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第五章 松田要と月下の名推理
第一話 名探偵・要
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お互いの浴衣姿を堪能した花火大会の後、朝まで抱き潰された仁と元凶の要は一緒に出社した。
「ばれねーよな?」
「普通にしてれいばいいでしょ。それに同性の家に泊まるなんて普通なんだし」
「それもそうだな」
泊まって一緒に出社するたびに挙動不審な要に対して、冷静な仁。オフィスは同じ階なので一緒に階段を上がり、同僚のふりをして別れる。
化学事業部のオフィスに吸い込まれるように入っていく仁は、恋人との別れを全く名残惜しむ様子もない。逆に要はそんな仁を少し悲しげな目で見たあと、化学事業部のオフィスを通り過ぎ、インテリア事業部のオフィスへと向かう。早めに来たつもりだったが、既に後輩の月嶋が出社していた。書類とにらめっこをする後輩の背中に
「おはよう!」
と、挨拶をすれば、社内でも評判の明るい笑顔が振り向く。
「おはようございます!」
「早いな」
「松田さんこそ!」
「まあな」
仕事の為に早く出社した月嶋の隣で、デスクに備え付けてあるメモ用紙を一枚取り、胸ポケットに入れているボールペンをカチッとノックする。仕事中にメモをとるかのようにサラサラと文字を並べていく。
(よし!)
メモ用紙に数名の名前を書きあげた。
(今日こそ、仁の好きだったやつを見つけてやる)
貿易会社のオフィスで、探偵っぽい顔つきをする要が手にしている情報は「要の知っている人」「職場の人間」「男」「煙草が関係している」の四つだ。
(手始めに……)
松田要探偵の推理①
【インテリア事業部】
インテリア事業部で仁と面識がある人物として一番に要が思いつくのは、この横で仕事をする後輩だった。しかし……
(ないだろな)
一つ下の後輩・月嶋春人は、入社当時から女性社員に人気がある。要も女性社員に頼まれて昼の食事会をセッティングしたことがある。飲み会は付き合い程度で、前に無理矢理合コンに参加させたことがあったが、まさかの途中退席だった。男には不名誉な「かわいい」という単語がぴったりな彼と、仁が肩を並べているところは、仲良し兄弟のようで、付き合うとかそういう一線を越えるようなものではなかった。
月嶋から視線をずらし、ガラリとしたオフィスを見渡す。そしてまだ無人の部長席で視線が止まる。
(あとは……村崎部長か?)
面識があるかは定かではないが、さすがに部長を知らない人間はいないだろう。歳は40歳すぎだが、仕事の能力の高さや気配りの出来る彼は、管理職の中でも人気が高い。完璧な彼の性格に欠点を探すとしたら、それは優しすぎる性格だろう。しかし好意を持つには十分すぎるほどの人であることに代わりはない。
結果、「月嶋×、村崎部長△」と記した。村崎部長が三角の理由は性格上の問題ではなく、彼が既婚者だからだ。
(よし、次だ)
松田要探偵の推理②
【化学事業部】
(とりあえず田中部長はありえない)
肥えた身体に、冬には同情したくなるほどさらけ出された頭皮。しかし側面に残る生き残りたちが何とも悲しい頭の持ち主田中。村崎と対比して社内の評判はお世辞にもいいとは言えないが、しかし、功績がある事と前の支社長と仲が良かった事から要が勤務する前より部長の座に居座っている。そして彼の功績は、彼自身が築き上げたものではなく、彼の部下達によって築かれたものだが、そこは評価されず、そんな部下を持つ彼が評価される世界を目の当たりにして、要は入社当時「これが社会か」と落胆したのを覚えている。そんな中でも必死に頑張ろうと誓い合った同期の門田は、営業向きの性格から田中部長に目をつけられ、二年目には早々に化学事業部に異動させられた。
(門田か……)
