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【先行公開版】第一章 壁 - Wall -
ダイアナ - Diana - 2
◯エンパイア国・アテナイ市・世界連帯構想本部・応接室
ルーカスは仕事に戻ったが、アヴェスとダイアナは許可を得て話し合いを続ける。
ルイ「世連に加盟させる、か…」
アヴェス「俺、世連の国家承認と加盟までの流れを知ってるから、世連の職員に協力してもらいながら手続きできるよ。
世連に加盟申請書を提出して、8カ国が参加する理事会の審議にかけて、理事会で承認されれば、全加盟国が参加する総会で協議される。総会で承認されたら、加盟が認められる。
ただ、総会の承認は全会一致が原則だからハードルはかなり高い。
国家として承認されるためには、
1.恒久的人口、
2.明確に定義された領域、
3.機能する政府が存在し、
4.国際関係を構築する能力がある事を証明する必要があるけど、
カナン地区はこの4つの条件は揃っているかな?」
ルイ「恒久的人口は、ある。他は…わからない」
エーリン「ゾットの雇い主のマフムード首長に聞けばわかるはずよ」
ダイアナ「お父さん、カナン地区はシオン国に侵略されているでしょう? 領域って、どのように定義するの?」
ルイ「メシーカ国が世連に加盟したときは、コンキスタドールと交戦中だったから、暫定的にメシーカ国軍とコンキスタドールの間に国境を引いた。メシーカ国が世連に加盟して10年経つが、コンキスタドールが占領した土地は未だにアルマダ国の植民地になっている。メシーカ国も10年のうちに少しずつ領土を取り戻しているようだが、一度決まった国境を広げるのは簡単ではないようだ」
エーリン「カナン地区はシオン国に500以上の村や都市を奪われたと聞いたわ。取り返す事はできないの?」
ルイ「…あれほど軍事力に差があると、難しいかもしれません」
アヴェス「世連に加盟申請するなら、国境をどうするかカナン地区の政府に決めてもらわないといけないな」
ルイ「加盟申請に関して、アヴェスからカナン地区の指導者に説明してもらえないか? 俺は、加盟を勧める話はできるが、細かい説明はできないから」
アヴェス「え…」
ダイアナ「私も、アヴェスが説明するのがいいと思う」
ルイ「俺は世連の回答を伝えにカナン地区に行くが、アヴェスも一緒に行けるか?」
アヴェス「…わかった。行く」
シルヴィア「ねえ、カナン地区が世連に加盟するまで時間がかかるのでしょう? 今すぐに子供たちを救い出す方法はないかしら? 」
エーリン「そうよ、どうしたらいいかしら?
アヴェス、大学の先生たちの知恵でなんとかならない? 法律や政治を教えている偉い先生たちなのでしょう?」
アヴェス「教授や友人に相談してみるよ」
エーリン「お願いね」
ルイ「では、午後に出発しよう。食料と医療物資も持って行きたいな。持ち出しになるが、シルヴィー、いいかな?」
シルヴィア、微笑んで「ええ」
ルイ「少しの量で栄養になる食料って何があるだろう? 姉さんに相談してくる」
ルイ、ヤンシャに会うために、フランク国サンクトルシア大学病院へ向けて高速移動していく。
シルヴィア「エーリンさん、カナン地区から子供たちを移動させるとしたら、どのような方法が良いと思いますか?」
エーリン「カナン地区は高い壁に囲まれてシオン兵に監視されているの。ゾットたちは地下にトンネルを掘って移動しているそうよ。以前、カナン地区から壁の外に脱出するトンネルも掘ったけど、シオン兵に見つかって出口を封鎖されてしまったのですって。でも、そこを魔道士協会で守ってもらえたら、子供たちを安全に外に出せるかもしれないわ」
ルイ、高速移動で戻る。
「姉さんに相談したら、病院の堅パンをたくさん貰えた。あとは水を運べば良いそうだ。ジェームズ導師が協力してくれることになって、水を汲みに行っている」
エーリン「ありがとう! 子供たちが喜ぶわ!」
アヴェス「…俺一人では心許ないから、大学の友人を連れて来てもいいかな?」
ルイ「構わないけど…、紛争地域に行くんだ。危険を伴うという事を忘れないで」
アヴェス「わかってるよ」
◯アテナイ市・リュケイオン大学・法学研究科の教室(休憩時間)
世界連帯構想本部ビルに隣接するリュケイオン大学。
院生が学ぶ法学研究科の教室で、アッバース国皇太子イスマイールが読書をしている。
本から目を上げたイスマイール「…なんだ? ここは法学科の教室だぞ。学部生は入れん」
苦虫を噛み潰したような顔で、イスマイールの前に立っているアヴェス。
「…本当は、フレイに声を掛けるつもりだった。けど、同級生は皆、卒業前研修で出払ってたから」
イスマイール「…だから、なんだ?」
アヴェス「カナン地区を知っているか? アッバースの隣だろう」
イスマイール「ああ。複数の宗教の聖地が隣接している地域だ。信徒も混在して住んでいる。以前は我が国の領土だったが、世連に加盟する際に父が解放した。世界中の信徒が自由に巡礼できるようにとの配慮でな。西方は弟の担当なので、現在どうなってるか知らんが」
アヴェス「カナン地区でジェノサイドが起きている」
イスマイール、目を見開く。
「まさか、アッバースが?」
アヴェス「いや。ある宗教集団だ」
イスマイール、本を閉じる。
「詳しく話せ」
