サイオニック・レイヤーズ

来星馬玲

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羅刹の風神、雷神

情欲の花弁が殉じるものとは

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 ぼくはカナデに向かって突きかかり、一気に床へ押し倒した。どたんと音がして、彼女の身体が床に投げ出される。カナデは微かに呻いただけで、悲鳴を上げない。状況に困惑している様子はありありと浮かんでいるけど、抵抗は弱かった。

『そうだ。こいつはどうせ逆らえない……そう刷り込まれているんだよ』

 まただ。これはぼくの意識内で反響しているけど、まるで他人の思考だ。ぼくの意識内に複数の人間の意思が同時に混在している……そんな、状況だった。

「G……どうして、こんな」

 カナデの表情は今にも泣きだしそうに見えた。いつもの冷静で大人びた彼女の顔つきとはあまりにもギャップが激しい、少女の顔。

 カナデもこんな顔をするんだ――ぼくの内に唐突な愛おしさと狂った情欲が沸き起こる。

(駄目だよ。ぼくは何をやっているんだ)

 しかし、ぼくの意識下での訴えは、ぼくという意識を統括している淫欲の鬼に背徳感を与えるには、到底至らなかった。

「や、やめて」

 カナデが弱々しい声でそう言った。ぼくは自分の欲情を抑え込もうとしたけど、ぼくを動かすより強い意志には成すすべがない。

「誘ったのはお前だろう」

 ぼくの発言にはあからさまな嫌味が含まれていた。

「そ、それは……」

 カナデは有耶無耶なことばかり言っていて、はっきりと否定しない。……何故だ、カナデの力ならぼくを払いのける程度、わけないはずなのに。ただいやいやするように身をよじらせるだけで、ほとんどされるがままになっているんだ。

 ぼくはカナデのズボンを引きずり下ろした。そして、カナデの股間部分へ視線を向け、ぼくははっとなる。カナデは下着を身につけていなかったからだ。

「穿いてない……へえ、そんなにすぐしたかったのか」

「ち、違うの……いつも着物だから、たまたまつけていないだけで」

 その瞬間、ぼくの脳裡に、あの和室で自らの秘部を弄っていたカナデの姿が映し出された。着物をはだけさせた時のカナデはやはり、下着の類を身につけていなかったんだ。

「炎帝は下着とかつけないもの……和服だから」

「でもさあ……」

 ぼくはするっと手を伸ばして、露わになっているカナデの恥丘の辺りを撫でた。豊かな陰毛がさわさわと音色を奏でている。

「ここ」

 中指と示指をピストルのように合わせて、膣口に触れる。そのまま突き刺すかのように指を押し当てた。

「……う……うぅ」

 カナデの声もまた、甘い音色だった。ぼくはカナデの陰部から指を引き抜くと、仰向けに倒れているカナデの顔の前で、閉じていた二本の指を開いて見せた。

 ねちゃあとネバついた液体が糸を引き、カナデの頬にもぽつぽつと零れる。

「びちょびちょだよ。カナデのおまんこ」

 おまんこ……普段は使わない言葉が自分の口から発せられ、ぼくは驚く。カナデは目を見開き、ぼくの顔を凝視していた。

「もしかして、ぼくの部屋にきた時からずっとこうだったの?」

 これもまた、予想外の発言だった。でも、ぼくの意識内では、カナデの淫らな心理などお見通しだとでも言いたげな、得意がっている感情がはっきりとその存在を主張し続けているんだ。

「…………」

 やっぱり、カナデは否定しない。ぼくは……ぼくはきっと、下卑た笑みを浮かべている。自分の表情筋がまるで他人事だった。

 ぼくの指がカナデの首筋を伝う。子猫をあやしているように彼女の喉元をくすぐった。カナデの肌の感触は瑞々しく、愛液を塗りたくられた部分が真珠のような光沢を表現している。

「ん……」

 喉のある辺りの肌を指で押され、カナデが艶めかしく息を吐く。生暖かい感触がぼくの腕を当たっていた。

 カナデの瞳がうるうると震えているように見える。全身は強張ったまま、次は何をされるのかと身構えている。

 身構えている? ……カナデが次の行為に期待している。ぼくはそう思ってしまった。

 ぼくの顔が、カナデの耳元に近づけられた。そのまま、猫なで声で囁く。

「可愛いよ……カナデ」

 カナデの身体が小さく、びくんと跳ねた。ぼくの脳裡には、女性が性感を刺激された時の動作――アユミやアンジュの肢体が想起させられた。

 カナデの上に覆いかぶさっていた身体が離され、今度は中指だけが真っ直ぐと立てられた。その指先をもう一度カナデの秘部……肉ひだの連なる穴の中間へ当てる。

「あ……あぁ」

 カナデはぼくの手を見つめたまま、全身をぷるぷると震わせている。カナデの右足が曲げられ、むっちりとした太ももがぼくの視界を遮り、その先にある肉付きの良いふくらはぎが艶めかしい。