門田は田中ほどではないが少しぽっちゃりしている。入社当時は痩せていたのだが、化学事業部異動した二年目から太りだした。ストレスか、もしくは飲み会好きの田中に引っ張られているせいだと要は思っている。そのせいか同期の要と飲みに行く回数はめっきり減ってしまい、話の上手い門田と飲みにいくのが大好きだったのに、本当に残念なことだった。だからこそ田中に気に入られてあの部署に残っているのだろう。
(営業だから、仁と行動してることも多いはずなんだけどな……)
仁と同じ化学事業部営業担当なら会社では一番接することが多いと踏んだが、やはり頭から離れぬ彼のビフォーアフターに「田中部長× 門田×」と記した。
松田要探偵の推理③
【経理部と総務部】
(知り合いがいない)
部長以外の知人が女性しかその部署にはいない為、すぐに×印を書いた。
(総務なんて、女の部長だしな。残すは……)
「松田さん!」
「えっ? あっ?」
「今日総務に提出の書類作成、終わりましたか?」
「ああ、あれか」
デスクの引き出しから書類を引っ張り出す。
「今日中に総務からの確認は無理かもしれませんね。」
「何で?」
月嶋がデスクのパソコン画面を指差す。液晶には社員の出勤状況が映し出されていた。うちの会社はパソコンで社員の出勤状況が把握できる。総務部の馬淵部長の欄は今は退勤になっているが、横に※マークがついていた。これは今日、馬渕部長に何か予定があるということだ。月嶋がクリックすると
「昼から出張みたいですね!」
「朝一で出せば間に合うか……ありがとう月嶋!」
「いえいえ!」
後輩の機転で業務は滞りなく進みそうだ。しかし一気に仕事スイッチが入ってしまった要は一旦探偵をお休みすることにした。
そして始業後、直ぐに書類を持って総務部に向かう。確認した通り、馬渕は昼から出張の為、その場で書類を確認してくれ、特に訂正する項目もなく書類は綺麗なまま返却され、要は総務部のオフィスをあとにした。総務部は一つ下の階にある為、階段を登りインテリア事業部のオフィスへと戻っている途中、さらに上の階に向かう仁の姿があった。声をかけようと近寄ったが、思いのほか仁の階段を登るスピードが速くて、気が付けば上の階まで来てしまっていた。ちょうどフロアに足を踏み入れようとしたとき、仁が誰かと会話するような声が聞こえ、こっそり様子を窺う。
(アルバート……いや、ミラー副部長か)
遠くて会話の内容までは聞こえなかったが、仁と話をしているのは人事・広報部副部長アルバート・ミラーだ。今年度から入社した社員だが、要は、彼を二年ほど前から知っている。
それは要が社会人二年目の時だった。当時新人だった月嶋の教育担当を任されていたのだが、同時に海外研修生の指導補助も任されていた。主として動いていたのは今の人事・広報部部長の赤澤修一だっが、赤澤が通常業務に加えて三人の海外研修生の指導に手が回らなくなり、村崎の提案で英文科出身の要が補助に入ることになったのだ。その際、月嶋に色々な経験をしてほしかった要は村崎に月嶋も補助に入れてほしいと頼み込んだ。村崎は快諾してくれ、その結果、要がアメリカ人のジョシュア・ヴェネットを、月嶋が当時研修生だったミラーの担当を任されたのだった。あの頃はまだラフに「アルバート」と要も月嶋も彼を呼んでいた。
そんな今や副部長の彼と仁はまだ何か話し込んでいる。
(怒られてんのか?)
急に俯いた仁は、何かばつの悪いことでも言われたのか首筋をさすり始めた。後姿しか見えないが、何とかして表情が見れないかと目を細めた要。その細めた目が赤く染まる耳を捉えた。
(何照れてんだよあいつ! ……まさか)
松田要探偵の推理④
【人事・広報部】
要の額に冷や汗が滲む。心臓が煩い。要は確信し始めていた。きっと仁の好きだった人はミラーなのだと。ミラーは、見てのとおりハンサムで、40歳を過ぎているとは思えない。今や社内でも仕事に厳しい、しかし指導は的確という折り紙付きの管理職だ。その厳しさが堪らないという女性社員もいるが、彼の本質は優しい人間だということを要は知っている。研修生時代、彼の紳士っぷりは真似したくてもまねできるようなものではなかった。そんな非の打ちどころのない彼が……
(仁の好きな人なのか?)
