d+d【先行公開版】

Hilde

文字の大きさ
9 / 66
【先行公開版】第一章 壁 - Wall -

エーリン - Elin - 1 挿絵

しおりを挟む


◯バラトール共和国・メッシュ市・シゥイン宅・2階・ダイニング

この世界最大の大陸、アルテラシア大陸。その東部に位置する小さな国、バラトール共和国。
その首都メッシュの大通りに面したシゥイン薬局。
その店舗兼住宅の2階ダイニングで、エーリン、娘のルルディ、義父のシゥインが、お茶の時間を楽しんでいる。

エーリン「パパさん、私、以前話していたロマニ語の調査に出ようと思うのだけど、アヴェスとルルディをお願いできるかしら? ルルディも小学校を卒業してパパさんのお手伝いができるようになったし」

シゥイン「そうか。とうとう行くんだね。調査にはどの位かかりそう?」

エーリン「2、3年で帰って来れたらいいと思ってるわ」

シゥイン「帰る時は手紙マラトンを送って欲しいな。迎えに行くよ」

エーリン「ありがとう、パパさん」


◯同(日曜日のお昼)

旅に出るエーリンの壮行会に一族が集う。
シゥインの娘ヤンシャの家族、息子ルイの家族、ヤンシャ一家と同居しているディミトリ。
テーブルの上にシゥインが腕を振るった料理が並べられている。

シゥイン「エーリンがロマニ語の調査の旅に出ることになったんだ。2年から3年かけて、世界中のロマを訪ねて言語と文化の違いを調査するそうだ」

エーリン「皆さん、今日は来てくれてどうもありがとう。ロマは世界中に散らばっているから言葉も文化もクンパニア移動集団によって少しずつ違います。南のロマと北のロマでは話が通じないこともあります。私はその違いを調査・分類して本にまとめたいと思っています。私が居ない間、アヴェスとルルディをよろしくお願いします」

シゥイン「では、エーリンの旅の安全と成功を祈念して、皆で乾杯しよう」

一同「乾杯」

 ✕ ✕ ✕

椅子が足りないため立食でシゥインの料理を思い思いに楽しむ。

エーリンの息子アヴェス「母さん、もしエンパイア国に来ることがあったらリュケイオン大学俺の大学を訪ねてよ。ローマ市を案内するよ」

エーリン「わかったわ」

ルイの娘ダイアナ「伯母様、私も世連本部に居るのでいらしてください」

アヴェス「あ、5月は俺も世連に居る。大学の卒業前研修をするんだ」

エーリン「あら、じゃあ二人は1カ月同じ職場で働くのね」

アヴェス、ダイアナ、赤くなる。

 ✕ ✕ ✕

ディミトリ「はい、リュナ」

ディミトリ、ヤンシャの娘リュナに春餅チュンビンを載せた皿を渡す。

リュナ「ありがとう」

リュナ、春餅チュンビンで具を包みながら
「ディミトリも卒業前研修をするのよね? どこに行くの?」

ディミトリ「俺はフランク国政府にした」

リュナ「私達の国ね」

ディミトリ「本当は、母さんの故郷のルーシ帝国に行きたかったんだ。皇帝が制度改革に着手して近代化を進めていたから」

リュナ「あら、でも、皇帝は…」

ディミトリ、肩をすくめて、
「うん。その皇帝が暗殺されて、ルーシ帝国は保守的な体制に戻ってしまった」
自分の春餅チュンビンに具を載せる。
「だから、フランク国自分の国の政治家とコネクションを作るほうがいいかな、って」
春餅チュンビンを一口で食べ終え、リュナに微笑む。
「実家から通えるしね」

 ✕ ✕ ✕

シゥイン、包み紙に包まれた腊肉ラーロウ(干し肉)の塊をパントリーから取り出す。
「エーリン、これを持って行って欲しい」

エーリン「腊肉ラーロウ!」

シゥイン「日持ちするから。少しずつ食べて」

エーリン「ありがとう、パパさん。だけど、ロマは食材を森で調達できるから大丈夫。気持ちだけ受け取るわ」

シゥイン「いや、エーリン、念のために持って行ってくれないか。僕のために」

ヤンシャ、ルイ、二人のやり取りを見て苦笑する。
ヤンシャ「エーリンさん、もらってあげて。こうなったらパパはてこでも動かないわ」

エーリン「わかったわ。パパさんは心配性ね」
腊肉ラーロウをシゥインから受け取る。

ヤンシャ「最初の目的地はどこ? 送るわよ」

エーリン「ヘルクラネウム市なの」

ヤンシャ「バラトール国内から出なくていいの?」

エーリン「ええ。ヘルクラネウム市なら農作物の収穫の手伝いをしているロマが居ると思うの。そのロマたちと一緒に移動するから」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...