テトテヲトッテ ~杖と拳と時々亜人~

更楽 茄子

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討伐

その13

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「ですが姫様!。ならばせめて一緒に逃げましょう!?」

赤髪の夢魔、ガーベラが姫と呼ぶ少女に懇願する。

「そうです。あんな大軍相手なんて、いくら姫様でも危険すぎます!」

紫髪の夢魔、ラベンダーも姫と呼ぶ少女にすがった。


「ならぬ。逃げに逃げてここまで来たのじゃ。仲間も何人も失った。儂はもう逃げるのに疲れたのじゃ」

少女が顔を逸らし、窓から見える空を見る。

「確かにサンド=リヨンの大軍相手は危険かもしらん。破夢の宝石も盗り損ねた。じゃが、大軍ならばこそ儂にも勝ち目があるのじゃ」

そして姫と呼ばれる少女は、二人の女性の方に向き直ると、確固たる意志を持って命令をする。

「生き残るのじゃ、そして夢魔族を守ってほしいのじゃ。もうお前たちにしか出来ない事なのじゃ…頼むのじゃ…」



少女の思いの強さを知り、もう曲げる事が出来ないと諦め、ガーベラとラベンダーは少女に別れの言葉を継げると、背の羽を羽ばたかせて窓から空へと飛び立っていった。

「二人ともすまん…じゃが、儂にも軍王としての誇りがあるのじゃ。負けて逃げ続けるだけなんか、もうまっぴらなのじゃ…」


姫と呼ばれていた夢魔の少女は、実は魔王軍第6軍団長だったのだ。

夢魔王プリティ=ドリーマー、それが少女の名前である。


色々あって魔王軍の中では疎まれ、半ば追放的に城を出て放浪を余儀なくされた。

それから転々としながら各地で何とか生を繋いでいたが、今の時代はあまりに夢魔にはきつすぎた。

生きていくだけでもままならない、種族繁栄どころか既に絶滅寸前である。

そう、今や世界には夢魔族は少女と先ほど出ていった2名の計3名しか存在しない状況だった。


「繁栄し続ける愚か者共よ、滅ぶ直前の夢魔族の意地を思い知るのがいいのじゃ…」

少女は窓の方に見える黒い集団に、覚悟の乗った強い視線を向け睨みつけた。



「団長、あそこに見えてる遺跡が、夢魔の居城とされているところです」

騎士が一人が騎士団長ギルの前に出てきて報告する。

「あれであるか…攻撃手段の情報はない。だが、なにやら怪しい魔法を使うと言う話なのである。各自、意思を強く持って当たるのである!」

ギルは後ろにいる騎士団に大声で気合を入れさせる。

「では、騎士団行くのである!。吾輩に続くのである!」

「「「お─────っ!!」」」

騎士達の声が上がり、進軍が開始された。



「…ところで、冒険者殿は行かなくて良いのですか?」

ギルからこの青年の監視を命令された兵士は、気になっていたことを尋ねる。

噂でこの冒険者は、王に進言してまで無理矢理ついてきたと聞く。

なのに、作戦会議にも参加させてもらえず、討伐隊にも混ざらずにおとなしく後ろからついてきている。


こうなる事は流石に分かっていたはずだ。

では、それでも無理やりついてきた理由は、討伐のどさくさに紛れての夢魔が持ってる宝の横取りであろう。


なのにこの青年は、進軍が開始したのに未だのんびりとついて行っている。

騎士団が遺跡に入り戦闘を開始したら、盗むどさくさはないだろうになぜだろう?。

不思議に思い、だが決して油断はせずに兵士は青年を見張り続けた。



「…作戦会議は機密だからと追い出され、さっきも邪魔するなと釘を刺されてるしな。とりあえずは大人しくしておこう」

青年は横の兵士に返事をしながらも、騎士団の方をずっと見ている。

「…それに、結果は見えている」

「一体それはどういうことですか…?」


兵士の質問に青年は答えない。

とりあえず見張りをきちんとやろうと、兵士は気を引き締めた。

 
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