62 / 75
【先行公開版】第二章 灯火 - Torch -
首長会合 - Majlis of Sheikhs - 4
◯カナン地区・東側の地域・草地・バスの中
首に鍵を下げた年老いた首長、カナン地区の地図を広げる。
首に鍵を下げた5人の首長が、その周りに集まる。
老首長「特別総会で加盟が否決される可能性も想定し、この計画を立てた。
まず決めたことは二つ。
現役の首長は、今回の出撃には参加しない。
そして、東側地域からは出撃しない。
我々が蜂起すれば、必ず報復攻撃があるだろう。
現役の首長には、自分の地域を守ってもらわねばならん。
東側から出撃しないのも、まだ砲撃を受けていない東側を、戦火に巻き込まぬためだ」
首長たち、うなずく。
老首長、地図の西側地域の上に指を置く。
「出撃は、西側地域から行う。
アッコ、ハイファ、ヤッファ、ナザレ、ベエルシェバ──それぞれの首長と志願者で編成した、5つの騎馬隊だ」
首に鍵を下げた5人の首長がうなずく。
老首長、指で西側地域の北部をなぞる。
「北ガザ県とガザ県は、すでにシオン軍にほぼ制圧されている。
軍事回廊にはシオン軍が常駐している」
そのまま指をノストルム海へ移す。
「ノストルム海もシオン軍に押さえられており、海上移動は困難」
老首長、指を南へ移動させ、最南端のラファフ県を指す。
「よって、ラファフの南の検問所を突破し、そこから出撃する」
老首長、顔をイスマイールに向ける。
「ここで問題が一つある。
南の検問所を越えた先はアッバース国。
アッバース国の国境警備隊に、我々が敵意を持たぬことを伝えてもらうことは可能か?」
イスマイール「お前たちが通過することに目をつぶるよう、手を回そう」
老首長「感謝する」
老首長、再び地図上に目を落とす。
南の検問所を起点に、シオン国へ向けて5方向に指を滑らせる。
「検問所を出た後、隣接する物資専門の検問所を経由しシオン国に侵入、5方向に分かれる。
南、南東、東、東北、北。
各部隊は、進めるだけ進め。
そして、障壁が建てられる時間まで、持ち堪えよ」
ベエルシェバ県首長「南は、俺の部隊が行こう」
老首長うなずき、カナン地区東側地域を指す。
「南東、東、東北に向かう部隊は、東側地域と繋がることを目標とする」
そのまま指をシオン国北部に向かって滑らせるが、途中で止める。
「日没までとなると、北限は…恐らくヤッファ」
ヤッファ県より北に位置する、アッコ県とハイファ県の首長を見る。
「…どうする。アッコ、ハイファの」
2人の首長、つらそうに目を伏せる。
アッコ県首長「…北は、ヤッファの首長が行くといい」
ハイファ県首長「…東北は、ナザレの首長だろう。
俺たちは、東と南東に向かう」
老首長「…すまん。こらえてくれ」
老首長、首に鍵を下げた5人の首長を見回す。
「時間も人員も足りん。
シオン軍との戦闘は、極力避けよ。
市街には入らず、国境を押し広げることに専念せよ」
老首長、カナン地区全体を囲むように、指で地図をなぞる。
「各々の点を繋げば線となり、線はすなわち面となる。
カナンの地を、再び取り戻すぞ」
5人の首長たち、力強くうなずく。
✕ ✕ ✕
イスマイール「南の検問所の突破には、新型銃が役に立つだろう」
イスマイールの脇に控えていたアッバース国軍の若い士官が、胸に右手を当てて首長たちの前に進み出る。
「カナンの諸首長に、心より敬意を表する。
私は、アッバース国ホラーサーン軍所属、大尉アリー・イブン・ファーティマーン。
この新型銃の操作と運用を指導する役目を仰せつかった」
アリー、左手に持っていた新型銃を、首長たちに見えるよう両手で掲げる。
「シオン国防軍の特殊部隊に配備されている銃と同じ型だ。
この新型銃は、装填方法が従来の前装式とは全く異なる」
アリー、手元のボルトを引いて薬室を開けて見せる。
腰の革袋から薬莢を取り出し、薬莢を薬室に入れてから、ボルトを押し戻す。
「以上で装填完了だ」
「おおっ!」
首長たちから、どよめきが上がる。
アリー、銃を肩に当てて構えてみせる。
「旧式の銃のように、装填のたびに立ち上がる必要がない。
体を伏せたまま、連続して射撃を行える。
発射速度も有効射程も、旧式とは比べものにならない」
首長たち、興奮と熱気に包まれる。
首長1「この銃があれば勝てる!」
首長2「シオン軍と互角…いや、それ以上だ!」
イスマイール「同型の銃が、外に1,300丁用意してある。
訓練期間は、今日を含めて2日しかない。1秒も無駄にせず、訓練を始めよ」
首長たち、一斉に立ち上がる。
イスマイール「決死隊といえど、生命を粗末にするな。生き延びてこそ、意味がある。
──お前たちの健闘を祈る」
首に鍵を下げた年老いた首長、カナン地区の地図を広げる。
首に鍵を下げた5人の首長が、その周りに集まる。
老首長「特別総会で加盟が否決される可能性も想定し、この計画を立てた。
まず決めたことは二つ。
現役の首長は、今回の出撃には参加しない。
そして、東側地域からは出撃しない。
我々が蜂起すれば、必ず報復攻撃があるだろう。
