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【先行公開版】第一章 壁 - Wall -
アヴェス - Aves - 1 挿絵
しおりを挟む◯エンパイア国・アテナイ市・世界連帯構想本部・受付前(5月)
アルテラシア大陸と、その南に位置するイフリ大陸に挟まれたノストルム海。そのノストルム海を擁した大国、エンパイア国。
その学術の中心都市、アテナイ市にある世界連帯構想本部の大きなビル。
加盟国代表団が年に一度集う総会ホールと、理事会や各種委員会の会議室、世連職員が普段の業務を行う事務局オフィスなどがある。
アヴェスを出迎えた壮年の事務次長、手を差し出す。
「世界連帯構想事務次長ニコス・パパンドレウだ。世連へようこそ」
アヴェス、緊張しながら握手をする。
「リュケイオン大学からインターンに来ました、アヴェスと申します。よろしくお願いいたします」
事務次長、アヴェスの翡翠色の瞳を見て微笑む。
「君の瞳はリートゥス名誉教授にそっくりだね。立派な青年に成長したものだ。私は教授の葬儀で7歳の君を見ているんだよ。君は知らないだろうけどね」
アヴェス「父のお知り合いだったのですか?」
事務次長「ああ。私は教授の教え子でね。教授に感化されて創設間もない世連に入り、行動を共にしていたんだ。メシーカ国の加盟手続きにも立ち合ったよ」
アヴェス「え、では…父の最期にも?」
事務次長目を伏せる。
「…そうだよ。側に居ながら教授の死を防げなかった事を本当に残念に思っている。君に謝らなければいけない」
アヴェス「当時の様子はガネーシャさんに聞きましたから…」
事務次長「そうだったのか。教授が亡くなった後、残された仲間と世連を組織化して、職員を増やしながら今の姿にしたんだ。けれど、これで完成だとは思っていない。組織も世連憲章も、時代に合わせて少しずつ変えていくことが大事だと思っているよ。そのためには若い人の視点が必要だ。君が将来仲間に加わってくれたら、とても嬉しく思うよ」
◯世界連帯構想本部・事務総長室前の廊下
事務次長「事務総長は初代常任理事国から選出されている。現在は、アッバース国の特命全権大使が務められているよ」
事務次長、事務総長室の扉をノックする。
事務総長「入りたまえ」
◯世界連帯構想本部・事務総長室
重厚なデスクで書類に目を通していた事務総長が顔を上げる。
「事務次長か」
事務次長「事務総長、本日から世連でインターンをする学生をご紹介します。リュケイオン大学のアヴェス君です。アヴェス君は、世連の創設者、故・リートゥス名誉教授のご子息です」
ターバンを被り、ゆったりしたカフタンを着た事務総長、椅子から立ち上がり手を差し出す。
「ようこそ、世界連帯構想へ。事務総長のターハ・マンスールだ。創設者のご子息に会えて光栄だよ」
アヴェス、握手をする。
「こちらこそ、お会いできて大変光栄です。インターンの間、父の名に恥じないようしっかり学ばせていただきます」
◯世界連帯構想本部・事務局オフィス
広い事務局オフィス。部門ごとにデスクが置かれ、職員たちが忙しく働いている。
オフィスの前方中央に立った事務次長、手を叩く。
「皆さん、注目して欲しい」
職員たちの視線が事務次長とアヴェスに集まる。
事務次長「リュケイオン大学のインターン生、アヴェス君です。大学の卒業前研修の職場に世連を選んでくれました。アヴェス君は世連の創設者、故・リートゥス名誉教授のご子息でもあります」
驚いた職員たち、囁き合う。
事務次長「アヴェス君には全ての部署を順番に回ってもらい、世連の業務を一つ一つ体験してもらう予定です」
アヴェス、挨拶をする。
「只今ご紹介にあずかりました、リュケイオン大学教養学部6年生のアヴェスです。本日から1か月の間お世話になります。私が7歳の時に父が他界したため、父から世連の話を聞く機会はありませんでした。世連が掲げてきた使命や生前の父が語っていた言葉を、皆さまから教えていただきたいと思っています。期間中、精一杯尽力いたしますので、ご指導のほどよろしくお願いいたします」
職員たち、拍手をする。ダイアナも上司と共に拍手。
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