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95. 養子縁組
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お店にはすでにりんちゃんが出勤していた。
動く影でわかった。レジ開けしてるな。
「りんちゃんおはよう。早いねー」
と、わたしは声をかけながらドアを開けた。
「みーちゃん先輩!おはようございます!」
りんちゃんの元気な声に今日一日分の元気をもらう。
が、・・・りんちゃんはフリーズしてしまっている。
どうした?りんちゃん?!
「ベンツで出勤か。組長と仙道に送らせるとはいい身分じゃねえか青木」
社長が後ろから現れた。
朝から怪奇現象である。
わたしもフリーズした。
堀内花壇駅前通り支店はかつては本店だった。
というか、堀内花壇は元々駅前通りにしかなかった。
社長が継いでから、本店をいまの場所にかまえたのだと面接時に聞いた。
駅前商店街情報によると、堀内社長はいまの本店ができてから駅前商店街には一度も顔を出していないと聞いている。
その社長が何故?
何か企んでいるのか。怪しい。
うーん、考えようによっては、これ幸いか?
あさっての本店勤務日に話そうと思ったが、いま話そう。話は早い方がいい。
わたしは社長に「大事な話があります」と言った。
社長はレジカウンターの横の小さなテーブルセットを陣取り、わたしは社長の向かい側に座った。
りんちゃんがコーヒーの準備を始めている。
ごめんよ、りんちゃん。開店準備の忙しい時間に。
「大事な話って・・まさかお前組長と・・」
「・・え?知ってたんですか?」
誰から聞いたんだろ?養子縁組。
「本気なのか?」
・・・。睨んでるよ、社長。
「はい」
社長なんかに負けるもんか!
「よく考えたのか」
真面目に怖い顔してる。
よーし、わたしも真面目に睨み返してやれ!
「はい。お断りしようとも思ったんですが、いろいろアドバイスもあってお受けすることにしました」
わたしはキッと睨み返した。
渾身の睨みだ!どうだ!
「・・・そうか・・」
社長はわたしから目を反らして溜め息をついた。
やった!勝った!勝ったぞ!
青木みふゆ社長に勝利ーーーっ!
くす玉を割れーー!ひゅーひゅーー!!
「40近い歳の差の夫婦になるんだぞ。本当に将来のことも考えたのか」
まだグタグダ言うのか。
いや、待て。いまなんて言った?なんの話だ。
「待ってください。なんの話ですか?」
「組長と結婚するんだろう?」
社長はバカ。
「養子・・縁組?」
「はい」
話を元に戻した。
「お前と組長が?」
「はい」
社長は信じられないという様子である。
りんちゃんもびっくりしている。目がまん丸になっている。
「・・・・・まあ、組長は最初からお前をずいぶん気に入ってたからな・・・ほんとにただの養子縁組なのか?」
「と、申しますと?」
まだ疑う気か。
「養子縁組に見せかけて愛人なんじゃ」
「社長」
わたしは社長のセリフを遮りおもむろに立ち上がった。
「いれたての熱いコーヒーを頭からかけられるのと椅子で頭をぶん殴られるのとどっちがいいですか?」
いちおう希望は聞く。
「どっちも嫌に決まってるだろうが。何言ってんだお前は」
「じゃあ両方いきますね」
わたしは左手に熱いコーヒー、右手で椅子をつかみ攻撃体制に入った。
「わかったわかった!待て待て待て!俺が悪かったって!」
「━━━━━」
謝ったので許してやろう。
「しかし、お前が組長の養子にねぇ・・」
「はい。なにか縁があったのだと思います」
わたしが答えると、社長は少し黙ったままでコーヒーを飲んだ。
そのまま椅子の背にもたれ、カップを置いて腕組みをすると、
「・・・いい親子になれそうか・・?」
と聞いてきた。
わたしは正直に答えた。
「・・はい。そうなりたいと思っています。家族に憧れてたし、普通に親孝行できればなって・・。わたしは父も母も早くに亡くしてますし・・・」
「ならいいんじゃねえか?」
「え?」
「手続き完了したら教えてくれ。公的な書類を出してもらうことになると思うから、細かいことはこっちも会計事務所の津田に頼むからな」
「はい。わかりました。よろしくお願いします」
意外なことに社長はすんなりと納得してくれ、本店に帰っていった。
よかった。もめないですんだ。
これで一安心かな、と思っていた。
商店街にアナウンスが流れた。
《大雨注意報発令のため、テレビ、またはラジオをつけて、情報に注意するようにしてください》
スクランブル交差点の大型スクリーンが、大雨情報と避難場所の情報を流し始めた。
県内の一部町村に避難指示(※)が出ている。
(※2021年5月に避難勧告は廃止となっている。)
隣県では川が氾濫、洪水が発生していた。
お店にはすでにりんちゃんが出勤していた。
動く影でわかった。レジ開けしてるな。
「りんちゃんおはよう。早いねー」
と、わたしは声をかけながらドアを開けた。
「みーちゃん先輩!おはようございます!」
りんちゃんの元気な声に今日一日分の元気をもらう。
が、・・・りんちゃんはフリーズしてしまっている。
どうした?りんちゃん?!
