悠久の約束と人の夢

秋赤音

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悠久の約束と人の夢

8.おかえり

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雲一つない晴天。
役割がなくなった者たちは、
今まで過ごせなかった何かを取り戻すように楽しみを満喫している。

「大空。たまには二人だけで茶を飲むのも良いものだね」

「そうですね。地紅がよければ、また…あ、きましたね」

丸いテーブルに向かい合い座ってお茶を楽しむ二人は、
同じように空を見上げる。
同時に立ち上がると、テーブルから離れて光を出迎える。
天の青に一点の強い輝きが現れ、ゆっくりと大地へ降りる。
光が消えると、
寄り添うように黒髪の男性と白金の髪の女性が立っている。

「瀬菜。そちらが隼斗様?」

「大空。そうです。
私たちもこちらでお世話になります」

「夫を連れて家に戻っただけですよ。
教会の見守りを頼んでごめんなさい。
また会えて嬉しいです。
おかえりなさい」

深緑の目は白金の髪をなびかせ、
深青の瞳を視線を交わして抱き合った。
ただいま、と絞りだされた声に深青は嬉しそうに目を細めた。

「改めまして、隼斗と申します。
お世話になります」

銀の瞳は柔らかな笑みを浮かべている。
風が、男性の項で一つに束ねてある黒く長い髪をなでる。

「海菜。仕事、お疲れさまでした」

「瀬菜…ありがとうございます」

深緑の目線が交わると、
互いを労うような笑みがこぼれた。

「瀬菜。おかえり。
僕、ずっと待っていたよ」

ふいに現れた深紅い目の狼。
じゃれつくように、二人の体を頭の先まで包むように囲う。

「詩紅。ありがとう。
寝起きのようですね。毛並みが荒れています。
まだ番とは出会えていないのですね?」

白い毛並みを整えるように撫でる二人。
それに甘えてされるがままになっている。

「いいや?
見つけたけど、まだお仕事があるみたいだから。
僕、待ってるんだよ。
そろそろ会えると思う」

「よかったですね。その方のお名前は?」

「クレル。
僕たちのことを最後まで気にかけてくれた人だよ。
大空。瀬菜。ここへ連れてきてもいい?」

「いいですよ。私も会えるのが楽しみです」

「先代の王の兄ですからね。
穏やかに過ごしていただきましょう」

「ありがとう」

狼は、深紅い目に白銀の短髪の女性へ姿を変えた。

「今日は、友人の再集結を祝いますか?」

「いいですね」

「賛成」

男性は、妻の隣で穏やかに笑みを浮かべている。
女性たちは移動する間も会話が絶えず、
心満ちた笑顔に再会の嬉しさがにじみ溢れていた。
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