影に鳴く

秋赤音

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訪れた穏やさで

1.愛、合い、遇い

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「お疲れさまでした」

その声に返る音はない。
忙しなく働く者たちは目先の仕事に集中している。
男性は店を出ると、迷うことなく道を歩み進める。

「トオル!」

「リンネ。お疲れさまです」

「トオルも、お疲れ様です」

トオルはリンネの手を包むようにとって、
足音は二つになって歩みは続く。


"みんな同じ、みんな仲良く、話し合って暮らしましょう"
国が定めた法律が存在しない街。
特別エリアD区。通称、D区。
権力者たちが娯楽のために実験場。
志願者の中から適当に選ばれた人々は、
贄になる代償に高待遇で三年の間は勤務を続けている。
互いの感情を軸に行動を許される。
無法地帯で得た自由の下、
話し合いと自己責任と運に身を委ねるしかない。


二人は、歩いていると花を選ぶ女性と目が合った。

「ラナン」

「リンネ。お疲れ様」

ラナンは、手をつないだままの二人を見てため息をついた。

「相変わらずね。王子サマ。
しっかりお姫様を守ってください」

「ラナンに言われなくても…僕は守ります」

「トオル…ラナンも、ありがとう」

リンネは、二人を交互に見つめて微笑んだ。
その表情に頬を染めるラナンとトオルを見たリンネは、
小さく笑った。

「リンネ?」

その様子に疑問の視線を向けるラナン。
リンネは見つめ返すと、優しく微笑んだ。

「ごめんなさい。
さすがは幼馴染だなーと思いました」

「トオルと同じにしないでくれる?
私はリンネの笑顔が好き、なのよ」

「僕はリンネの全てが大好きです」

リンネは見つめる二人に晴れやかな笑顔を向けた。

「ラナン。トオル…ありがとう。
親に捨てられても穏やかでいられるのは、
二人がいてくれるからです」

「「僕(私)も、です(だよ)」」

ラナンとトオルが目線でいがみ合っていると、
花を手に持った穏やかな笑みを浮かべる女性が現れた。

「仲が良いねー。ラナン、こっちを手伝ってー」

「はーい。ごめんね、また遊ぼう」

「仕事中にごめんなさい。
引受人が優しい人でよかったですね」

「うん!またね」

女性の背を追うラナンを見送ると、二人は再び歩き始めた。
そしてたどり着いた小さな家。

「「ただいま」」

「「おかえりなさい」」

玄関へ入り鍵を閉めると、
二人は目を合わせて口づけを交わす。
しだいに呼吸が荒く、湿りのある音が聞こえ始める。

「トオル、ここ…」

「ごめん、我慢できない」

「わかりました。私も、ですから」

リンネは自ら壁に手をつき、スカートをたくし上げる。

「リンネ…いい子です。
出会った時から、リンネのすべてに僕を刻み続けるかいがあります。
さあ、今日も受け入れてください」

「はい。トオルと出会えて幸せです。
早く、きてください」

リンネは秘部を晒し、続きを強請る。
トオルはその腰を掴み、すでに昂っている自身を遠慮なくあてがった。
悦びに喘ぐ高い声と水音をたてながら二つは一つとなり、
そのまま互いを貪るように交わった。