足音がして我に返る。アワアワとしているとミラーが階段のあるフロアにやってきた。
「お、お疲れ様です」
「お疲れ様」
そう言って手を挙げて挨拶した彼の手には煙草の箱が握られていた。それは見覚えのある赤いパッケージ。
(仁から取り上げたのか? いや、そんな学校じゃあるまいし)
「一服ですか?」
「ああ。松田さんは? 人事に用かい?」
「いえ俺は……」
推理の結果があまりにも衝撃的で言葉が出ない。
「間違えて上がってきちゃいました! あは、ははははは! では、失礼します!」
なんて、何とも苦しい嘘をついてしまった。
ミラーを置いて階段を転がるよりに降り、心臓をバクバクさせながらオフィスへ逃げる。
「松田さん、どうでしたか?」
「……」
「松田さん?」
「えっ、あっ。たぶんミラー副部長だ」
「はい?」
「あっ、違う。悪い悪い。ボーっとしてたわ。書類の確認とれたぞ」
「ミラー副部長がどうかしたんですか?」
と、月嶋からすればどうでもいい事を蒸し返してくる。
(そうか、月嶋は……)
「月嶋、今日一緒に昼飯いかない?」
「いいですよ!」
まだ怪訝そうな顔をする月嶋を昼飯に誘う。月嶋はミラー副部長が研修時代の担当だった。もし今でも仲良くしているならもしかすると何か知っているかもしれないと要は考えていた。
あらかた仕事を片付けて二人で食堂へ向かう。月嶋は大盛りのカレーライスを頼んでいた。俺は食欲はなかったが、とりあえず目についた焼きそばを頼んだ。
スプーンを持った月嶋が本格的に食事に集中してまう前に、要は目的を果たすために口を開く。
「月嶋、お前さ……ミラー副部長とまだ話したりする?」
「しますよ!」
「仲良いの?」
「えっ?! いいの……かな?」
「プライベートな事とか話す?」
「ど、どうしてですか?」
何とも歯切れの悪い話し方をする月嶋。変に勘ぐっても仕方がないので率直に聞く。
「ミラー副部長って恋人いるのかな?」
ガチャンッと派手な音が食堂に響く。月嶋が持っていたスプーンを落としたのだ。
「ちょ……っと、新しいの貰ってきます」
ヨタヨタと立ち上がりスプーンをもらいに行く。
(なんだあいつ疲れてんのか?)
新しいスプーンを片手に席に戻った月嶋に同じ質問をする。
「で、恋人いるの?」
「えっと……何故ですか?」
「いや気になったから」
月嶋が困ったような、泣きそうな顔をしている。
(やっぱり疲れてんのか? いや、でも大盛り食ってるしな)
「……いますよ」
ここまで言い渋る必要があるのかと言うくらい渋りながらいう。
「そうなんだ。ミラー副部長って……ハンサムだよな!」
ガチャンッとまた盛大にスプーンを落とす。
「お前大丈夫か?! 体調悪いのか?!」
「そんなことないです! 元気です!」
空元気にも見える月嶋がまたスプーンを貰いに行っている。よく落とすからだろうか、次は二本も貰ったようだ。しかも食堂のおばさんにも人気がある為、飴玉まで貰ってきた。普段なら嬉しそうな顔で要に自慢してくるのに、今は少し晴れない顔で要を見つめている。
「ハンサムだよな!」
「そうですね!!」
ヤケになって答えるが、要にはどうでもよい。
「あの人さ……男に告白とかもされそうだよな」
「えっ?!」
スプーンを落としそうになったがもちこたえた。
「そういう話とかはしないの?」
「しません……ね」
何かを探るような顔で要を見つめるてくる。
「松田さん……もしかしてミラー副部長の事好きなんですか?」
「いや、有り得ないから」
(やっぱりこいつ疲れてるんだな)
ありえない質問をしてくる後輩に焼きそばを半分分けてあげた。
その日の夜、要は仁の家に行った。手ぶらで行くのもあれなのでコンビニで飴を買ってから行く。レジに並ぶとき、レジの向かいのデザートの棚で美味しそうなプリンが一つだけ残っていた。仁の嬉しそうな顔が浮かび、無意識に手を伸ばす。予想通り、仁は嬉しそうな顔でプリンを受け取り、飴はコンビニの袋に入れられたままテーブルに放置された。
嬉しそうな仁とは裏腹にどこか緊張した顔の要は、まるで面接試験のように固まったままソファーに腰かけた。
要が今日来たのはもちろん答え合わせのためだ。
答え合わせしたいのは、要のエゴだった。要としては仁の好きだったやつを超える男になりたいと思っていた。正直、要の考えている人物を超えるには10年あっても足りないだろう。
