いた。
「この中に精霊が居るのか?」
「そうだな。もうそろそろ孵化しても良さそうだが」
そうクアットが呟くと繭がゆっくりと膨らんでいき、パチンと弾けた。
ふわりとレースを幾重にも折り重ねたような服を身に纏った小さな精霊が孵化したのだ。
「おお……」
「ほらな」
トゥエは驚き、クアットはしたり顔でそれぞれ反応する。
小さな精霊は瓶をすり抜けて出てくるとくるくるとその場で回る。どうやら感謝の意を示しているらしい。
「契約はしてやれないが何かあったら来ると良い」
クアットが大人げなく生まれたばかりの精霊に釘を刺す。つまる所、トゥエにはもう自分という護衛獣が居ると言っているのだ。実際クアット一人で手を焼いているので断ってくれるのはありがたいとトゥエはその光景を見ながら思う。
護衛獣は言ってみれば精霊に近い存在なのだ。精霊と精霊に近しい存在で話し合ってもらうのが一番だ。
「ドゥエ」
「ん? なんだ?」
「話はついたんだが感謝を伝えたいらしい」
感謝も何も世話はほとんどをクアットがしたからそんなものは必要ないが、と思わなくもないがそう言われたら断れるわけがない。
トゥエが小さな精霊に向かって手を差し出すとその手に精霊が飛び乗る。
「ありがとう、あなたが珍しいからって売り飛ばさなかったおかげでちゃんと孵化できたわ」
「どういたしまして」
「本当はこのまま契約もしたいのだけれど嫉妬深い先住者が居るからやめておくわ」
ちらりと精霊がクアットの方を見ればクアットは「おい」と咎める。
「ははっ、悪いな」
クアットが苛立ちを示すが小さな精霊はどこ吹く風と気にした様子はない。
「だからお礼は祝福だけにしておくわね」
「お前話が違うぞ」
クアットが精霊の身体を掴もうと手を伸ばすより早く精霊はトゥエの手の平から飛び上がると、頬に口付けを落とし「じゃあまた逢いましょう」と窓をすり抜け夜空へと飛び去って行ったのだ。
「あいつ!」
クアットが窓から外を見るがその姿はもうなく、夜空に星が輝くだけだ。
「おい! 変なものつけられてないだろうな!?」
「そんなに怒らなくても大丈夫じゃないか?」
「いいから早く確認しろ!」
「はいはい……ステータスオープン」
クアットに促されるまま、いや若干強引に、ステータスを冒険者カードから表示するとそこには闇精霊の祝福と書かれていた。
「まあ、この程度なら大丈夫じゃないか?」
暢気にトゥエがそう言えばクアットは「だから闇精霊は気が合わないんだ」と愚痴る。
「お前もうすでに祝福三つはあるだろうが」
「そうなんだよなあ、でもおかげで素材が見つけやすいしな……」
「その好かれやすさなんとかしてくれ、気が気じゃない」
「どうにも出来ねえって」
げんなりとした表情でクアットは言うがトゥエはさほど気にした様子はなくいつものことだと言う。
その様子を見ながらいつかとんでもないものを貰ってきそうで困るとクアットは胸中で思うのだった。
数日間それを繰り返していると、ある晩透明な繭が葉先にぶら下がっているのにトゥエが気が付いた。
「この中に精霊が居るのか?」
「そうだな。もうそろそろ孵化しても良さそうだが」
そうクアットが呟くと繭がゆっくりと膨らんでいき、パチンと弾けた。
ふわりとレースを幾重にも折り重ねたような服を身に纏った小さな精霊が孵化したのだ。
「おお……」
「ほらな」
トゥエは驚き、クアットはしたり顔でそれぞれ反応する。
小さな精霊は瓶をすり抜けて出てくるとくるくるとその場で回る。どうやら感謝の意を示しているらしい。
「契約はしてやれないが何かあったら来ると良い」
クアットが大人げなく生まれたばかりの精霊に釘を刺す。つまる所、トゥエにはもう自分という護衛獣が居ると言っているのだ。実際クアット一人で手を焼いているので断ってくれるのはありがたいとトゥエはその光景を見ながら思う。
護衛獣は言ってみれば精霊に近い存在なのだ。精霊と精霊に近しい存在で話し合ってもらうのが一番だ。
「ドゥエ」
「ん? なんだ?」
「話はついたんだが感謝を伝えたいらしい」
感謝も何も世話はほとんどをクアットがしたからそんなものは必要ないが、と思わなくもないがそう言われたら断れるわけがない。
トゥエが小さな精霊に向かって手を差し出すとその手に精霊が飛び乗る。
「ありがとう、あなたが珍しいからって売り飛ばさなかったおかげでちゃんと孵化できたわ」
「どういたしまして」
「本当はこのまま契約もしたいのだけれど嫉妬深い先住者が居るからやめておくわ」
ちらりと精霊がクアットの方を見ればクアットは「おい」と咎める。
「ははっ、悪いな」
クアットが苛立ちを示すが小さな精霊はどこ吹く風と気にした様子はない。
「だからお礼は祝福だけにしておくわね」
「お前話が違うぞ」
クアットが精霊の身体を掴もうと手を伸ばすより早く精霊はトゥエの手の平から飛び上がると、頬に口付けを落とし「じゃあまた逢いましょう」と窓をすり抜け夜空へと飛び去って行ったのだ。
「あいつ!」
クアットが窓から外を見るがその姿はもうなく、夜空に星が輝くだけだ。
「おい! 変なものつけられてないだろうな!?」
「そんなに怒らなくても大丈夫じゃないか?」
「いいから早く確認しろ!」
「はいはい……ステータスオープン」
クアットに促されるまま、いや若干強引に、ステータスを冒険者カードから表示するとそこには闇精霊の祝福と書かれていた。
「まあ、この程度なら大丈夫じゃないか?」
暢気にトゥエがそう言えばクアットは「だから闇精霊は気が合わないんだ」と愚痴る。
「お前もうすでに祝福三つはあるだろうが」
「そうなんだよなあ、でもおかげで素材が見つけやすいしな……」
「その好かれやすさなんとかしてくれ、気が気じゃない」
「どうにも出来ねえって」
げんなりとした表情でクアットは言うがトゥエはさほど気にした様子はなくいつものことだと言う。
その様子を見ながらいつかとんでもないものを貰ってきそうで困るとクアットは胸中で思うのだった。
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