悠久の約束と人の夢

秋赤音

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悠久の約束と人の夢

4.答え合わせ

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子らは、空白だった期間の出来事を戸惑いながらも受け入れた。
神の都合で記憶を奪い、一方的に戻した親を攻めることはなかった。
そして、目の前で恋人と甘い語らいを始める様子に安堵する。

「私、光夜と会ったことがあるのですね」

「思い出しましたか…嬉しいです。
幼い頃に一度だけ弱って獣化して困っていると、
緋蓮に助けられました。
お礼をしようと、今と同じように人型になって、
人型で暮らす幼い緋蓮へ会いに行ったんです。
緋蓮が人間界へ降ろされたと聞き、
近づけそうな子供の体を借りて接触しました」

緋蓮は、光夜の言葉を聞き目線が泳ぐ。
その頬はわずかに赤い。
光夜は、そんな緋蓮を熱く甘い眼差しで見つめている。

「そうだったのですね。
…ええと?狼は確かに一度助けましたが。
光夜は、あの時の狼だったのですね。
元気でいてくれて、嬉しいです」

「………」

光夜は、静かに緋蓮を引き寄せて抱きしめる。
その背に手を添え抱きしめ返す緋蓮。
少し離れた部屋の影で、
二人の様子を共感の目線で見つめる雫丘がいる。

「どうして、雫丘はうなずいるんだ?」

「僕も、似たような経験があるから、つい…。
昔に熱さで弱っていた蛇を木陰へ逃がしたことがあるから…。
凪斗こそ、どうして光夜を見て共感しているのだ?」

雫丘は、寄り添うように隣にいる凪斗を見た。

「その蛇は私だ」

「え、ええええ?」

驚く雫丘を強く抱きしめる凪斗は、
甘い視線を雫丘へ惜しみなく注いでいる。

「雫丘。
私は、初めて会ったときに雫丘の心遣いに惚れた。
人間界に降りてから共に過ごしているが、愛しさは募るばかりだ。
昔も、今も、これからも雫丘を愛している」

神は、青い風を吹かせる成人したての若者を長椅子に座り見守る。

「先代の宝たちは、元気ですね。
愛しい人を追いかけ続ける一途さには感動します」

「そうだね。
海菜も番と、盤で愛を語り合っているだろうよ」

「初恋って、実るのですね」

深青と深紅の目は、途切れることなく温かな眼差しを向けていた。
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