アヴェス「…実際に、見に行かないか?」
イスマイール「は?」
ルーカスは仕事に戻ったが、アヴェスとダイアナは許可を得て話し合いを続ける。
ルイ「世連に加盟させる、か…」
アヴェス「俺、世連の国家承認と加盟までの流れを知ってるから、世連の職員に協力してもらいながら手続きできるよ。
世連に加盟申請書を提出して、8カ国が参加する理事会の審議にかけて、理事会で承認されれば、全加盟国が参加する総会で協議される。総会で承認されたら、加盟が認められる。
ただ、総会の承認は全会一致が原則だからハードルはかなり高い。
国家として承認されるためには、
1.恒久的人口、
2.明確に定義された領域、
3.機能する政府が存在し、
4.国際関係を構築する能力がある事を証明する必要があるけど、
カナン地区はこの4つの条件は揃っているかな?」
ルイ「恒久的人口は、ある。他は…わからない」
エーリン「ゾットの雇い主のマフムード首長に聞けばわかるはずよ」
ダイアナ「お父さん、カナン地区はシオン国に侵略されているでしょう? 領域って、どのように定義するの?」
ルイ「メシーカ国が世連に加盟したときは、コンキスタドールと交戦中だったから、暫定的にメシーカ国軍とコンキスタドールの間に国境を引いた。メシーカ国が世連に加盟して10年経つが、コンキスタドールが占領した土地は未だにアルマダ国の植民地になっている。メシーカ国も10年のうちに少しずつ領土を取り戻しているようだが、一度決まった国境を広げるのは簡単ではないようだ」
エーリン「カナン地区はシオン国に500以上の村や都市を奪われたと聞いたわ。取り返す事はできないの?」
ルイ「…あれほど軍事力に差があると、難しいかもしれません」
アヴェス「世連に加盟申請するなら、国境をどうするかカナン地区の政府に決めてもらわないといけないな」
ルイ「加盟申請に関して、アヴェスからカナン地区の指導者に説明してもらえないか? 俺は、加盟を勧める話はできるが、細かい説明はできないから」
アヴェス「え…」
ダイアナ「私も、アヴェスが説明するのがいいと思う」
ルイ「俺は世連の回答を伝えにカナン地区に行くが、アヴェスも一緒に行けるか?」
アヴェス「…わかった。行く」
シルヴィア「ねえ、カナン地区が世連に加盟するまで時間がかかるのでしょう? 今すぐに子供たちを救い出す方法はないかしら? 」
エーリン「そうよ、どうしたらいいかしら?
アヴェス、大学の先生たちの知恵でなんとかならない? 法律や政治を教えている偉い先生たちなのでしょう?」
アヴェス「教授や友人に相談してみるよ」
エーリン「お願いね」
ルイ「では、午後に出発しよう。食料と医療物資も持って行きたいな。持ち出しになるが、シルヴィー、いいかな?」
シルヴィア、微笑んで「ええ」
ルイ「少しの量で栄養になる食料って何があるだろう? 姉さんに相談してくる」
ルイ、ヤンシャに会うために、フランク国サンクトルシア大学病院へ向けて高速移動していく。
シルヴィア「エーリンさん、カナン地区から子供たちを移動させるとしたら、どのような方法が良いと思いますか?」
エーリン「カナン地区は高い壁に囲まれてシオン兵に監視されているの。ゾットたちは地下にトンネルを掘って移動しているそうよ。以前、カナン地区から壁の外に脱出するトンネルも掘ったけど、シオン兵に見つかって出口を封鎖されてしまったのですって。でも、そこを魔道士協会で守ってもらえたら、子供たちを安全に外に出せるかもしれないわ」
ルイ、高速移動で戻る。
「姉さんに相談したら、病院の堅パンをたくさん貰えた。あとは水を運べば良いそうだ。ジェームズ導師が協力してくれることになって、水を汲みに行っている」
エーリン「ありがとう! 子供たちが喜ぶわ!」
アヴェス「…俺一人では心許ないから、大学の友人を連れて来てもいいかな?」
ルイ「構わないけど…、紛争地域に行くんだ。危険を伴うという事を忘れないで」
アヴェス「わかってるよ」
◯アテナイ市・リュケイオン大学・法学研究科の教室(休憩時間)
世界連帯構想本部ビルに隣接するリュケイオン大学。
院生が学ぶ法学研究科の教室で、アッバース国皇太子イスマイールが読書をしている。
本から目を上げたイスマイール「…なんだ? ここは法学科の教室だぞ。学部生は入れん」
苦虫を噛み潰したような顔で、イスマイールの前に立っているアヴェス。
「…本当は、フレイに声を掛けるつもりだった。けど、同級生は皆、卒業前研修で出払ってたから」
イスマイール「…だから、なんだ?」
アヴェス「カナン地区を知っているか? アッバースの隣だろう」
イスマイール「ああ。複数の宗教の聖地が隣接している地域だ。信徒も混在して住んでいる。以前は我が国の領土だったが、世連に加盟する際に父が解放した。世界中の信徒が自由に巡礼できるようにとの配慮でな。西方は弟の担当なので、現在どうなってるか知らんが」
アヴェス「カナン地区でジェノサイドが起きている」
イスマイール、目を見開く。
「まさか、アッバースが?」
アヴェス「いや。ある宗教集団だ」
イスマイール、本を閉じる。
「詳しく話せ」
アヴェス「…実際に、見に行かないか?」
イスマイール「は?」
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