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【第一章】異国の地へ

7.主従関係

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恩師のニコル・レネアスの元を離れて、二か月が経つ。
ウォル・クレイスが名付けた新しい名前、ランファにやっと馴染んできた。

事の始まりは、ある日の宴。
ニコルが貴族直々の依頼を引き受け、指定された場所で一曲舞った。
その後、改めて王宮に呼び出される。
いつの間にか私はウォル・クレイスの物になることに、半ば決まっていた。
当日、本人を置いて進む話に驚いた。
初めて自分の身分の低さを実感する。
ニコルは、仲間契約を切らないことを条件に承諾した。
ウォル・クレイスとその場で主従契約を結ぶことになり、
そのまま用意された部屋に住むことになった。
帰るニコルは、こう言って一時の別れを告げた。

「契約は切れてないから、安心して。リリア。
また孤児院へ行こう。連絡はウォルを通してする」

その言葉は本当に叶えられ続けている。狩りや雑用依頼も、いつも通り。
依頼がない日は、ウォル様と共に図書館で本を読む。
庭にいたとき殺気の先を射止めたこときっかけに、武術も加わった。
念のため加減して足を狙ったので生きていたが、結果的には捕獲に貢献した、らしい。

「ランファは物覚えがよくて、教えるのが面白い。
自分の勉強も楽しくできるし、これからもよろしくね」

無邪気に笑うウォル様は、そう言いながら新しい本を渡してくれた。

「はい、ウォル様」

そうして時間は流れ、ウォル様の新しい一面も知っていく。
ほとんどの時間を共に過ごすうち、
貴族らしい大人びた顔ではない表情を見る機会も増えていた。

やることが増えて忙しくはなったが、毎日が楽しく輝いて、とても充実している。

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