願いと欲望

秋赤音

文字の大きさ
上 下
5 / 68
封じられた欲望

4.好奇心

しおりを挟む
地図を開いて、順序が記された場所を確認する。
別の紙が一枚重ねられていた。
『まずは秘宝を得ること。
一ノ島に槍、二ノ島に盾、三ノ島に剣あり。
その秘宝をもって四ノ島にいる巫女と合流する。
五ノ島で封印を施し、王宮に戻って成功を報告せよ』
どうやら指示書らしい。
まずは、指定された一ノ島に転移した。
秘宝の場所までは書いていないなので、誰かに聞くしかない。
置いてある案内板を頼りに町まで移動する。
人通りの多い場所を歩いていると、勢いよく走ってくる影が一つ。
避けきることができなかったらしく、左腕に影が当たった。

「…ぃった…、ぁ、ごめんなさい」

「待て!」

「うわ…まだくるの」

影の正体は女性だった。
追われているらしい。
初めて見る先生ではない大人の女性に少しだけ緊張した。
女性は、複数の黒い影を見て舌打ちをする。

「ごめんなさ…っ」

走ろうとした女性はその場にうずくまった。

「どうした」

「足を痛めたみたい」

「いたぞ…お前、まさかお嬢様の恋人か」

黒い貴人は俺を睨んでいる。
面倒なことに巻き込まれた。
疑いを晴らして移動しなければいけない。

「違いま「そうよ、この人が私の恋人。分かったらどっか行ってよ」

女性は俺の腕をつかんで走り出す。
不意打ちで断る時間もなく足を進められた。
遠くなる気配に安心したが、完全に巻き込まれてしまった。
俺たちしかいない路地で立ち止まった女性は、俺を見る。

「巻き込んでしまって、ごめんなさい。
私はサラ。リリア家の三女。
十三歳にして未婚という貴族では珍しい一人です。
家のことは上の兄弟に任せて自由になろうとしたけど、
親が決めた相手と結婚するように言われて逃げているんです。
二ノ島まででいいので、私の恋人になってください」

「俺には仕事が「報酬は、私が身に隠している秘宝。
これを勇者に高く売れば、良いお金になります」

困ったような笑みで告げられた、さらに耳元で囁かれた言葉に驚く。
女性の言葉がが真実なら、探している秘宝が見つかったことになる。
ここであえて勇者と言う必要はない。

「わかった。引き受けよう。俺はクオンだ」

「いいの?ありがとうございます。クオン様」

「クオンでいい。恋人に様はいらないだろ」

「そうで…そうね。クオン、
私のことは、サラと呼んで。
報酬のことは、別の場所で」


しおりを挟む

処理中です...