d+d【先行公開版】

Hilde

文字の大きさ
25 / 75
【先行公開版】第一章 壁 - Wall -

ルイ - Rui - 2

◯ベイト・ラヒア市・アル・シマー小学校・校庭

校庭の入口に立つ見張りが手を上げる。

ゾット「まずい、シオン軍が来るぞ」

エーリン「えっ」

ゾット「女と子供は、このシェルターに入れるだけ入れ! 男たちは入口を固めろ!」
周囲の人々の誘導を始める。

ルイ「義姉ねえさん、あなたは俺と一緒に世連本部へ。そこで状況を説明してください」

エーリン「え、でも」

ゾット、周囲を警戒しながら、
「行け! エーリン」

エーリン「でも、ゾット」

ゾット、エーリンをじっと見つめる。
「早く行け。助けを頼んだぞ」

エーリン「…うん。わかった」

ゾット、ルイに「おい、魔道士。空の壁も残していけ」

ルイ「あれは…無理です。魔道士協会ギルドが関与したと知られたくない。…このシェルターは残しますから」

ゾット、ちっ舌打ちし、
「早く戻れよ。…エーリンを頼んだ」

ルイ「はい」

ルイ、エーリンの肩を抱え、
「俺につかまってください」
上空へ 浮遊フローサドする。

ヤンシャより荒っぽい上昇に、
「きゃあーっ」
エーリン、ルイにしがみつく。

ゾット、二人の様子を見て舌打ちしながら、
「…頼んだぞ」


◯カナン地区・上空

シオン国とカナン地区の間に広がる更地の緩衝地帯を、一個中隊が隊列を組んでカナン地区へ進んでいるのが見える。

ルイ「あの軍隊が住民を攻撃するのですか?」

エーリン「そうよ」

統率の取れた動きで、検問所からカナン地区に侵入する軍隊。

ルイ、彼らに気付かれないように、さらに高く上昇する。
しばらくして、カナン地区でフォースがいくつか消滅したことを感じる。
青ざめたルイ、頭を振ってバラトール共和国に向かい飛行する。

ルイ「義姉ねえさん、とりあえず父さんの家に送ります。あなたも俺も埃まみれなので世連には連れて行けない」

エーリン「でも!」

ルイ「俺も一度、魔道士協会ギルドに戻って役員に報告したい。世連本部に行くのは明日にしましょう」

エーリン、しぶしぶ「…わかったわ」


◯バラトール共和国・メッシュ市・シゥイン宅・玄関前

ドアを開けたシゥイン、真っ白で埃まみれの二人に驚く。
「エーリン!? ルイ!? 二人ともどうしたんだい!?」

ルイ「父さん、義姉ねえさんに、お湯の用意を」

シゥイン「わかった」
すぐに2階の居住階に向かう

出迎えたルルディ「ママ、おかえりなさい」

緊張の糸が切れたエーリン「ルルディ」
ほっとして、ルルディの頬にキスをする。

ルイ「義姉ねえさん、明日の朝に迎えに来ます」

エーリン「わかったわ、ルイ。今日はありがとう」

ルイ、ケルト市の自宅に高速移動する


◯バラトール共和国・ケルト市・ルイ宅・玄関前

ドアを開けたルイの妻シルヴィア、真っ白で埃まみれのルイに驚く。
「どうしたの!? 協会ギルドで何かあったの?」
ルイの頬に手をやる。
「顔も白いけど…顔色が悪いわ。大丈夫?」

緊張の糸が切れたルイ、倒れ込むようにシルヴィアに寄りかかる。
「シルヴィー…、俺は…地獄を見てきた」


◯ルイ宅・ダイニング

体を洗い終えたルイ、ダイニングテーブルにシルヴィアと向かい合って座る。

ルイ、テーブルに肘をつき、額に手を当てる。
「見渡す限り、灰色の世界だった。
街が崩れていて、人々は煙と埃で真っ白で…痩せていた。そこに空から砲弾が飛んできて、地上では軍隊が攻撃してくる。あちこちに血だまりがあって、砲撃で破壊された建物には、血と…人間の体の一部が引っかかっているんだ。
攻撃されている人たちは皆、民間人に見えた。子供が大勢居て、その子たちが砲撃にさらされないように障壁バンドでシェルターを作ってきた。それくらいしかできなかった…」

「…ひどい」
シルヴィア、口元を両手で覆う。
「…子供たちもそんな過酷な状況の中で…」

シルヴィア、両手を握り合わせる。
「ねぇ、子供たちだけでも救い出して保護することはできないかしら?」

ルイ、顔を上げる。

シルヴィア「うちの保育園で預かれないか園長に相談してみるわ。他の施設にも声を掛けてもらう。魔道士協会ギルドでも引き受けられないかしら? 協会ギルドの幼稚舎に余裕は無い?」

ルイ「…そうだな。役員たちに相談してみる。世連本部にも相談したい。シルヴィー、一緒に来てくれないか?」
感想 0

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢は結婚式当日に死んだ

白雲八鈴
恋愛
 今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。 「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」  突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。 婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。  そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。  その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……  生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。  婚約者とその番という女性に 『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』 そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。 *タグ注意 *不快であれば閉じてください。

「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした

ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?  ※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。

真実の愛の裏側

藍田ひびき
恋愛
アレックス・ロートン侯爵令息の第一夫人シェリルが療養のため領地へ居を移した。それは療養とは名ばかりの放逐。 男爵家出身でありながら侯爵令息に見初められ、「真実の愛」と持て囃された彼女の身に何があったのか。その裏に隠された事情とは――? ※ 他サイトにも投稿しています。

悪役令嬢は激怒した

松本雀
恋愛
悪役令嬢は激怒した。 必ず、かの厚顔無恥な簒奪者を排除せねばならぬと決意した。 ローザリンデ・フォン・シュヴァルツェンベルクには、政治のことはわからぬ。流行のドレスにも疎い。けれど悪には人一倍敏感であった。なにせ、自分が悪役令嬢だったからである。 ◇ 悪役令嬢ローザリンデは、王太子に断罪され辺境に追放された。 だが薬草園を耕す日々は存外悪くなく、「悪役令嬢時代より充実してるわ」と満足していた——はずだった。 ある日、社交界に新たな悪役令嬢が君臨し、自分が「先代」呼ばわりされていると知り大激怒。悪役令嬢の座を賭けて王都に殴り込む。 完璧な縦ロール、完璧な高笑い、完璧な紅茶のかけ方。何もかもが洗練された現役悪役令嬢クラリッサを相手に、高笑い対決、ドレスの威圧感対決、嫌味対決と、誰も得をしない真剣勝負が幕を開ける。 力押しの元悪役令嬢と技巧派の現役悪役令嬢。戦いの果てに二人が見つけるものとは……?

結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です

柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。 そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。 真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。 けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。 「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」 彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。 アンリは実は、亡き国王の婚外子。 皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。