(相手は英国紳士の管理職だもんな……)
プリンを食べ終え、ゴミ箱にゴミを捨てた仁がちょうど戻ってきて要の横に座る。どうやらプリンのおかげでかなりご満悦のようだ。せっかくこんな顔を見せてくれているのに過去を掘り返すのは忍びないと思った要だったが、彼を超えたい気持ちの方が勝っていた。
「お前ってさ、なんで振られたの?」
ご満悦だった仁の顔が曇る。
「何急に?」
「気になって」
目を細めて、こちらの様子を伺う仁。要は仁が話してくれないと思ったが、重たそうに口を開けて話し始める。
「……恋人がいた。奪えなかったんだよ」
「恋人がいた」その言葉ですべてのロジックが繋がった。
(やっぱりミラー副部長なんだな)
「煙草吸いたい……」
最近、そんなこと言ってなかったのに急にポツリと呟く仁。顔が歪んでいく。
「せっかく禁煙上手くいってるんだから我慢しろよ」
「……」
「どうしたんだよ。最近そんなこと言ってなかったじゃん」
(なんだよ。どうしたんだよ、急に)
「今日さ、俺と同じの吸ってる人と話したら吸いたくなった。匂い嗅いじゃうと、やっぱりダメだなんだよね」
要の記憶が刺激される。あの時だ。要の脳内に廊下で話す仁とミラー副部長の光景が蘇る。
「やば、ほしい」
天を仰ぎ、片手で顔を覆っている仁。
(何が欲しいんだ? 煙草か? それとも…)
言葉の意味の裏に隠されている物が何なのか知りたくて気持ちが逸る。それと同時に嫉妬が沸々と沸き起こる。
「むかつく」
「えっ? 何? 何か言った?」
仁が掌の間から目だけのぞかせる。
「むかつくんだよ!」
仁の上に覆い被さり、顔を覆っていた手をどかす。そこからは物欲しげな、口を薄く開いた仁がいた。要の中で嫉妬が弾けた。
「そんなに……」
自分でも驚くほど低い声が出る。
「そんなに、ミラー副部長が好きかよ!」
怒りで歪んだ顔を仁に向けた要。しかしそれ以上に、さっきまで物欲しげな顔だった仁の顔が怒りに歪む。その変化に釘付けになっていた要は下半身の守りが疎かになっていた。
「ばれねーよな?」
「普通にしてれいばいいでしょ。それに同性の家に泊まるなんて普通なんだし」
「それもそうだな」
泊まって一緒に出社するたびに挙動不審な要に対して、冷静な仁。オフィスは同じ階なので一緒に階段を上がり、同僚のふりをして別れる。
化学事業部のオフィスに吸い込まれるように入っていく仁は、恋人との別れを全く名残惜しむ様子もない。逆に要はそんな仁を少し悲しげな目で見たあと、化学事業部のオフィスを通り過ぎ、インテリア事業部のオフィスへと向かう。早めに来たつもりだったが、既に後輩の月嶋が出社していた。書類とにらめっこをする後輩の背中に
「おはよう!」
と、挨拶をすれば、社内でも評判の明るい笑顔が振り向く。
「おはようございます!」
「早いな」
「松田さんこそ!」
「まあな」
仕事の為に早く出社した月嶋の隣で、デスクに備え付けてあるメモ用紙を一枚取り、胸ポケットに入れているボールペンをカチッとノックする。仕事中にメモをとるかのようにサラサラと文字を並べていく。
(よし!)
メモ用紙に数名の名前を書きあげた。
(今日こそ、仁の好きだったやつを見つけてやる)
貿易会社のオフィスで、探偵っぽい顔つきをする要が手にしている情報は「要の知っている人」「職場の人間」「男」「煙草が関係している」の四つだ。
(手始めに……)
松田要探偵の推理①
【インテリア事業部】
インテリア事業部で仁と面識がある人物として一番に要が思いつくのは、この横で仕事をする後輩だった。しかし……
(ないだろな)
一つ下の後輩・月嶋春人は、入社当時から女性社員に人気がある。要も女性社員に頼まれて昼の食事会をセッティングしたことがある。飲み会は付き合い程度で、前に無理矢理合コンに参加させたことがあったが、まさかの途中退席だった。男には不名誉な「かわいい」という単語がぴったりな彼と、仁が肩を並べているところは、仲良し兄弟のようで、付き合うとかそういう一線を越えるようなものではなかった。
月嶋から視線をずらし、ガラリとしたオフィスを見渡す。そしてまだ無人の部長席で視線が止まる。
(あとは……村崎部長か?)
