【本編完結】繚乱ロンド

由宇ノ木

文字の大きさ
98 / 278

98. 狙われた支店 (1)

しおりを挟む
.




ドーン、バリバリバリッ!!

と雷が鳴り響く。

「ぎゃあああぁぁぁぁっ!!!」

と、りんちゃんが雄叫おたけびをあげる。



雷が鳴り出して、外も店内も物凄い状況になってしまった。
雷と雄叫びのコンボ。

雨もますます強まっている。
ここまでの大雨になるとは予想していなかった。

「みーちゃん先輩ぃ~~~っっ」
涙目のりんちゃんは顔を強ばらせしがみついてくる。
「りんちゃん、大丈夫だよ。ここには絶対落ちないから」
一人暮らしが長いせいか、雷は意外と平気だ。
怖くないと言えば嘘になるが、怖くないのだ。
「りんちゃん、お家に一応連絡を・・」

ピカッ!
ドオーンンッ!!

「いやあああぁぁぁっ!地球が終わるぅぅぅっ!」

レジのなかにしゃがみこんでりんちゃんは叫ぶ。

「終わらないから大丈夫。ピカ-チュウだと思えば雷もかわいいもんだよ」

「雷操るピカ-チュウなんか悪魔の使いですぅぅぅぅぅ!!」

りんちゃんにはピカ-チュウのかわいさが効かない。
効かないどころか悪魔の使いにされてしまった。残念である。
かわいそうなピカ-チュウ。
・・・ピカ-チュウなら小悪魔でもいいかもしれない。違うかわいさがきっとある。ラブリーだ。

「みーちゃん先輩は雷怖くないんですか?!」
「怖くない!!」
「嘘です!雷怖くない人間なんかいないです!そんな人間存在しちゃいけないんです!!!」
「・・・」
りんちゃんは怖さのあまり、わたしまで雷恐怖症に引きずり込もうとしている。
「みーちゃん先輩!雷怖いですよね?ね?ね?ね!?!」
「りんちゃん、落ち着いてテレビを見よう。何かで気を紛らわせ」
ピカッ!ドオォォォーーン!
「ピャアアアァァァーーーッ!!」
「・・・」
もはや『きゃー』でも『ぎゃー』でもない。
独自の叫びを生み出したな、りんちゃん。


店内設置の小型テレビでは、地元の気象情報番組が市内の河川沿いの地域で高齢者避難指示が出たことを知らせている。

中心街に影響のある河川は工事中だった堤防が完成しているので、十年前のように溢れたりしないと思うが不安になる。

わたしもりんちゃんもこんなに凄い大雨の経験はない。おまけに雷まで鳴るなんて。

十年ほど前の水害時は、わたしは家族で海外を転々としていたし、りんちゃんはまだ小学生で東京に住んでいた。

十年前は正しい情報の把握ができず、商品を二、三階に移動できなかった。地盤が低いせいと満潮も重なり、水の流れは早く、水位も高かった。一階で営業していた店舗は全て水没した。
人的被害がなかったのは奇跡と言われた。

その後商店街では、行政からの情報を正確に伝える為に、防災行政無線を商店街放送設備に接続し、各店舗のスピーカーに流れるようにしている。
Wi-Fiの設置も行われ、ネット接続もスムーズにできる。
各店舗、独自に情報収集できるようにテレビ・ラジオやパソコン、タブレットなど置いている。

スクランブル交差点の大型スクリーンでも、大雨の情報と避難場所についての情報が常時流され、大雨と雷に足止めされている人々が見ている。

駅前商店街では店を開店させず、土嚢の準備をしている店がちらほら出始めた。

我が堀内花壇でも、社長から土嚢の場所を教えてもらい準備した。

『今すぐ店を閉めていい。移動出来そうなら避難場所に行け。移動が危険そうなら金も商品もどうでもいいから三階に行け。定期的に掃除してるのは知ってるだろう?うす暗いが住居として使用可能だ。食品と水は確保してあるし生活必需品も寝具類も揃えてある』と社長から早々に電話がきた。

確かに暗いのだ。
清掃業者が入ったあと、確認で立ち会うが、両隣は地権者が変わり、二階建ての店舗兼住宅だったのが、五階と七階のビルに建て替えられた為、窓の外はビルの壁しか見えない。

灯りをつければ良いのだが、閉塞感がある。
三階に二人きりになってしまうのも心細い。
わたし達は店で過ごすことにした。

避難場所は五階建ての駅前市民プラザという建物だが、雷がひどくていまは移動するほうが危ない。雷がおさまったら移動しようかと話し合った。
テレビでは早めに避難をしてきた住人のインタビューが放送されていたが、雷と雨音で聞こえづらい。

「みーちゃん先輩ぃ・・」
りんちゃんは叫びすぎて疲れきっているようだ。わたしを呼ぶ声に張りがない。
雷が光り、ドオーンッと鳴り響いてりんちゃんはわたしに飛びついて震えている。
「みーちゃん先輩ぃ・・。雨も雷もさっきよりひどくなってきてませんか・・・?」
この世の終わりのような声だよ、りんちゃん。
「大丈夫だよ。ここには絶対落ちないって。雨は強いけど、川にはもう堤防が完成してるし、十年前も被害は一階だけで二階より上は大丈夫だったって聞いてる。いざとなったら社長の言う通り上に逃げよう。お家に連絡はした?」
確かに雷も雨も酷くなってきてるとわたしも感じていた。
「はい、さっき・・。お兄ちゃんが来てくれると言ったんですが、危ないからやめさせました。お兄ちゃん運転下手くそだから・・」
りんちゃんは鼻をグスグスさせている。
お兄ちゃんの心配をして来るのをやめさせたりんちゃん。ほんとは来てほしいだろうに。
せめてわたしがもっとしっかりして、りんちゃんを守らなければ。
「大丈夫大丈夫。コーヒーいれよう。お客さんはさすがにもう来ないと思うから」
「みーちゃん先輩は会長さんに電話は・・」
「うん。状況が悪化するとは限らないから、もう少し様子を見てから電話する。管理してる山とか土地のことで忙しくしてたら悪いし・・」
まだ洪水が起きるとは限らないし、下手に電話して心配させたら悪い。

話してる間も雷は鳴り続け、雨音は強くなる。

商店街通りは誰も歩いていない。

車が通るだけだ。

あれ?ガラス窓の前を人が走ってった。

こんな日に外を走るなんて物好きな人だ。

走って行ったかと思った人が店のドアを開けて入ってきた。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処理中です...