願いと欲望

秋赤音

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封じられた欲望

恐怖と嬌楽

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「…っ、巫女、様…なにを?」

「王命で、逆らえませんでした」

「ああ…そうか。しかたない、な」

ため息をつく勇者様は、私を避けてベッドに背を預けた。
消した槍が貫いたところから出る鮮血が服に染みを作っている。
このまま手当をしなければ、命は亡くなるだろう。
これで、いい。

『アンナ。迎えにきた』

「はい。待っていました」

現れた黒い光に手を伸ばす。

「巫女様、それは「いいの。どうせ、私も殺される」

「そう、かもな」

ここに私を求める者はいない。
聖女が必要なら、私でなくてもいい。
きっと、また魔力が強い者を探すだろう。
私がそうだったように。

『我と共に来い勇者。安息を約束しよう。
対価は、わずかな魔力でいい』

「その誘いを受けよう。
仕事は終わった。あとは俺の自由だ」

『巫女、勇者。目を閉じろ』

リーシャ様は魔王と繋がりがあるのだろうか。
再会した声と光は、私たちを包み、どこかへ転移した。


「もう開けていい。
これからは、この部屋を使え。
勇者には別の部屋を用意している。
ついてこい」

「アンナ。僕の部屋へようこそ」

なぜかリーシャ様に抱きしめられていて、
抱き上げられると椅子に降ろされた。
膝の上に乗せられ、お腹にリーシャ様の腕が回る。

「魔王。ここは、どこだ?」

勇者様は出入り口の近くに立っていて、平然と尋ねる。
黒い人型の煙は応えたように揺らぐ。

「そうだった。我が城へようこそ。
人間はここを魔界や天界と呼んでいるが。
必要な物があれば巫女はリーシャに言え。
勇者、ついてこい」

誘導に従い部屋を出た勇者様。
魔王が言っていた言葉に驚く。
天使様は魔の者?
魔の者は天使様?
どういうことだろう。
考えていると、リーシャ様と目が合った。
思わず見惚れていると、唇が重なる。

「ん…ぅ、…っ、は…っ、ぁ…っ」

「アンナ、もっと、口を開けて?」

「ぁ…っ、あ……んっっ」

舌をからめとられ、離れるまで愛撫のような深い口づけは続いた。
体はすでに先を求めて火照り疼いている。
早く、リーシャ様で満たしてほしい。

「アンナ。この部屋からでてはいけないよ。
他の天使には僕のアンナを見せたくないから」

「は、い…っ、私はリーシャ様のアンナです……っ」

「そうだ。アンナは僕だけのアンナだよ。
約束を守っていればいつでも魔力を、たっぷり、あげるからね。
この服は…いらないよね?僕が新しい服を贈るよ」

「はい。リーシャ様の服がいいです…っ」

「よかった。一緒に考えても楽しそうだね」

リーシャ様は私の服を魔術で消した。
空気に晒された足を開くと、すでに濡れている蜜口に指を入れる。
さらに奥へ誘うように腰を振る。

「しばらくは、いらないか」

リーシャ様は何度も濃い魔力を注いでくれた。
唇から、蜜口から、触れている指から。
温かさに包まれ、眠っても目覚めてもリーシャ様がいる暮らしが始まった。

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