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【先行公開版】第一章 壁 - Wall -
カナン地区 - Canaan Strip - 2
◯カナン地区・北ガザ県・ベイト・ラヒア市・ある民家
民家の中に武装した2人の男と、篭を持った男たちがいる。
ゾット、武装した男にフスハー語で「أريدك أن تحضر الشيخ محمود ومحمد.〈マフムード首長とムハンマド副首長を呼んで欲しい〉」
民家の床板の一部が外されており、丸い穴が見える。
武装した男、穴に向かって呼び掛ける。穴から返事をする声がする。
再び穴から声が聞こえ、篭を持った男たちが反応する。穴の中から土を盛った篭が突き出て、一人の男が受け取る。もう一人が空の篭を穴の中に入れる。
土の入った篭を持った男が外に出て行く。
ゾット、小声で「シオン兵に見つからないように地下トンネルを掘っている」
穴の中から土で汚れた男の手が伸び、続いて白髪交じりの頭が見える。
「ما بكَ، زوت؟〈なんだ? ゾット〉」
マフムード首長が窮屈そうに穴から這い出す。
ゾット「يا شيخ محمود، إنهم من معارف إيرين.〈マフムード首長、彼らはエーリンの知人だ〉
قدّموا لنا الماء والطعام والإمدادات الطبية.〈水と食料と医療物資を差し入れてくれた〉
يُقال إنهم سيتعاونون في حلّ مشكلة منطقة كنعان.〈カナン地区に協力してくれる〉」
マフムード首長、笑顔で両手を上げる。
「جزاك الله خيرا〈ありがたい!〉」
ゾット、一行に「彼は、北ガザ県の首長をしているマフムードだ」
床下の穴からもう一人、男が出てくる。こちらの男は痩せ型で後頭部が後退している。
ゾット「彼はムハンマド。副首長だ」
ムハンマド副首長、胸に手を当て会釈する。
ゾット「エーリン、通訳を頼む」
エーリン「わかったわ」
ルイ、胸に手を当て、マフムード首長とムハンマド副首長に挨拶をする。
「はじめまして。私はバラトール共和国の魔道士協会の導師ルイと申します。
シオン国の侵攻からカナン地区をお助けしたいと考え、世界連帯構想の職員と共に参りました。
シオン国の侵攻を阻止するには、カナン地区が世連に加盟するのが最善の方法だと考えます」
マフムード首長「世連に加盟すると、どうなるのだ?」
アヴェス、こほんと咳払いする。
「世界連帯構想職員、アヴェスと申します。
私から説明します。
世連は加盟国に対し、世界の平和と安全を守り、国家間の友好関係を育み、国際問題の解決と人権尊重を推進することを保障しています。
具体的には、定例会合で加盟国の諸問題を解決し、加盟国が他国から攻撃を受けた場合は、魔道士協会の魔道士を派遣して防衛に協力します」
マフムード首長「それは助かる!」
ムハンマド副首長「加盟国は対価として何を求められるのですか?」
アヴェス「加盟国には毎年、分担金を支払っていただきます。金額はその国のGDPの約3%です」
マフムード首長「GDPとは?」
アヴェス「一定期間内に国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値の総額のことです」
ムハンマド副首長、独りごちる。
「この状況で生産活動など…」
アヴェス「分担金は加盟国の支払い能力に応じて決まります。GDPがゼロの場合は分担金もゼロになります。また、国情も加味されるので、カナン地区の場合は免除の扱いになる可能性が高いと思われます」
ムハンマド副首長「それならば」
アヴェス「では、加盟申請の手続きをする上で、いくつか確認事項がありますので…」
マフムード首長、慌ててアヴェスを遮る。
「待ってくれ。俺の一存では決められん。他の首長たちの同意を取らんと」
アヴェス「他にも首長が居るのですか?」
マフムード首長「首長は俺を入れて16人居る。この地域に5人、シオン国を挟んで、東側に11人。シオン教徒の侵攻で土地を失った首長も含めれば22人だ」
アヴェス「その22人の首長の中に代表者は居ますか? 国の代表権を持つ国家元首のような方は」
マフムード首長、首を振る。
「以前は首長会合で議長を選出していた。だが、今は会合も開けない。シオン国によってカナン地区が西と東に分断されてからは、東側の首長たちとは会えていない」
アヴェス「もし首長会合を開くことができたら、議長を選出できますか?」
マフムード首長「…今は自分の地域を守るのに手一杯だろう。手を挙げる者が居るかどうか…」
アヴェス「国家として承認され世連に加盟するためには、機能している政府と国の代表者が必要です。次の安息日でいいので首長会合を開いて議長を決めていただきたいのですが」
マフムード首長「…相談はしてみる。会合を開く時は、その…」
マフムード首長、ルイをチラッと見る。
「魔道士に協力してもらうことはできるか? このがれきの山では移動も大変だし、シオン国を越えて東側に行くのは命懸けだ」
ルイ「協力しましょう」
