テトテヲトッテ ~杖と拳と時々亜人~

更楽 茄子

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第四章 中立都市ジュライ

その1 序

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少し暗く、でも荘厳な雰囲気すら感じる広い室内。

その部屋の中央に置かれた大きな円卓があり、それを囲むように多数の人影が見える。


その中の一人が声を上げた。

「数年前の第4軍王に続き、最近第6軍王がサンド=リヨンの方でやられたらしいな?」

第3軍と書かれた札のある席に座る人影から声が発される。


濃い緑色の肌、全体的に太い感じのする体型だが、全体的に鍛えられていた。

俗にいうオークと呼ばれる異種族である。

彼は第3軍王・オークキング、名前はヴォーグという。


「その2名は魔王城にも戻らずに徘徊していた者達だ。今の我らの戦力には考えていなかったので、いなくなろうが支障はないであろう」

目の前には第1軍と書かれた札が置かれている。

頭には羊のような角、背中には蝙蝠のような翼を生やした、魔人と呼ばれる異種族。

第1軍王・魔人王ソヴァである。


「でもさすがにやられっぱなしなんて話はないだろう。これで調子に乗られても厄介だ、人間共を俺に叩かせろ」

オークキングが息を荒げて魔人王へ向けて言う。

「あまり大群で動くと、ジュライの奴等が出てくるのではないか?。あの魔法騎兵共だけは厄介だ」

「わかってる、だからうちの第2部隊に行かせる。あれくらいなら見つからずに侵攻できるだろう」

魔人王は腕を組み考えている風だ。


「オーク第2部隊か………確かに奇襲向きだし、それなりの戦力なのは分かるが、サンド=リヨンやバース相手だときつい様に思われるが?」

「あぁ、だから更に南のウィズ=ダムを叩く。上手く潰せりゃ、南北からバースを攻めれるだろう?」

確かにウィズ=ダムは遠いが国力は低く、三国の常時最下位だ。

オーク第2部隊、俗称オーク奇襲部隊でも制圧できるようには思われる。


「だが、第2部隊は奇襲に特化しているのだろう?。少々決定力に欠ける様にも見えるが?」

「あぁ、だから第10軍にも兵を貸してもらう。いいよな?」

オークキングが第10軍と書かれた席に座る、巨大な人影へと声をかける。

赤く焼けた肌、ゆうに3メートルはあるかという巨体、トロールという異種族である。

そしてその王、巨人王トロールキングブラッドウッド、それが彼の名だった。


「…了解した。我らトロール全軍、第3軍に従おう」

「って事でいいか、ソヴァ?」


それならばと魔人王は同意すると、横の豪華な椅子に座っていた人影へと振り向き、伺いをたてる。


「…よい、ヴォーグの好きにやらせよ」

はっと恭しく一礼すると、魔人王は円卓全員へと告げる。

「魔王様もこうおっしゃってられる。見事ウィズ=ダムを落としてみせるがよい!」

「はっ、必ずや!」

オーク王が大げさに礼をする。下を向いて見えないが、その顔はニヤニヤと嫌らしい笑いをしていた。

 
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