転移先は迷宮入り口でした~レアアイテムと交換できるモノリスのお蔭で無双します~

まるせい

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第41話 ボス部屋②

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「はっ! やっ! ……はぁはぁ」

 疾風が駆け抜け、キキョウの声が聞こえる。

 先程からゴブリンロードの攻撃をどうにか受け続けているので状況が見えないのだが……。

「くっ!」

 背後から攻撃が迫る気配を感じて大きく身体を動かす。
 次の瞬間、俺がいた場所に氷柱がが貫いた。

 距離が離れたことでゴブリンロードの意識が俺から外れかける。

「炎よっ! こっちを見ろっ!」

 キキョウにターゲットが向くのはまずい。俺は火炎をぶつけてゴブリンロードの注意をこちらに引き戻した。

 周囲にも牽制で火の魔法をまき散らし、ふたたびゴブリンロードの抑えにまわる。
 既に戦闘開始から十数分は経過しているのだが、取り巻きはまだ半分以上残っている。

「キキョウ! 取り巻きの排除を急いでくれっ!」

「わ、わかってますっ!」

 焦燥感漂わせた声が聞こえる。普段の彼女らしからぬ動きで、本人もそれがわかっているのだろう。

「こうなったら……」

 俺は魔石を取り出すと、

「炎よっ!」

 ゴブリンロードの相手をしながら目に映る取り巻きに魔法で攻撃を仕掛ける。
 当然、その隙を見逃すはずもなくゴブリンロードが攻撃を仕掛けてくるのだが、

「甘いっ!」

 これまででゴブリンロードの動きを見切っている俺は、ギリギリのところで攻撃を躱した。

 俺の火の魔法で数匹の取り巻きが被弾して倒れる。

「ふぅ……」

 これで少しは攻撃を気にする相手が減り楽になったのだが、今みたいな綱渡りはあまりやりたくない。

 俺は左右への動きも取り混ぜながらゴブリンロードの攻撃をかわし、注意を引き付け続ける。

 ゴブリンロードと取り巻きすべての注意を自分に引き付けつつ攻撃を見切り続けていると、数分後にようやく取り巻きからの攻撃が止んだ。

「ライアス、お待たせしましたっ!」

「そのまま、ゴブリンロードの背後から攻撃を仕掛けてくれ!」

 キキョウが取り巻きを全滅させて合流してきたのだ。

「わかりましたっ!」

 彼女は火の太刀を上段に構えるとゴブリンロードの背中を斬りつけた。

『グオオオオオオオオオオッ!』

 火の太刀が浅く背中を斬りつけると、ゴブリンロードは怒りににじませた視線をキキョウに向ける。

「あああああ……あぁ……」

 明らかにキキョウの動きが鈍った。

「早くっ! 離れろっ!」

 キキョウの攻撃スタイルは自身の素早さを活かした一撃離脱だ。攻撃を仕掛け、相手が振り向いたころにはその場におらず、気が付けば違う方向から再度攻撃をしている。

 これまでのモンスターはそれでキキョウに気をとられている間に俺から渾身の一撃を受けて倒されていた。

 だというのに、今日のキキョウの動きは鈍く、攻撃を当てた後もその場で立ち止まってしまっている。

 あれでは敵を翻弄することが出来ず、事実取り巻きを倒すだけでも随分と時間がかかっていた。

「このっ! 『バーニングバッシュ』」

 ゴブリンロードがこちらに背を向けているのなら振り向かせるしかない。俺は自分の技を繰り出しゴブリンロードを攻撃する。

『グアッ!』

 プロテクターに阻まれはしたが、確かなダメージを与えることに成功した。だが……。

「キキョウ! 離脱しろっ!」

「……あああああ」

 恐怖の表情を浮かべたキキョウには俺の声が届いていない。それどころか、その場に立ち尽くしてしまっている。

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』

「きゃああああああああああああ!」

「キキョウ!!!!」

 ゴブリンロードの太刀を受けてキキョウが吹き飛んだ。攻撃をまともに食らったらしく、装束を血に染め横たわっている。

『グフッグフッ』

 確実に戦力を排除するつもりなのか、ゴブリンとしての本能なのか、ゴブリンロードは俺の攻撃を無視するとキキョウに向かって進み始める。

「キキョウっ! 起きろっ! 離脱してくれっ!」

 俺が呼びかけるが、彼女は意識を失っているのか脱出石を使う様子がない。

「くそっ! このっ!」

 俺の攻撃は確実にゴブリンロードに傷を負わせている。だが、このままのペースでは俺がやつを倒す前にキキョウが殺されてしまう。

「こうなったら……」

 俺がいったん距離を取り、亜空間からある物を取り出す。
 そうしている間にもゴブリンロードはキキョウに近付き、太刀を振り上げると……。

「させるかああああああああああああああああっ!」

 ゴブリンロードが武器を振り下ろす直前。俺は全力で突進をする。

『ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!』

 俺の叫び声とゴブリンロードの叫び声が重なり、次の瞬間二つの刃が対象を攻撃した。
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感想 2

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みんなの感想(2件)

ひろさん。
2022.09.07 ひろさん。

なろうから先行分読みに来ました〜(笑)
もうキキョウは無くてはならない存在になりつつありますね〜

解除
ピザ ヤマト

もしかしてチョロイン?

解除

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