「リンネ…幸せなら、いいのよ」

同じ頃、空を見上げて呟くラナン。
幼い頃にいた孤児院で出会った少女の幸せを願う。
内に潜めた暗い感情は見ないことにして。

「トオルさんとは相変わらず喧嘩ばかりねー」

「昔から、合わないのよ」

「リンネさんがきてからは、それだけは団結してたけどねー」

「リンネのことだけはね。
私が守りたいと、思ったのよ。
初めてできた友人だもの」

懐かしむように笑う女性へ返事をするラナンの表情は、
複雑だが穏やかだ。

「そうだったねー。
引き取りにいったとき、リンネさんとトオルさん。
とても寂しそうだったのを覚えているよ」

「今も会えるのはお母さんのおかげだよ。
ありがとう」

「どういたしまして。
さて、今日はこれで終わりー。
お疲れさまでした」

「お疲れさまでした」

ラナンは夕食と片付けを終えると、
手早く風呂からあがりベッドへ入った。
優しい夢を見ながら、夜は更けていく。


理性を捨てた交わりは、食事を後回しにして続いていた。

「リンネ…もっと、良くできるように考えてありますからね」

「もっと?」

「昔のように、ラナンも一緒に遊びたいと思いませんか?」

ベッドに仰向けで繋がったまま横たわるリンネは、
その言葉に赤い頬をさらに赤く染めた。

「ラナンも…ねえ、トオル。
私、先生みたいに綺麗になれました?」

「リンネは、綺麗になり続けています。
先生以上ですよ。
そんなに締めつけて…久しぶりですから、まずはお願いからです」

「はい…私、ずっと寂しかったです」

「僕も、です。やはり、三人でないと寂しいです」

「はい」

その言葉を最後に、激しく交わり疲れ果て眠るリンネ。
下肢の繋がりはそのままで大切そうに腕へ抱くトオルは、
リンネの寝顔を眺めている。
ふと、思い出すのは幼い頃の記憶。

昔は、ラナンも一緒にリンネと遊んでいた。
十五歳で性教育を終えると、僕たちは大人と同じ扱いになった。
孤児院の子供たちは仲が良い者同士で実践を始めた。
咎める大人は、いない。
むしろ妊娠への対応は手厚く、歓迎された。
孤児院で育てる子供がふえるだけで、
生み育てることも社会貢献として認めてもらえていた。
だからだろう。
子供たちは隠しているつもりの大人の真似をして、
大人の体の使い方を新しい遊び方として日常へと取り込んだ。
僕たちも、例外ではなく楽しい遊びとしてそれを受け入れていた。


与えられた個室の鍵がかかっているのを確認すると、
僕たちはベッドへリンネを座らせた。
ラナンがリンネへ性感を高めるマッサージを施す。
そして、達しそうになる手前でやめさせる。
拗ねるラナンともどかしそうなリンネを見る。

「リンネ。足を開いてください」

「はい」

迷うことなく開かれた足から下着を脱がせた。
すでに秘部からは甘い香りが漂っている。

「リンネ。もっと、たくさん気持ち良くなってくださいね」

「トオル…いれてください…っ、ラナンも、して…っ」

トオルは秘部へ指を浅くいれると、ナカの具合を確かめた。

「だめです。まだ、早いです。ラナン」

「はい。リンネ、準備が大切だって習ったでしょう。
好きな人に触れたい気持ちは否定しないけどね。
ここは柔らかくて繊細だから、直接触れるのはトオルだけ」

リンネの背後にいるラナンは、小さな柔い丸みをそっと撫でる。

「ひゃぅ…っ!よすぎて、だめぇ…っ!」

「ラナン、そのまま優しく」

「わかっているわよ。
リンネのお願いが叶うように、私も手伝うからね」

「先生みたいに育たなくても僕は…」

完全に力が抜けているリンネは、
快楽で肌を赤く染めながら二人へ身を預けている。
聞こえるのは荒い呼吸と艶のある喘ぎだけだ。
そんなリンネを愛しそうに見つめるラナンも、
とても可愛い。
僕は締めつけが強まるリンネの熱いナカを快楽へ導く。

「トオルには聞いてない。
私はリンネに聞いて、リンネの意思をを叶えます。
綺麗のお手本は先生だと言ったのだから」

「トオル、奥、もっとぉ…っ、ラナンも強く…ぅあぁっ」

「リンネ。強ければ育つのではないわ。
優しく、するからね」

「リンネ。奥までほしいときは、教えましたね?」

「ト、オル…の、いれてください…っ!」

「ラナン。あとは僕がします」

「はい。ごゆっくり」

ラナンはリンネから離れてベッドから降りると、
少し離れたところから見つめている。
僕はラナンの様子を確認し、リンネを抱き上げ仰向けに押し倒した。

「や、ラナン、も…いっぁ、ああああっ!!」

視線でラナンを追うリンネは一気に沈めた自身で達した。
そして、理性が飛んだらしく嬉しそうに腰を振っている。
夜が更けるまで互いに何度も熱を交わし、
どちらの体液か分からないくらい混ざったものがリンネの秘部からこぼれていった。


「トオル…もっと…」

リンネの艶のある寝言で我に返る。
その腰はわずかに揺れていて、眠りながらも快楽を味わっているようだ。
合わせて揺れる豊かに育った柔い丸みは、
リンネの願いでありラナンの願いでもあった。
リンネの動きに合わせて腰を揺らすと、
強い締めつけと共に達し、ナカへ新たな熱が混じり合う。
悩ましい吐息を最後に、再び穏やかな眠りへつくリンネ。
大切なものは、守る。
決意を胸に、目を閉じた。

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