人形は瞼をとじて夢を見る

秋赤音

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願う乙女は永遠と咲く

2.時、満ちて

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※BLです。






「レンさん。これ…」

「お役に立つと思いました」

すでに上着を着ているレンさんが渡してきた資料。
その最後に、別でまとめられている資料。
そこには、
自国の地方と隣国の地域の同性愛者の扱いついて書いてある。
この間、ランと食品の買い物しているときに会ったからだろうか。
なぜかランとレンさんが親しそうだったが、干渉する気はない。
なんにせよ、自分で調べたよりも細かな事柄は役に立つ。
公の論文を集めて、
隣国の言葉を翻訳した形跡もあるそれらに驚く。

「ありがとう」

「いえ。では、私は出てきます。夕方には戻ります」

扉がしまると、もらった資料を読む。
遺伝子の研究と、
出産の仕組みや危険性の軽減は多くの人を助けているのだと思う。
知りたいだけ、と始めた調査も
そろそろ終わりが見えてきた気がする。
引っ越しはいつでもできるので、
あとは行き先だけだ。
夕方になり、
レンさんから渡された資料を受け取って仕事場の鍵を閉める。

「お疲れ様です」

「お疲れ様です」

去り際、レンさんからは、やはり美味しそうな香りがした。
空腹時には辛い。
早くランと帰ろうと思い、そろそろ仕事が終わるランを迎えに行く。
途中、視線を感じた気がするが、
今はCの安全が一番だ。
無事に合流して、喫茶店に入る。

「リン。最近、俺、見られている気がするんだよ。
それだけだから、無視しているけど。
気味悪くて」

表情に影を落とすランの言葉に、
さっき感じた視線を思い出す。

「俺も、心当たりがある。
何かあれば、すぐに言え。
俺もそうするから」

「うん」

不安を浮かべたままのランを見て、
引っ越し先を早く決めようと思った。
俺たちは、一緒に静かに暮らしたいだけだ。
喫茶店を出て、家に向かい歩いていると、道端に人が立っていた。
何かを探しているようだ。
その人が俺を見ると、なぜか駆け足でこちらへ来る。