現役の首長には、自分の地域を守ってもらわねばならん。
東側から出撃しないのも、まだ砲撃を受けていない東側を、戦火に巻き込まぬためだ」
首長たち、うなずく。
老首長、地図の西側地域の上に指を置く。
「出撃は、西側地域から行う。
アッコ、ハイファ、ヤッファ、ナザレ、ベエルシェバ──それぞれの首長と志願者で編成した、5つの騎馬隊だ」
首に鍵を下げた5人の首長がうなずく。
老首長、指で西側地域の北部をなぞる。
「北ガザ県とガザ県は、すでにシオン軍にほぼ制圧されている。
軍事回廊にはシオン軍が常駐している」
そのまま指をノストルム海へ移す。
「ノストルム海もシオン軍に押さえられており、海上移動は困難」
老首長、指を南へ移動させ、最南端のラファフ県を指す。
「よって、ラファフの南の検問所を突破し、そこから出撃する」
老首長、顔をイスマイールに向ける。
「ここで問題が一つある。
南の検問所を越えた先はアッバース国。
アッバース国の国境警備隊に、我々が敵意を持たぬことを伝えてもらうことは可能か?」
イスマイール「お前たちが通過することに目をつぶるよう、手を回そう」
老首長「感謝する」
老首長、再び地図上に目を落とす。
南の検問所を起点に、シオン国へ向けて5方向に指を滑らせる。
「検問所を出た後、隣接する物資専門の検問所を経由しシオン国に侵入、5方向に分かれる。
南、南東、東、東北、北。
各部隊は、進めるだけ進め。
そして、障壁が建てられる時間まで、持ち堪えよ」
ベエルシェバ県首長「南は、俺の部隊が行こう」
老首長うなずき、カナン地区東側地域を指す。
「南東、東、東北に向かう部隊は、東側地域と繋がることを目標とする」
そのまま指をシオン国北部に向かって滑らせるが、途中で止める。
「日没までとなると、北限は…恐らくヤッファ」
ヤッファ県より北に位置する、アッコ県とハイファ県の首長を見る。
「…どうする。アッコ、ハイファの」
2人の首長、つらそうに目を伏せる。
アッコ県首長「…北は、ヤッファの首長が行くといい」
ハイファ県首長「…東北は、ナザレの首長だろう。
俺たちは、東と南東に向かう」
老首長「…すまん。こらえてくれ」
老首長、首に鍵を下げた5人の首長を見回す。
「時間も人員も足りん。
シオン軍との戦闘は、極力避けよ。
市街には入らず、国境を押し広げることに専念せよ」
老首長、カナン地区全体を囲むように、指で地図をなぞる。
「各々の点を繋げば線となり、線はすなわち面となる。
カナンの地を、再び取り戻すぞ」
5人の首長たち、力強くうなずく。
✕ ✕ ✕
イスマイール「南の検問所の突破には、新型銃が役に立つだろう」
イスマイールの脇に控えていたアッバース国軍の若い士官が、胸に右手を当てて首長たちの前に進み出る。
「カナンの諸首長に、心より敬意を表する。
私は、アッバース国ホラーサーン軍所属、大尉アリー・イブン・ファーティマーン。
この新型銃の操作と運用を指導する役目を仰せつかった」
アリー、左手に持っていた新型銃を、首長たちに見えるよう両手で掲げる。
「シオン国防軍の特殊部隊に配備されている銃と同じ型だ。
この新型銃は、装填方法が従来の前装式とは全く異なる」
アリー、手元のボルトを引いて薬室を開けて見せる。
腰の革袋から薬莢を取り出し、薬莢を薬室に入れてから、ボルトを押し戻す。
「以上で装填完了だ」
「おおっ!」
首長たちから、どよめきが上がる。
アリー、銃を肩に当てて構えてみせる。
「旧式の銃のように、装填のたびに立ち上がる必要がない。
体を伏せたまま、連続して射撃を行える。
発射速度も有効射程も、旧式とは比べものにならない」
首長たち、興奮と熱気に包まれる。
首長1「この銃があれば勝てる!」
首長2「シオン軍と互角…いや、それ以上だ!」
イスマイール「同型の銃が、外に1,300丁用意してある。
訓練期間は、今日を含めて2日しかない。1秒も無駄にせず、訓練を始めよ」
首長たち、一斉に立ち上がる。
イスマイール「決死隊といえど、生命を粗末にするな。生き延びてこそ、意味がある。
──お前たちの健闘を祈る」
あなたにおすすめの小説
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
本の虫な転生赤ちゃんは血塗りの宰相の義愛娘~本の世界に入れる『ひみちゅのちから』でピンチの帝国を救ったら、冷酷パパに溺愛されてます
青空あかな
ファンタジー
ブラック企業に勤める本の虫でアラサーOLの星花は、突然水に突き落とされた衝撃を感じる。
藻掻くうちに、自分はなぜか赤ちゃんになっていることを理解する。
溺死寸前の彼女を助けたのは、冷徹な手腕により周囲から「血塗りの宰相」と恐れられるアイザック・リヴィエール公爵だった。
その後、熱に浮かされながら見た夢で前世を思い出し、星花は異世界の赤ちゃんに転生したことを自覚する。
目覚めた彼女は周囲の会話から、赤ちゃんの自分を川に落としたのは実の両親だと知って、強いショックを受けた。
