d+d【先行公開版】

Hilde

文字の大きさ
21 / 66
【先行公開版】第一章 壁 - Wall -

小学校 - Primary School - 4

しおりを挟む
◯アル・シマー小学校・2階・教室(夜)

エーリン、右腕にラシャー、左腕に3歳のリリアンを腕枕して横になっている。
(明日の朝、肩凝ってるかも…)

エーリン、隣にいるライラに話しかける。
「子供たちを連れて南へ行かないの?」

ライラ「もちろん、子供たちを安全な場所に連れて行きたいです。
でも、シオン国の攻撃が続く中で、教師4人だけで大勢の子供を引率するのは難しいと思います。学校ここに居れば安全ですし。
それにマフムード首長が給食を用意してくれるので、子供たちは飢えないで済んでいます。
今、市場では食料がほぼ底をついています。食料を買いたくても小麦粉1kgが10,000ディルハムもします。3年前は1日300ディルハムで充分暮らしていたのに。
今は、小麦の代わりに家畜のエサの大麦でしのいでいるのですよ。大麦も30倍以上も値上がりしていますけど」

1年生の娘ラマと横になっていたテクラが、小さいがはっきりとした声を上げる。
「今居る場所をシオン国に奪われたくなければ、南に移動しないことです。一度シオン国に奪われた土地は、取り戻せませんから」

エーリン「どういうこと?」

テクラ「私とラマは避難民です。ここより北にある大きな都市に住んでいましたが、3年前にシオン軍に追放されました。
私たちだけでなく、500以上の村や都市から、住人が追放されました。
追放には虐殺が伴い、住人の半数以上が殺された村もあります。

シオン軍に襲撃された村は破壊され、更地にされ、家を再建できないように木を植えられました。
シオン教徒は、占領した土地に壁を立てて、シオン国の建国を宣言しました。
カナン地区の中央にシオン国ができたことにより、カナン地区は西の地域と東の地域に分断されました。
カナン人の移動は制限され、村に戻ろうとした住人はシオン軍に殺されました。

シオン軍の襲撃は突然だったので、私たちは少しの荷物を持って戸締まりをして出るのが精一杯でした。私たちが残した家財はシオン国に没収されて、生活用品はシオン教徒に分配され、貴金属はシオン教徒の町の建設費用になりました。

カナンの土地は肥沃なため、歴代の支配者がカナンを巡り争いが絶えませんでした。その中でも、私たちは先祖代々この地で暮らし、変わらない日常を送っていました。支配者が変わっても、税を納めれば暮らしは続けられましたから。
3年前に追放された時も、戦火が収まれば家に戻れると多くの住人が信じていました。
ですが、シオン教徒の狙いは税ではなく、カナンの土地そのものだったのです」

テクラ、静かだが、断固たる口調で続ける。
「私たちが家や土地から離れれば、全てシオン国に奪われてしまいます。今住んでいる場所を離れないこと。これがシオン国に抵抗する唯一の方法です」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...