民家の中に武装した2人の男と、篭を持った男たちがいる。
ゾット、武装した男にフスハー語で「أريدك أن تحضر الشيخ محمود ومحمد.〈マフムード首長とムハンマド副首長を呼んで欲しい〉」
民家の床板の一部が外されており、丸い穴が見える。
武装した男、穴に向かって呼び掛ける。穴から返事をする声がする。
再び穴から声が聞こえ、篭を持った男たちが反応する。穴の中から土を盛った篭が突き出て、一人の男が受け取る。もう一人が空の篭を穴の中に入れる。
土の入った篭を持った男が外に出て行く。
ゾット、小声で「シオン兵に見つからないように地下トンネルを掘っている」
穴の中から土で汚れた男の手が伸び、続いて白髪交じりの頭が見える。
「ما بكَ، زوت؟〈なんだ? ゾット〉」
マフムード首長が窮屈そうに穴から這い出す。
ゾット「يا شيخ محمود، إنهم من معارف إيرين.〈マフムード首長、彼らはエーリンの知人だ〉
قدّموا لنا الماء والطعام والإمدادات الطبية.〈水と食料と医療物資を差し入れてくれた〉
يُقال إنهم سيتعاونون في حلّ مشكلة منطقة كنعان.〈カナン地区に協力してくれる〉」
マフムード首長、笑顔で両手を上げる。
「جزاك الله خيرا〈ありがたい!〉」
ゾット、一行に「彼は、北ガザ県の首長をしているマフムードだ」
床下の穴からもう一人、男が出てくる。こちらの男は痩せ型で後頭部が後退している。
ゾット「彼はムハンマド。副首長だ」
ムハンマド副首長、胸に手を当て会釈する。
ゾット「エーリン、通訳を頼む」
エーリン「わかったわ」
ルイ、胸に手を当て、マフムード首長とムハンマド副首長に挨拶をする。
「はじめまして。私はバラトール共和国の魔道士協会の導師ルイと申します。
シオン国の侵攻からカナン地区をお助けしたいと考え、世界連帯構想の職員と共に参りました。
シオン国の侵攻を阻止するには、カナン地区が世連に加盟するのが最善の方法だと考えます」
マフムード首長「世連に加盟すると、どうなるのだ?」
アヴェス、こほんと咳払いする。
「世界連帯構想職員、アヴェスと申します。
私から説明します。
世連は加盟国に対し、世界の平和と安全を守り、国家間の友好関係を育み、国際問題の解決と人権尊重を推進することを保障しています。
具体的には、定例会合で加盟国の諸問題を解決し、加盟国が他国から攻撃を受けた場合は、魔道士協会の魔道士を派遣して防衛に協力します」
マフムード首長「それは助かる!」
ムハンマド副首長「加盟国は対価として何を求められるのですか?」
アヴェス「加盟国には毎年、分担金を支払っていただきます。金額はその国のGDPの約3%です」
マフムード首長「GDPとは?」
アヴェス「一定期間内に国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値の総額のことです」
ムハンマド副首長、独りごちる。
「この状況で生産活動など…」
アヴェス「分担金は加盟国の支払い能力に応じて決まります。GDPがゼロの場合は分担金もゼロになります。また、国情も加味されるので、カナン地区の場合は免除の扱いになる可能性が高いと思われます」
ムハンマド副首長「それならば」
アヴェス「では、加盟申請の手続きをする上で、いくつか確認事項がありますので…」
マフムード首長、慌ててアヴェスを遮る。
「待ってくれ。俺の一存では決められん。他の首長たちの同意を取らんと」
アヴェス「他にも首長が居るのですか?」
マフムード首長「首長は俺を入れて16人居る。この地域に5人、シオン国を挟んで、東側に11人。シオン教徒の侵攻で土地を失った首長も含めれば22人だ」
アヴェス「その22人の首長の中に代表者は居ますか? 国の代表権を持つ国家元首のような方は」
マフムード首長、首を振る。
「以前は首長会合で議長を選出していた。だが、今は会合も開けない。シオン国によってカナン地区が西と東に分断されてからは、東側の首長たちとは会えていない」
アヴェス「もし首長会合を開くことができたら、議長を選出できますか?」
マフムード首長「…今は自分の地域を守るのに手一杯だろう。手を挙げる者が居るかどうか…」
アヴェス「国家として承認され世連に加盟するためには、機能している政府と国の代表者が必要です。次の安息日でいいので首長会合を開いて議長を決めていただきたいのですが」
マフムード首長「…相談はしてみる。会合を開く時は、その…」
マフムード首長、ルイをチラッと見る。
「魔道士に協力してもらうことはできるか? このがれきの山では移動も大変だし、シオン国を越えて東側に行くのは命懸けだ」
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●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
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