 中指が膣口にあてがわれ、挿入される。今度は、さっきよりも深い。膣内で指の関節が曲げられ、愛液で濡れた、ぷるぷるとした柔肉が吸い付いてくる。

「はあ……あぁぁ」

 カナデの嬌声。先ほどまでは大分抑えられていたけど、段々と我慢できなくなってしまっているらしい。それが、ぼくの意識内で膨らんでいく情欲の炎に油を注いだ。

 中指が前後に激しく動かされる。指先に込められた力は強く、それはもはや愛撫というよりも責めに近かった。

「う……あっ! あっあっああああ!」

 カナデの顔が大きくのけぞり、天を仰いで声を張り上げた。カナデの身体はあまりにも……感じやすいようだ。

「もっと……太く、激しくするよ」

 抽挿を繰り返す中指に、示指が合わせられる。そして、蜜壺のより奥を目指して、何度も何度も、秘肉をかき分けながらカナデの性感を刺激し続けた。

「あうっ……うぅ……うっうっ! はあぁぁん!」

 カナデの両足がパタパタと暴れてぼくの胸元に当たる。といっても、ぼくを押しのけようとするものではなく、快感にのたうち回っているようで、催促を訴えた動きであるようにも感じられた。

 二本の指先が押し込まれる度に、指の根元までがずっぽりと肉に包まれてしまう。ぼくの手にはより強い力が込められ、膣内の子宮にまで届かないもどかしさを振りほどくかのように、荒々しく乱暴になる。

「あぁ……ま、待って……痛い!」

 カナデは泣きそうだ。ぼくの内では嗜虐心が高鳴り、更なる激しい行為を欲した。

「痛い……痛いよぉ」

 口でははっきりと痛がっている。でも、ぼくの瞳には、カナデののたうつ肉体は快楽に対して虚しい抗いを見せているとしか、映っていないんだ。ぼくは止めどころを見失い、カナデに対する責めの勢いを加速させていく。

「いつ……! あっぎぃぃィィ!」

 カナデの全身が大きく痙攣し、四肢が力なく果てた。すると、カナデの陰部からは噴水のように白っぽい液体が吹き出し、ぼくの顔を濡らす。

 ぼくは濡れた顔をカナデから引き離し、手で拭った。手は粘着き、ベタベタしていた。

 カナデはぼくの指先だけで絶頂してしまったんだ。ムラムラした劣情が怒りにも似た激しさで滾ってくる。

 カナデは床に横たわっている裸足を曲げたまま、痙攣を繰り返している。そんなカナデをなめ回すかのように、ぼくの視線が巡らされる。

 カナデの秘所からは愛液だけではなく……血が流れていた。その血の意味するところを想像し、ぼくの欲望は更なる高鳴りを繰り返す。

「ひぐ……ひく……ひっく」

 カナデは涙を流していた。そこにあるのは、決して逆らうことを許されない者の悲壮感だった。

「……カナデ」

 優しくカナデの名を囁くぼくの声。でも、その優しさはうわべだけで……ぼくは次の行為に取り掛かる準備を開始していたんだ。

 ぼくはカナデの両足の太ももを掴み、股を大きく開かせた。それを見たカナデが泣き止み、目を見開く。

「な……何を……」

 カナデの問い。ぼくの発する答えなど、決まっていた。

「ここからが本番だよ。カナデもずっと待ち望んでいたんだろう?」

 待ち望んでいただって? 怯えて、泣いているじゃないか。痛がっていたじゃないか。それでも……ぼくはそう信じて疑おうとしないんだ。

「そ、そんな……」

 カナデは言いかけて口をつぐんでしまう。こんな目にあっても、歯向かおうとしないのか。ぼくはカナデがとても強い女性だと思っていたけど、実際はあまりにもか弱い女の子なんだと思い知らされていた。