「見つけた!
ねえ、これからスイと遊びましょう?
恋人と一緒でもいいから」

「お断りです。お帰りください」

「一目惚れなの!一回でいいから」

引き下がらない女性は、ランを見て恋人と言った。
自分たちのどこまで知っているか分からない。
あと数歩の距離感が怖い。
今日は帰らない方がいいかもしれない。

「行こう」

「うん」

ランに目配せをすると、宿がある場所へ向かう。
つかず離れずで後ろをついて来る女性は、無視をする。
宿へ着くと、後ろの気配が動いた。

「スイのためにお部屋を用意してくれるのよね。行きましょう」

ランを背に隠して、女性を拒絶して払おうとすると、
ちょうど宿から出てきた一組の男女が女性を見た。

「スイ!昨日は良かったわー。来るなら呼んだのに」

「そうだよ。また三人で楽しもう。
なんなら、今から友人を集めてもいい。楽しかったよな」

男女は親しそうに女性の肩や腕に触れている。
女性は、男女と共に去っていった。
その日は、抜けきらない緊張感のままCを抱きしめて眠った。

翌日。
いつものように仕事場を出て歩いていると、足音が近づいてきた。

「今日こそ、私と遊びましょう?」

「お断りします」

「一回でいい。
もし気が合えば、ずっと…あなたのように、
誰かに一途な人に愛してほしいの」

女性はすがるような目で俺を見る。

「失礼します」

その視線を流し、
再び歩こうとするが、無理だった。
掴まれた腕に止められた。
独特の香りが鼻をぬける。

「どうして?一人でいいから、
私だけを見てほしいだけなのに」

「それなら、なおさら他を当たった方がいいと思います。
それに、奪った者は、あなたがしたように、
誰かに奪われるかもしれませんよ」

「あ…でも、でも!それは、
でも、そんなの当たってみないと分からないわ!」

甲高い声と共に掴まれた腕が離される。
大きく一歩の距離をとる。

「そうですね。
あなたは、あなたが思うように生きればいいと思います。
二度と姿を見せないでください。失礼します」

女性は、呆然として地面へ座りこみ、動かなくなった。

「どうして」

つぶやく声は聞こえたが、
しばらくは追いかけてこないだろうと思い、
足早に移動した。
待ち合わせの喫茶店には、すでにcがいた。

「遅くなってごめんな」

「いいよ。
それより、リン。
あの女性と会ったの?香水が…その」

ランは俺をじっと見ながら、苦い顔をしている。
言われてみれば、確かに香りが強かった。
近づかれた時に移ったのだろう。

「腕を掴まれてな…申し訳ない」

「いいよ。上書きするから」

拗ねたように唇を尖らせて、言葉に刺がたっている。
俺はランのそれすら可愛いと思うのだから、
どうしようもない。

「そうしてくれ」

「うん」

嬉しそうにほころぶ笑みに、俺も思わず頬が緩む。
そして、早く引っ越そうと思った。
おそらく、住まいは特定されていると思った方がいい。

「帰ったら、話がある」

「うん。俺も、話したいことがある」

買い物をして帰り、風呂と食事を終えて長椅子に座る。
ランが見せてきたのは、
引っ越しに必要な書類と行き先の候補が書かれた紙と、
見たことがある紙の束だった。

「これ…」

「うん。レンさんに相談したら、調べてくれた。
たくさんあって読むのが大変だったけど…考えたんだよ」

「レンさんを知っているのか」

「うん。
リンがいないときに仕事場に行ったら、リンの番?って聞かれた。
偶然借りた服だったからかもだけど、
正直に言ってしまって…でも否定も肯定しないでくれた。
協力まで申し出てくれた。
勝手に言って、ごめんなさい」

ようやく、
偶然合ったときの親しそうなな二人とあの紙の束に納得した。
落ち込んだ顔のランは、今にも泣きそうだった。

「何もないんだから、気にするな。
それに、いずれは伝わることだった。
それが早まっただけだ。
それより、行き先を一緒に決めよう」

「うん」

目を細めて笑うランは、一粒だけ涙を頬へ落とす。
指先でそれを拭うと、その水を舐める。

「泣くなら、先に言え」

「無理だよ」

「言え。こぼすと、もったいないだろ」

「確かに…わかったよ」

そう言いながら、また涙を落とし始めたので、抱き寄せた。
抱きしめ返される腕の温かさに幸せを感じる。

「レンさん。嬉しそうに笑って、お幸せにって言ったんだよ。
まさか、祝福されると思っていなかった。
とても嬉しい」

あの人も嬉しそうに笑うこともあるんだと思った。
レンさんがランに向けた感情は、ランがレンさんと向き合った成果だろう。
魔力の相性と番という考え方のおかげで同性愛に差別的な否定はないが、
腫れ物のように扱う空気感があるこの街と人々。
小さな積み重ねと誰もを否定しないことで、
ギリギリ成り立っている場所だ。
話すことに相当心を砕いただろう。
真剣に向き合うことの大切さと、
助け合いに改めて感謝した。

「それは、ランがレンさんと真剣に話したからだ。
俺にはできなかった。ランはすごいな」

「そんなことない。
リンは、俺の両親と向き合ってくれた。
リンがいるから、できたんだよ。
俺の家は、リンのこと認めてくれたし、後継ぎはもう決まっている。
でも、リンは違う。
催促がきていてもおかしくない。
父が心配していたよ」

優しい声と、向けられた愛情に心が揺らいだ。
隠していては逆に心配をかけることもあるんだと、
言われた気がする。
緩んだ心から、封していた弱音が落ちていく。

「そうか。ケジメ、つけないとだな。
催促は、きている。
手紙でな。
どこへ行けば会えるかも、分かっている。
でもな、相手には権力がある。
本気だせば、無理やり引き離すこともできる。
怖い…立ち向かってランと離されるくらいならって」