面識があるかは定かではないが、さすがに部長を知らない人間はいないだろう。歳は40歳すぎだが、仕事の能力の高さや気配りの出来る彼は、管理職の中でも人気が高い。完璧な彼の性格に欠点を探すとしたら、それは優しすぎる性格だろう。しかし好意を持つには十分すぎるほどの人であることに代わりはない。
結果、「月嶋×、村崎部長△」と記した。村崎部長が三角の理由は性格上の問題ではなく、彼が既婚者だからだ。
(よし、次だ)
松田要探偵の推理②
【化学事業部】
(とりあえず田中部長はありえない)
肥えた身体に、冬には同情したくなるほどさらけ出された頭皮。しかし側面に残る生き残りたちが何とも悲しい頭の持ち主田中。村崎と対比して社内の評判はお世辞にもいいとは言えないが、しかし、功績がある事と前の支社長と仲が良かった事から要が勤務する前より部長の座に居座っている。そして彼の功績は、彼自身が築き上げたものではなく、彼の部下達によって築かれたものだが、そこは評価されず、そんな部下を持つ彼が評価される世界を目の当たりにして、要は入社当時「これが社会か」と落胆したのを覚えている。そんな中でも必死に頑張ろうと誓い合った同期の門田は、営業向きの性格から田中部長に目をつけられ、二年目には早々に化学事業部に異動させられた。
(門田か……)
門田は田中ほどではないが少しぽっちゃりしている。入社当時は痩せていたのだが、化学事業部異動した二年目から太りだした。ストレスか、もしくは飲み会好きの田中に引っ張られているせいだと要は思っている。そのせいか同期の要と飲みに行く回数はめっきり減ってしまい、話の上手い門田と飲みにいくのが大好きだったのに、本当に残念なことだった。だからこそ田中に気に入られてあの部署に残っているのだろう。
(営業だから、仁と行動してることも多いはずなんだけどな……)
仁と同じ化学事業部営業担当なら会社では一番接することが多いと踏んだが、やはり頭から離れぬ彼のビフォーアフターに「田中部長× 門田×」と記した。
松田要探偵の推理③
【経理部と総務部】
(知り合いがいない)
部長以外の知人が女性しかその部署にはいない為、すぐに×印を書いた。
(総務なんて、女の部長だしな。残すは……)
「松田さん!」
「えっ? あっ?」
「今日総務に提出の書類作成、終わりましたか?」
「ああ、あれか」
デスクの引き出しから書類を引っ張り出す。
「今日中に総務からの確認は無理かもしれませんね。」
「何で?」
月嶋がデスクのパソコン画面を指差す。液晶には社員の出勤状況が映し出されていた。うちの会社はパソコンで社員の出勤状況が把握できる。総務部の馬淵部長の欄は今は退勤になっているが、横に※マークがついていた。これは今日、馬渕部長に何か予定があるということだ。月嶋がクリックすると
「昼から出張みたいですね!」
「朝一で出せば間に合うか……ありがとう月嶋!」
「いえいえ!」
後輩の機転で業務は滞りなく進みそうだ。しかし一気に仕事スイッチが入ってしまった要は一旦探偵をお休みすることにした。
そして始業後、直ぐに書類を持って総務部に向かう。確認した通り、馬渕は昼から出張の為、その場で書類を確認してくれ、特に訂正する項目もなく書類は綺麗なまま返却され、要は総務部のオフィスをあとにした。総務部は一つ下の階にある為、階段を登りインテリア事業部のオフィスへと戻っている途中、さらに上の階に向かう仁の姿があった。声をかけようと近寄ったが、思いのほか仁の階段を登るスピードが速くて、気が付けば上の階まで来てしまっていた。ちょうどフロアに足を踏み入れようとしたとき、仁が誰かと会話するような声が聞こえ、こっそり様子を窺う。
(アルバート……いや、ミラー副部長か)
遠くて会話の内容までは聞こえなかったが、仁と話をしているのは人事・広報部副部長アルバート・ミラーだ。今年度から入社した社員だが、要は、彼を二年ほど前から知っている。
それは要が社会人二年目の時だった。当時新人だった月嶋の教育担当を任されていたのだが、同時に海外研修生の指導補助も任されていた。主として動いていたのは今の人事・広報部部長の赤澤修一だっが、赤澤が通常業務に加えて三人の海外研修生の指導に手が回らなくなり、村崎の提案で英文科出身の要が補助に入ることになったのだ。その際、月嶋に色々な経験をしてほしかった要は村崎に月嶋も補助に入れてほしいと頼み込んだ。村崎は快諾してくれ、その結果、要がアメリカ人のジョシュア・ヴェネットを、月嶋が当時研修生だったミラーの担当を任されたのだった。あの頃はまだラフに「アルバート」と要も月嶋も彼を呼んでいた。
そんな今や副部長の彼と仁はまだ何か話し込んでいる。
(怒られてんのか?)