 ぼくはズボンを脱ぎ、下半身を露出させた。すでに固く勃起していた肉棒が力強く己の存在を主張している。

「それが……あなたの」

 カナデが……ぼくのペニスに見入っている。どうして……どうして、そんな期待の色で染まった目で見るんだ。

「さっきは痛くしてごめんね。今度はもう少し、優しくしてあげるよ」

 全く悪いとは思っていないぼくがそう告げると、ペニスの先端を膣口にあてがう。

「え……服着たまままま、するの?」

 今更過ぎる問いだった。

「カナデは着衣セックスの方が燃えそうだからね」

 カナデの下半身は生まれたままの姿になっているけど、上半身では朱のセーターに覆われた豊満なバストが温かく息づいている。パンツを穿いていないカナデのことだから、ブラジャーだって身につけていないのだろう。そう思うだけで、女性の裸を前にした時よりも興奮してしまう。

 そして、カナデがぼくの意図に従い、いじらしく身をよじらせた。むちむちした両足がM字に開脚される。

「入れるよ」

 ぼくは淡々とした口調だった。カナデへの愛おしさは募っているのに、相手を思いやろうとする感情が欠如している。ぼくは冷たい人間になってしまったのだろうか。

「う……うん」

 カナデの言葉。カナデは……はっきりと、了承してしまった。

 ズッと突き入れられるぼくの肉棒。指の時よりも太いものを挿入され、カナデが一際大きな嬌声を張り上げた。

「はあぁぁあん!」

 そのまま始まるピストン運動。強く脈動し、摩擦する肉と肉の感触。

 カナデにはもう、痛がっている様子は見られなかった。ただ快楽に身を委ねるメスの本能に従う肉体がそこにあった。カナデは覆いかぶさっているぼくに抱き着き、お互いの肉をより深く密着させてくる。

 所謂、正常位だった。男を受け入れる態勢でいるカナデに対して、ぼくは腰を強く動かし続ける。

 何度も挿入角度が変えられ、変化するカナデの内部の感触を味わう。快楽を貪る自分がいる一方で、その都度、カナデの反応の変化を観察し、彼女が最も感じる攻め方を推敲している冷静なぼくがいた。

「うあぁん! やん! あきゃん!」

 子犬のような喧しくも可愛い鳴き声。カナデを感じさせていると思い、猶更に欲情して興奮するぼく。

(ここだ……ここがこの女のGスポット)

 カナデの最も感じると思しき性感帯を分析し、発見するぼく。ぼくは得意になって腰を振り、己の肉欲と支配欲を同時に満たしていく。

「あん! あうん!」

 もはや最初の戸惑いはなくなり、快楽に溺れる雌犬。堕ちた。あまりにもあっけない陥落だ。

「そろそろ出すぞ」

 その言葉通り、ぼくの肉棒は限界まで怒張し、今にも爆ぜようとしている。この女に己の存在を刻印し、生きている限り逆らえぬ肉へと変えさせようとする意思。

「うぅぅぅぅぅ!」

 雌の本能が直感したのだろうか。カナデの膣壁がきゅうっと収束して強く締め付けてくる。そして、肉の圧迫に耐え切れず……ぼくは射精した。

「うあ! うあぁぁぁあああん!」

 甘く、激しく、そしてどこか切ないカナデの声。ぼくは腰を動かしながら、ドクンドクンとペニスを脈打たせて、精液を流し込む。カナデの肉壺は、それを一滴も逃すまいと搾り取ってきた。

 力なく、ぐったりとするカナデ。ぼくはそんなカナデの身体を優しく撫でてやった。

「カナデ」

 可愛い。とてもエッチだけど、いじらしくて、健気な恥じらいも見せてくれた。女の子なんだ、カナデも。

 ぼくの意識内は落ち着いていた。でも、その奥深くで、ぼくの正気を揺るがしかねない深層意識に潜む鬼の如き者がほくそ笑んでいる。

 ぼくは……自分が怖い。


 
 装飾に乏しい、白い部屋。椅子に腰を下ろし、机と向かい合っていたアラベナの視線が一輪の赤い花へ向けられた。丁度その時、花弁の一枚がぽとりと卓上に落ちたところだった。

「花の命は短い……よく言ったものね」

 アラベナが呟いた。室内でありながら、碧緑の長髪が微風に煽られているかのように妖しく揺らぐ。

「そう、花は永遠の緑を願い、それに殉じて逝く。紡がれる命は、常に次の命の犠牲者」

 微笑むアラベナ。その表情を見る者がいれば、寂しさの色を感じ取っていたかもしれない。
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