天は地に夢をみる

秋赤音

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神、人里へ

7.禁断の儀式

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【神卸の儀】は、何代も前にできた禁忌の術。
魔法の扱いで後れをとっていたアスカ国が
他国への対抗策として研究し、作り、完成させた。
だが、意外にも、すぐには使われなかった。
そして、方法が書いてある古文書の存在すら、忘れられかけていた時だった。

飛鳥 雷が国王となったアスカ国で、それは使われた。
しかし、すべてを自分の手にしたいという
強欲の主には見落としがあった。
見落としていることにも気づかない国王は、
そのまま【神卸の儀】の魔法陣を展開する。
光の神を降臨させる儀だと思い込んだままで。
本来は光と闇の神を人に宿すための儀。なので必要な器は二つ。
しかし、用意した器は国王のみ。

一に、魔を払い結界を作るため、神官が五つの的を射る【破魔の矢駆け】
二に、願いを神へ伝える【詩詠み】の巫女による【祝詞】
三に、四人の【献神】の巫女が火・水・風・土の魔力を捧げる
そして、魔法陣は展開する。
真っ先に、光の神であるアルヴァが、魔法陣を展開した瞬間に宿る。
次に闇の神のセレン、だが。
当然、一つの器に二つ入るのが無理だった。
魔法陣の通りに闇の神の力が入ろうとしていると、体に無理がきていた。
様子がおかしい兄を心配して、
神官である国王の弟は魔法陣の中心に立つ兄の元へ駆け寄る。
その二つ目の器へ、セレンは宿る。
儀式閉じたが、儀を行っている場が崩れ始めた。
初めに用意する器が足りない時点で綻びができた場は、
膨大な魔力に耐え切れなかった。
崩れる石を避けながら逃げようとする国王と、
石につぶされそうな巫女たちを守る神官。

我が子が宿るも、澪や他の巫女を守って大けがを負う神官を、
某は助けることにした。
その場に姿は現さず声だけで、煉の身を預かることを伝え、
そのまま神殿の中へ転移させた。
神殿の中にある結界の中に、もう一つ結界をはり、
煉をクレセント国の神殿に転移させた。
クレセントの神殿という場と、煉の魔法の相性の良さもあり、
回復も早かった。
治したら帰すって言ったので、約束通りアスカ国の神殿へ転移させた。


この儀式で、小さな違和感はあったが、考えてもわからないので、一旦保留にした。
アルヴァが国王をみるときの熱烈な視線、宿った後すぐに
必要以上の魔力を注いだのか。

その理由と向き合うのは、まだ先のお話。
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