d+d【先行公開版】

Hilde

文字の大きさ
18 / 75
【先行公開版】第一章 壁 - Wall -

小学校 - Primary School - 1

◯ベイト・ラヒア市・路上

道の両側の建物が崩れている。
埃っぽい空気の中を、ライラとエーリン、小学校に向かう。
がれきを避けたり、がれきの上を歩いたりするため、舗装された道を歩くより、はるかに時間がかかる。

ライラ「孤児たちは、昼間は授業を受けて、夜は校舎で私たち教師と過ごします」

エーリン「検問所で、今日から大きな作戦が行われると聞いたけど、大丈夫なの?」

ライラ「以前からこの地域はシオン国の砲撃と攻撃を受けていますが、学校が被害を受けたことはありません。学校には子供しか居ませんから、攻撃対象にならないのだと思います」

空から白いものがヒラヒラと、いくつも舞い落ちてくる。
拾い上げてみると、ゾットが持っていたものと同じビラ。

ライラ、ビラを読み上げる。
「『この地域にいるすべての人に告ぐ。ここは危険な戦闘地域で、安全ではない。直ちに南へ避難を』。
シオン国による退避勧告です。この地域を攻撃するから南へ行け、と。
退避勧告に従って北から逃げてきた家族が、南へまた移動させられています。
シオン国は、カナン地区の人々を南へ南へと追いやっているのです」


◯ベイト・ラヒア市・ショッピング街

広い大通りに出る。
両側の建物は全て破壊されているが、がれきが道の端に退けられているため歩きやすい。

ライラ「ここは、ショッピング街だったんですよ。
大通りの両側に、食料品店はもちろん、衣料品店から家具店、宝石店まで。必要なものが全て揃う場所でした。
人々は買い物を楽しみ、恋人たちはレストランやカフェのテラス席で語らい、子供連れの家族の笑顔と笑い声があふれていました。
そんな光景が、当たり前の日常として、ここにあったんですよ」
ライラ、楽しかった思い出を噛みしめるように話す。


◯ベイト・ラヒア市・アル・シマー小学校

2階建ての大きな小学校に到着する。
広い校庭があり、教室で子供達が元気に授業を受けている。

ライラ、エーリンと廊下を歩きながら説明する。
「この学校では、地域の子どもや孤児になった子どもが総勢150人ほど学んでいます。私の他に3人の教師が居て、学年別の授業をしています」

エーリン、教室を覗いて、
「みんな元気ね。私の娘も去年小学校を卒業したのよ。高学年の授業も見てみたいわ」

ライラ「今ご覧になっているのが高学年です。カナンの小学校は4年生までです。10歳までの子供たちしか居ないのです」


 ✕ ✕ ✕


別の教室では、生徒に交じって2、3歳の子供たちが座っている。

ライラ「あの幼児たちは孤児です。日中は生徒たちと同じ教室で過ごし、夜は学校で私たち教師と一緒に過ごします。
エーリンさんには、授業を受けない幼児や孤児たちのお世話をお願いしたいのですが、よろしいでしょうか」

エーリン「いいわよ。夜は私もここで過ごせるのかしら?」

ライラ「ええ。お願いします」

エーリン「よかった。よろしくね」

突如、

ドオオオーン

轟音とともに校舎が震える。

エーリン、身を縮めて、
「な、なにっ!?」

ライラ「シオン国の砲弾が近くに落ちたのです」

エーリン、青ざめる。

ライラ「砲撃の後にはシオン軍が来ますから、外に出ないでください。大規模な作戦が予定されているなら、今日は外出しないほうがいいですね」

エーリン、ドクドクしている胸を押さえる。
「こ、こういう事はよくあるの?」

ライラ、淡々と「ええ。日常茶飯事です。でも、学校は安全ですから」
感想 0

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした

ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?  ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

真実の愛の裏側

藍田ひびき
恋愛
アレックス・ロートン侯爵令息の第一夫人シェリルが療養のため領地へ居を移した。それは療養とは名ばかりの放逐。 男爵家出身でありながら侯爵令息に見初められ、「真実の愛」と持て囃された彼女の身に何があったのか。その裏に隠された事情とは――? ※ 他サイトにも投稿しています。

悪役令嬢は激怒した

松本雀
恋愛
悪役令嬢は激怒した。 必ず、かの厚顔無恥な簒奪者を排除せねばならぬと決意した。 ローザリンデ・フォン・シュヴァルツェンベルクには、政治のことはわからぬ。流行のドレスにも疎い。けれど悪には人一倍敏感であった。なにせ、自分が悪役令嬢だったからである。 ◇ 悪役令嬢ローザリンデは、王太子に断罪され辺境に追放された。 だが薬草園を耕す日々は存外悪くなく、「悪役令嬢時代より充実してるわ」と満足していた——はずだった。 ある日、社交界に新たな悪役令嬢が君臨し、自分が「先代」呼ばわりされていると知り大激怒。悪役令嬢の座を賭けて王都に殴り込む。 完璧な縦ロール、完璧な高笑い、完璧な紅茶のかけ方。何もかもが洗練された現役悪役令嬢クラリッサを相手に、高笑い対決、ドレスの威圧感対決、嫌味対決と、誰も得をしない真剣勝負が幕を開ける。 力押しの元悪役令嬢と技巧派の現役悪役令嬢。戦いの果てに二人が見つけるものとは……?

王の影姫は真実を言えない

柴田はつみ
恋愛
社交界で“国王の妾”と陰口を叩かれる謎の公爵夫人リュミエール。彼女は王命により、絶世の美貌を誇る英雄アラン公爵の妻となったが、その結婚は「公爵が哀れ」「妻は汚名の女」と同情と嘲笑の的だった。 けれど真実は――リュミエールは国王シオンの“妾”ではなく、異母妹。王家の血筋を巡る闇と政争から守るため、彼女は真実を口にできない。夫アランにさえ、打ち明ければ彼を巻き込んでしまうから。 一方アランもまた、王命と王宮の思惑の中で彼女を守るため、あえて距離を取り冷たく振る舞う。

結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です

柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。 そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。 真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。 けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。 「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」 彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。 アンリは実は、亡き国王の婚外子。 皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。