急に俯いた仁は、何かばつの悪いことでも言われたのか首筋をさすり始めた。後姿しか見えないが、何とかして表情が見れないかと目を細めた要。その細めた目が赤く染まる耳を捉えた。
(何照れてんだよあいつ! ……まさか)
松田要探偵の推理④
【人事・広報部】
要の額に冷や汗が滲む。心臓が煩い。要は確信し始めていた。きっと仁の好きだった人はミラーなのだと。ミラーは、見てのとおりハンサムで、40歳を過ぎているとは思えない。今や社内でも仕事に厳しい、しかし指導は的確という折り紙付きの管理職だ。その厳しさが堪らないという女性社員もいるが、彼の本質は優しい人間だということを要は知っている。研修生時代、彼の紳士っぷりは真似したくてもまねできるようなものではなかった。そんな非の打ちどころのない彼が……
(仁の好きな人なのか?)
足音がして我に返る。アワアワとしているとミラーが階段のあるフロアにやってきた。
「お、お疲れ様です」
「お疲れ様」
そう言って手を挙げて挨拶した彼の手には煙草の箱が握られていた。それは見覚えのある赤いパッケージ。
(仁から取り上げたのか? いや、そんな学校じゃあるまいし)
「一服ですか?」
「ああ。松田さんは? 人事に用かい?」
「いえ俺は……」
推理の結果があまりにも衝撃的で言葉が出ない。
「間違えて上がってきちゃいました! あは、ははははは! では、失礼します!」
なんて、何とも苦しい嘘をついてしまった。
ミラーを置いて階段を転がるよりに降り、心臓をバクバクさせながらオフィスへ逃げる。
「松田さん、どうでしたか?」
「……」
「松田さん?」
「えっ、あっ。たぶんミラー副部長だ」
「はい?」
「あっ、違う。悪い悪い。ボーっとしてたわ。書類の確認とれたぞ」
「ミラー副部長がどうかしたんですか?」
と、月嶋からすればどうでもいい事を蒸し返してくる。
(そうか、月嶋は……)
「月嶋、今日一緒に昼飯いかない?」
「いいですよ!」
まだ怪訝そうな顔をする月嶋を昼飯に誘う。月嶋はミラー副部長が研修時代の担当だった。もし今でも仲良くしているならもしかすると何か知っているかもしれないと要は考えていた。
あらかた仕事を片付けて二人で食堂へ向かう。月嶋は大盛りのカレーライスを頼んでいた。俺は食欲はなかったが、とりあえず目についた焼きそばを頼んだ。
スプーンを持った月嶋が本格的に食事に集中してまう前に、要は目的を果たすために口を開く。
「月嶋、お前さ……ミラー副部長とまだ話したりする?」
「しますよ!」
「仲良いの?」
「えっ?! いいの……かな?」
「プライベートな事とか話す?」
「ど、どうしてですか?」
何とも歯切れの悪い話し方をする月嶋。変に勘ぐっても仕方がないので率直に聞く。
「ミラー副部長って恋人いるのかな?」
ガチャンッと派手な音が食堂に響く。月嶋が持っていたスプーンを落としたのだ。
「ちょ……っと、新しいの貰ってきます」
ヨタヨタと立ち上がりスプーンをもらいに行く。
(なんだあいつ疲れてんのか?)