前世の両親もいわゆる毒親であり、今世では「親」に愛されたかったと……。
リヴィエール公爵家の屋敷に連れて行かれると、星花にはとても貴重な聖属性の魔力があるとわかった。
アイザックに星花は「ステラ」と名付けられ彼の屋敷で暮らすようになる。
当のアイザックとはほとんど会わない塩対応だが、屋敷の善良な人たちに温かく育てられる。
そんなある日、精霊と冒険する絵本を読んだステラはその世界に入り込み、実際に精霊と冒険した。
ステラには「本の世界に入り込み、その本の知識や内容を実際に体験したように習得できる特別な力」があったのだ。
彼女はその力を使って、隣国との条約締結に関する通訳不在問題や皇帝陛下の病気を治す薬草探索など、様々な問題を解決する。
やがて、アイザックは最初は煩わしかったはずのステラの活躍と愛らしさを目の当たりにし、彼女を「娘として」大切に思うようになる。
これは赤ちゃんに転生した本好きアラサーの社畜OLが、前世の知識と本好きの力を活かして活躍した結果、冷徹な義父から溺愛される話である。
「仲睦まじい夫婦」であるはずのわたしの夫は、わたしの葬儀で本性をあらわした
ぽんた
恋愛
サヤ・ラドフォード侯爵夫人が死んだ。その葬儀で、マッケイン王国でも「仲睦まじい夫婦」であるはずの彼女の夫が、妻を冒涜した。その聞くに堪えない本音。そんな夫の横には、夫が従妹だというレディが寄り添っている。サヤ・ラドフォードの棺の前で、夫とその従妹はサヤを断罪する。サヤは、ほんとうに彼らがいうような悪女だったのか?
※ハッピーエンド確約。ざまぁあり。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
真実の愛の裏側
藍田ひびき
恋愛
アレックス・ロートン侯爵令息の第一夫人シェリルが療養のため領地へ居を移した。それは療養とは名ばかりの放逐。
男爵家出身でありながら侯爵令息に見初められ、「真実の愛」と持て囃された彼女の身に何があったのか。その裏に隠された事情とは――?
※ 他サイトにも投稿しています。
結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です
柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。
そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。
真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。
けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。
「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」
彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。
アンリは実は、亡き国王の婚外子。
皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。
悪役令嬢は激怒した
松本雀
恋愛
悪役令嬢は激怒した。
必ず、かの厚顔無恥な簒奪者を排除せねばならぬと決意した。
ローザリンデ・フォン・シュヴァルツェンベルクには、政治のことはわからぬ。流行のドレスにも疎い。けれど悪には人一倍敏感であった。なにせ、自分が悪役令嬢だったからである。
◇
悪役令嬢ローザリンデは、王太子に断罪され辺境に追放された。
だが薬草園を耕す日々は存外悪くなく、「悪役令嬢時代より充実してるわ」と満足していた——はずだった。
ある日、社交界に新たな悪役令嬢が君臨し、自分が「先代」呼ばわりされていると知り大激怒。悪役令嬢の座を賭けて王都に殴り込む。
完璧な縦ロール、完璧な高笑い、完璧な紅茶のかけ方。何もかもが洗練された現役悪役令嬢クラリッサを相手に、高笑い対決、ドレスの威圧感対決、嫌味対決と、誰も得をしない真剣勝負が幕を開ける。
力押しの元悪役令嬢と技巧派の現役悪役令嬢。戦いの果てに二人が見つけるものとは……?
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。
言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。
12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。
====
●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
前作では、二人との出会い~同居を描いています。
順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。
※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。