ワンライ!

ベンジャミン・スミス

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極小こそ極上なり!【研究員×刑事】

第一話 「開けてくれ!」

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 筋肉質な身体に色気はなし。最近はシワも増え肌の調子も良くない。仕事は多忙で女っ気の全くない丹波たんば(38)に、最近、ストーカーをする強者が現れた。
しかも変態だ。
刑事課のロッカーにはラブレターではなくメモ用紙。達筆な字。「惚れました」という言葉はあれど、その前に「貴方の男性器に」とおまけがついている。
そして極めつけはメモ用紙と共に必ず置いてある粘土。

【私は貴方の男性器に惚れました。その粘土で勃起した貴方の男性器の型をとってください】

 丹波のストーカーはかなりの変態だ。
なのに彼は警戒を怠った。
その結果──

「開けてくれ!!」

 署のトイレに閉じ込められてしまった。


            *



「おい! 開けろって言ってんだろ! 誰だテメーは!」

 腹痛の事など忘れて丹波は個室トイレのドアを叩いた。後ろの洋式トイレの蓋の上にはいつもの粘土とメモ用紙。

「叫ぶ前に男性器の型をとって貰えないでしょうか?」

 高い声だ。しかし、女ではない。無機質でどこかで聴いたことがある。

「変声機か」

 よく密着24時系で聞く、甲高い変声機を通した声が犯罪臭をさらに高めさせる。

「てめーの相手してる暇はないんだ。早く開けろ!」
「型をとってくれれば開けます。さぁ、早く」

 ガンガンと扉を殴り、鍵を壊そうと画策するが騒音が充満するだけで壊れる気配はない。

「ちっ、ッ! ……くそっ!」

 この後大切な張り込みを控えた丹波にはもう型をとるという選択肢しか残っていなかった。
 便器の上にある油粘土を振り返り生唾を飲む。

「市民の平和が優先だ」

 丹波はひんやりとする粘土を伸ばし、ゆっくり雄の周りに巻く。独特な香りが鼻をつき、手のベタベタも気になる。しかし腕時計の針が示す数字に作業の手を早めた。

「とったぞ」

 丹波の拳に痛めつけられた扉の下からメモ用紙が投げ込まれていた。

【その型はちゃんと置いていってくださいね。ありがとうございます】

 扉の鍵もすんなり開いた。
隣の個室を覗くが人の気配はしない。

「絶対にとっ捕まえてやる」

 1つの事件を残し、もう1つの事件へと熱血刑事は向かった。
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