新しいスプーンを片手に席に戻った月嶋に同じ質問をする。
「で、恋人いるの?」
「えっと……何故ですか?」
「いや気になったから」
月嶋が困ったような、泣きそうな顔をしている。
(やっぱり疲れてんのか? いや、でも大盛り食ってるしな)
「……いますよ」
ここまで言い渋る必要があるのかと言うくらい渋りながらいう。
「そうなんだ。ミラー副部長って……ハンサムだよな!」
ガチャンッとまた盛大にスプーンを落とす。
「お前大丈夫か?! 体調悪いのか?!」
「そんなことないです! 元気です!」
空元気にも見える月嶋がまたスプーンを貰いに行っている。よく落とすからだろうか、次は二本も貰ったようだ。しかも食堂のおばさんにも人気がある為、飴玉まで貰ってきた。普段なら嬉しそうな顔で要に自慢してくるのに、今は少し晴れない顔で要を見つめている。
「ハンサムだよな!」
「そうですね!!」
ヤケになって答えるが、要にはどうでもよい。
「あの人さ……男に告白とかもされそうだよな」
「えっ?!」
スプーンを落としそうになったがもちこたえた。
「そういう話とかはしないの?」
「しません……ね」
何かを探るような顔で要を見つめるてくる。
「松田さん……もしかしてミラー副部長の事好きなんですか?」
「いや、有り得ないから」
(やっぱりこいつ疲れてるんだな)
ありえない質問をしてくる後輩に焼きそばを半分分けてあげた。
その日の夜、要は仁の家に行った。手ぶらで行くのもあれなのでコンビニで飴を買ってから行く。レジに並ぶとき、レジの向かいのデザートの棚で美味しそうなプリンが一つだけ残っていた。仁の嬉しそうな顔が浮かび、無意識に手を伸ばす。予想通り、仁は嬉しそうな顔でプリンを受け取り、飴はコンビニの袋に入れられたままテーブルに放置された。
嬉しそうな仁とは裏腹にどこか緊張した顔の要は、まるで面接試験のように固まったままソファーに腰かけた。
要が今日来たのはもちろん答え合わせのためだ。
答え合わせしたいのは、要のエゴだった。要としては仁の好きだったやつを超える男になりたいと思っていた。正直、要の考えている人物を超えるには10年あっても足りないだろう。
(相手は英国紳士の管理職だもんな……)
プリンを食べ終え、ゴミ箱にゴミを捨てた仁がちょうど戻ってきて要の横に座る。どうやらプリンのおかげでかなりご満悦のようだ。せっかくこんな顔を見せてくれているのに過去を掘り返すのは忍びないと思った要だったが、彼を超えたい気持ちの方が勝っていた。
「お前ってさ、なんで振られたの?」
ご満悦だった仁の顔が曇る。
「何急に?」
「気になって」
目を細めて、こちらの様子を伺う仁。要は仁が話してくれないと思ったが、重たそうに口を開けて話し始める。
「……恋人がいた。奪えなかったんだよ」
「恋人がいた」その言葉ですべてのロジックが繋がった。
(やっぱりミラー副部長なんだな)
「煙草吸いたい……」
最近、そんなこと言ってなかったのに急にポツリと呟く仁。顔が歪んでいく。
「せっかく禁煙上手くいってるんだから我慢しろよ」
「……」
「どうしたんだよ。最近そんなこと言ってなかったじゃん」
(なんだよ。どうしたんだよ、急に)
「今日さ、俺と同じの吸ってる人と話したら吸いたくなった。匂い嗅いじゃうと、やっぱりダメだなんだよね」
要の記憶が刺激される。あの時だ。要の脳内に廊下で話す仁とミラー副部長の光景が蘇る。
「やば、ほしい」
天を仰ぎ、片手で顔を覆っている仁。
(何が欲しいんだ? 煙草か? それとも…)
言葉の意味の裏に隠されている物が何なのか知りたくて気持ちが逸る。それと同時に嫉妬が沸々と沸き起こる。
「むかつく」
「えっ? 何? 何か言った?」
仁が掌の間から目だけのぞかせる。
「むかつくんだよ!」
仁の上に覆い被さり、顔を覆っていた手をどかす。そこからは物欲しげな、口を薄く開いた仁がいた。要の中で嫉妬が弾けた。
「そんなに……」
自分でも驚くほど低い声が出る。
「そんなに、ミラー副部長が好きかよ!」
怒りで歪んだ顔を仁に向けた要。しかしそれ以上に、さっきまで物欲しげな顔だった仁の顔が怒りに歪む。その変化に釘付けになっていた要は下半身の守りが疎かになっていた。
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(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話
タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。
瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。
笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
鈴木さんちの家政夫
ユキヤナギ
BL
「もし家事全般を請け負ってくれるなら、家賃はいらないよ」そう言われて鈴木家の住み込み家政夫になった智樹は、雇い主の彩葉に心惹かれていく。だが彼には、一途に想い続けている相手がいた。彩葉の恋を見守るうちに、智樹は心に芽生えた大切な気持ちに気付いていく。
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