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【先行公開版】第一章 壁 - Wall -
カナン地区 - Canaan Strip - 3
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◯カナン地区・北ガザ県・ベイト・ラヒア市・ある民家
シルヴィア、マフムード首長に挨拶をする。
「バラトール共和国の保育園で保育士をしているシルヴィアと申します。
マフムード首長、カナン地区の子供たちを安全な場所へ避難させるお考えはありませんか?
例えば、第三国に協力を仰いで受け入れ先を確保した上で、地下トンネルを利用して壁の外に子供たちを脱出させることは可能だと思います。
紛争下で子供たちは命の危険と強いストレスに晒されています。極度の心的外傷を受けると、子供の認知的、社会的、身体的発達に悪影響を及ぼします。
子供たちの安全の確保と健全な発育のために、子供たちの避難を前向きに検討していただけないでしょうか」
マフムード首長「そりゃ…そうできたらどんなに良いか…」
ジェームズ「バラトール共和国の魔道士協会には、輸送部門と警護部門があります。魔道士協会は紛争には加担できませんが、カナン地区の外で民間人の輸送と警護をするご依頼でしたら対応できます」
ムハンマド副首長「それは…いくらかかるのですか?」
ジェームズ「輸送する人数と警護の内容にもよりますが、通常は1万人当たり3億ディルハムかかります」
ムハンマド副首長「と、とても払えない」
ジェームズ「人道上の配慮を訴え、世連を通してご依頼いただけたら、協会側でお値引きできるかもしれません」
イスマイール、フスハー語で口を挟む。
「今すぐ契約しろ」
マフムード首長「し、しかし、高額すぎるし、他の首長たちの了解を得ないと」
イスマイール「幼子の生命には代えられんだろう。金は後からどうにでもなる。首長会合とやらでさっさと決めろ。この惨状を放置するな」
マフムード首長、イスマイールの金糸をあしらった絹のターバンやカフタン、その態度に只者ならざるものを感じる。
「あなたは…?」
イスマイール「アッバース国皇太子、イスマイール・イブン・ハーリド」
マフムード首長、仰天する。
「な!!? なぜ、アッバース国の皇太子がここに?」
イスマイール「知らん。こいつに連れてこられた」
アヴェスの服を引っ張る。
イスマイール、マフムード首長に「しかし、このような状況に陥ったのは、指導者の失態だぞ」
ゾット、割って入る。
「言い過ぎだ。マフムード首長はよくやっている。シオン国の攻撃が手段を選ばず苛烈なだけだ。シオン国は最初からカナン人を根絶やしにするつもりでやっている」
イスマイールの従者、前に出る。
「皇太子殿下に何たる物言いか」
ゾット、鼻であしらう。
「ロマに王権は通用しない」
イスマイール、従者に「よい。この者の言う通りかもしれん」
マフムード首長に「弱者の保護は為政者の義務だ。早々に首長会合を開いて、子供の避難と世連の加盟を協議しろ」
✕ ✕ ✕
○ベイト・ラヒア市・中心部
一行、再び小学校に向かって歩く。
ゾット、アヴェスを見ながら、エーリンにロマニ語で囁く。
「あいつが、あいつの息子か」
エーリン、誇らしげに「ええ」
シルヴィア、マフムード首長に挨拶をする。
「バラトール共和国の保育園で保育士をしているシルヴィアと申します。
マフムード首長、カナン地区の子供たちを安全な場所へ避難させるお考えはありませんか?
例えば、第三国に協力を仰いで受け入れ先を確保した上で、地下トンネルを利用して壁の外に子供たちを脱出させることは可能だと思います。
紛争下で子供たちは命の危険と強いストレスに晒されています。極度の心的外傷を受けると、子供の認知的、社会的、身体的発達に悪影響を及ぼします。
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マフムード首長「そりゃ…そうできたらどんなに良いか…」
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ムハンマド副首長「それは…いくらかかるのですか?」
ジェームズ「輸送する人数と警護の内容にもよりますが、通常は1万人当たり3億ディルハムかかります」
ムハンマド副首長「と、とても払えない」
ジェームズ「人道上の配慮を訴え、世連を通してご依頼いただけたら、協会側でお値引きできるかもしれません」
イスマイール、フスハー語で口を挟む。
「今すぐ契約しろ」
マフムード首長「し、しかし、高額すぎるし、他の首長たちの了解を得ないと」
イスマイール「幼子の生命には代えられんだろう。金は後からどうにでもなる。首長会合とやらでさっさと決めろ。この惨状を放置するな」
マフムード首長、イスマイールの金糸をあしらった絹のターバンやカフタン、その態度に只者ならざるものを感じる。
「あなたは…?」
イスマイール「アッバース国皇太子、イスマイール・イブン・ハーリド」
マフムード首長、仰天する。
「な!!? なぜ、アッバース国の皇太子がここに?」
イスマイール「知らん。こいつに連れてこられた」
アヴェスの服を引っ張る。
イスマイール、マフムード首長に「しかし、このような状況に陥ったのは、指導者の失態だぞ」
ゾット、割って入る。
「言い過ぎだ。マフムード首長はよくやっている。シオン国の攻撃が手段を選ばず苛烈なだけだ。シオン国は最初からカナン人を根絶やしにするつもりでやっている」
イスマイールの従者、前に出る。
「皇太子殿下に何たる物言いか」
ゾット、鼻であしらう。
「ロマに王権は通用しない」
イスマイール、従者に「よい。この者の言う通りかもしれん」
マフムード首長に「弱者の保護は為政者の義務だ。早々に首長会合を開いて、子供の避難と世連の加盟を協議しろ」
✕ ✕ ✕
○ベイト・ラヒア市・中心部
一行、再び小学校に向かって歩く。
ゾット、アヴェスを見ながら、エーリンにロマニ語で囁く。
「あいつが、あいつの息子か」
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