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76. 誤解
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惣領貴之がみふゆを抱き寄せて何かを囁いていた。
みふゆは照れた笑顔を貴之に向けていた。
堀内は配達用の車の中から二人を見ていた。
貴之の親密すぎる態度は、何かがあったとしか考えられなかった。
仙道京司朗ばかりに気をとられていたが、まさか惣領貴之と?
台風中、惣領の屋敷に世話になっていたと言っていた。
何かあったとしたらその時か。
━━━━仙道の前で鼻水垂らしてハンカチ借りる女が、組長と色っぽい関係になったってのか?
クソ!
どっちにしろ俺は青木にゃ手を出せねぇ。
考えるだけで腹が立つ。
おまけに組長は車に乗る前に俺を見た。
俺がここで見てるのを知ってやがった。
見せつけやがって・・!
堀内はどうしようもない気持ちを持て余した。
組長先生が帰ったと同時に社長が配達から帰って来た。
帰ってくるなりティーテーブルの自分の席に乱暴に座った。
りんちゃんがこっそりと
「社長の機嫌の悪さは火星に届く勢いですね」
わたしに耳打ちした。
「仕方ないよ。車場荒らしにあったばかりだし。心の傷はなかなか消えないものさ。そっとしておこう。触らぬ神に祟りなしだよ。」
わたしはわかったふりで答え、支店用のお花をセロハンで包んでいた。
ああ、支店に戻りたい。
社長の機嫌の良し悪しに左右されない我が支店。
「青木」
「はい。何でしょうか社長」
社長の機嫌が悪いので、わたしはキリッと返事をした。隙を見せてはいけない。八つ当たりされるぞ。
「公休日明けから支店に戻っていいぞ」
「え、」
え?!
やったー!!
心の中でガッツポーズゥゥゥ!
「糸川も戻っていいぞ」
「え!?やったあぁぁぁーーー!!」
りんちゃんは嬉しさを最大限表現した。
恐れを知らない若さっていいなあ。
十代の輝きは飾りじゃないんだね。うらやましい。
「じゃあ本店はいまの支店組が勤務ですか?」
残される七十先輩が心配だ。
「そうだ。昔はこっちでも仕事をしてたし、山形とも面識があるしな」
「じゃあ、安心ですね」
「青木、お前そんなに支店が好きか?」
「もちろん!仕事中に揚げたてコロッケが食べれるなんて、支店でなくてはできないですから!」
「そうですよね。支店は天国ですよ。串カツもあるし」
二人で手を取り合って喜んでいると、社長はなんだかガックリとしていた。
あ、社長が大きなため息ついた。
「・・社長、大丈夫ですか?コーヒーいれましょうか?」
「・・・、ああ、頼む」
やはり社長は相当ダメージを受けてるんだな。
気の毒に・・。
盗まれたのはアダルトのエロDVDだけのはずだけど、もしやお宝エロDVDだったのかもしれない。
わたしは心底社長に同情していた。
まさか組長先生との関係を誤解されてたとは、ぜんぜんまるきりこれっぽっちも考えていなかったのだから。
その後も犯人が逮捕される気配はなく、当然エロDVDも戻って来ず、意気消沈している社長を見ながらわたしは公休日を迎えた。
公休日━━━
今日は松田さんのお庭でバラの選定をする。
『普段着でいいぞ。汚れるかもしれないからジャージでもいいしな』
言われた通り、わたしは普段着、ジーパンとTシャツだ。これなら仮に土いじりをして汚れても大丈夫だし。
玄関から自転車を出して空を見上げる。
青い空に太陽が輝いている。
晴天とはまさにこのこと!
絶好のバラ日和!
今日もいい日でありますようにと願いながら、わたしは組長先生のお屋敷へと自転車を走らせた。
組長先生は作務衣姿で出迎えてくれ、わたし達は若頭が運転する車で松田さんの洋館に向かった。
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