「リン。
俺は、何があっても離れない。
俺は、リンがいればいい。
初めてあったときからずっとリンが俺に想うように、
今は俺も同じ気持ちでリンを想っている。
初めは男同士で戸惑いもあったけど、今はリンしか考えられない」

強く抱き締められた腕には、
その覚悟が込められている気がした。
ふと過るのは、かつての記憶。
初めて会ったとき、直感でこの人しかいない、と思ったのだ。
あのときは、なりふり構わず、俺が一方的にランを追いかけていた。
時間をかけて口説いたことも、全て良い思い出だ。

「リン。俺も一緒に会いに行く。いいよね?」

「ああ。頼む」

「うん。俺たち、一人ではないんだよ。
忘れないでね」

「ああ。ありがとう」

ランは触れている腕の力をさらに強くすると、
俺の首筋に口づけた後、甘く噛んだ。

「なんだ?」

「なんとなく」

ランは、顔をあげて満足そうな笑みで俺を見つめながらそう言った。

「そうか」

どちらともなく、引き合うように唇を重ねると、
ゆっくり深まっていく。

「…っ、は……っ、ん、…っ…ラン?な、ぁ…」

「ん…っ、……っ、リン、…リン…っ」

貪るような荒い舌使いが心地よく、さらに絡ませる。
魔力の変動が大きく、
ランの感情が波立っているのが分かる。

「ラン、…も、…っ、出る、から…」

「ん、俺、も…一緒に……っ」

俺は、すでに硬くなっている互いの昂りを空気に晒し、
ランを長椅子へ仰向けに押し倒し、合わせ擦る。
絡む舌の感覚と合わさり、すぐに達したが、構わず続ける。
唇を離すと、ランは快楽に喘ぐ。

「リン…っ、やめ、…ぁっ、く…っ!……っ!!」

「たくさん、出た。な」

二人分の白濁をあえて混ぜるように擦る。
まだ熱を保つ昂りは、音を立てながら硬さが増していく。

「リン…俺、まだ…っ、んっ、…リンに、いれたい」

「こい。後で入れさせろ」

そのままランの昂りを窄まりへあてがうと、
ランは嬉しそうに笑う。
ゆっくりと、押し込まれ奥まで入ると、ゆるく律動する。

「うん。きて、リンでいっぱいにして…っ、ぁっ、あっ!」

「気持ち…っ、いいか?…っ」

「ん、気持ちい…っ、リン、出して、い…っ?」

激しい音と中で膨らむ欲、下から突き上げられる感覚で、
絶頂が近いのだと分かる。
それを促すように動いて煽る。

「…っ、出せ、全部、俺に……っ」

「ん、…ッ、…リン、イ、く…っっ!」

奥へ注ぐように出された熱を感じながら、
呼吸が整うまで抱きしめ合う。
少し落ち着いてランがゆっくりと離れると、熱を宿す瞳と合う。

「リン、きて…?」

未だに蜜をこぼしているランの昂りと、
誘うように見せつけられる窄まり。
ランは、恍惚な表情で俺を見上げている。

「しっかり、のみこめ…っ、…きつい、な」

「…っ、リン…っ、もっと、奥まで…っ」

「まだ、だ。ゆっくりも、たまには、いい…だろ?」

「リン、…や、ぁ!それ、や、だ…ぁあっ!俺、おかしくな…っ」

ゆっくりと進む俺を急かすように、
先へ先へと案内するように腰をふりながら喘ぐラン。
とろりとした蜜が泣くように剛直を伝って落ちていく。
奥をついた瞬間に達してもまだ留まる熱を焦らして、
最後にナカへ自身の熱を出し切った。

「…んっ、ぁ…、リンの…」

俺は、蕩けた笑みで受け入れた熱を感じ入るランに欲情する。
萎えかけていた自身が硬さを戻し、それを期待の目で見つめるラン。
強請り誘う声に応じ、再び押し込んだ。

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