「ベンツで出勤か。組長と仙道に送らせるとはいい身分じゃねえか青木」
社長が後ろから現れた。
朝から怪奇現象である。
わたしもフリーズした。
堀内花壇駅前通り支店はかつては本店だった。
というか、堀内花壇は元々駅前通りにしかなかった。
社長が継いでから、本店をいまの場所にかまえたのだと面接時に聞いた。
駅前商店街情報によると、堀内社長はいまの本店ができてから駅前商店街には一度も顔を出していないと聞いている。
その社長が何故?
何か企んでいるのか。怪しい。
うーん、考えようによっては、これ幸いか?
あさっての本店勤務日に話そうと思ったが、いま話そう。話は早い方がいい。
わたしは社長に「大事な話があります」と言った。
社長はレジカウンターの横の小さなテーブルセットを陣取り、わたしは社長の向かい側に座った。
りんちゃんがコーヒーの準備を始めている。
ごめんよ、りんちゃん。開店準備の忙しい時間に。
「大事な話って・・まさかお前組長と・・」
「・・え?知ってたんですか?」
誰から聞いたんだろ?養子縁組。
「本気なのか?」
・・・。睨んでるよ、社長。
「はい」
社長なんかに負けるもんか!
「よく考えたのか」
真面目に怖い顔してる。
よーし、わたしも真面目に睨み返してやれ!
「はい。お断りしようとも思ったんですが、いろいろアドバイスもあってお受けすることにしました」
わたしはキッと睨み返した。
渾身の睨みだ!どうだ!
「・・・そうか・・」
社長はわたしから目を反らして溜め息をついた。
やった!勝った!勝ったぞ!
青木みふゆ社長に勝利ーーーっ!
くす玉を割れーー!ひゅーひゅーー!!
「40近い歳の差の夫婦になるんだぞ。本当に将来のことも考えたのか」
まだグタグダ言うのか。
いや、待て。いまなんて言った?なんの話だ。
「待ってください。なんの話ですか?」
「組長と結婚するんだろう?」
社長はバカ。
「養子・・縁組?」
「はい」
話を元に戻した。
「お前と組長が?」
「はい」
社長は信じられないという様子である。
りんちゃんもびっくりしている。目がまん丸になっている。
「・・・・・まあ、組長は最初からお前をずいぶん気に入ってたからな・・・ほんとにただの養子縁組なのか?」
「と、申しますと?」
まだ疑う気か。
「養子縁組に見せかけて愛人なんじゃ」
「社長」
わたしは社長のセリフを遮りおもむろに立ち上がった。
「いれたての熱いコーヒーを頭からかけられるのと椅子で頭をぶん殴られるのとどっちがいいですか?」
いちおう希望は聞く。
「どっちも嫌に決まってるだろうが。何言ってんだお前は」
「じゃあ両方いきますね」
わたしは左手に熱いコーヒー、右手で椅子をつかみ攻撃体制に入った。
「わかったわかった!待て待て待て!俺が悪かったって!」
「━━━━━」
謝ったので許してやろう。
「しかし、お前が組長の養子にねぇ・・」
「はい。なにか縁があったのだと思います」
わたしが答えると、社長は少し黙ったままでコーヒーを飲んだ。
そのまま椅子の背にもたれ、カップを置いて腕組みをすると、
「・・・いい親子になれそうか・・?」
と聞いてきた。
わたしは正直に答えた。
「・・はい。そうなりたいと思っています。家族に憧れてたし、普通に親孝行できればなって・・。わたしは父も母も早くに亡くしてますし・・・」
「ならいいんじゃねえか?」
「え?」
「手続き完了したら教えてくれ。公的な書類を出してもらうことになると思うから、細かいことはこっちも会計事務所の津田に頼むからな」
「はい。わかりました。よろしくお願いします」
意外なことに社長はすんなりと納得してくれ、本店に帰っていった。
よかった。もめないですんだ。
これで一安心かな、と思っていた。
商店街にアナウンスが流れた。
《大雨注意報発令のため、テレビ、またはラジオをつけて、情報に注意するようにしてください》
スクランブル交差点の大型スクリーンが、大雨情報と避難場所の情報を流し始めた。
県内の一部町村に避難指示(※)が出ている。
(※2021年5月に避難勧告は廃止となっている。)
隣県では川が氾濫、洪水が発生していた。
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