王子さまは二人いる

鳴澤うた

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満月の中での変身!

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 目の前にアリナ姉さんがいた。いつの間に?

「ブラインド閉めて! 早く!」
「えっ? う、うん」
 
 慌てているせいか、うまく閉まらない。紐がガッチリ固定されてしまってる。
 そのうちアリナ姉さんは、頭を抑え込んだまましゃがんでしまった。

「大丈夫ですか、アリナ姉さん!」
 
 どうしよう、ブラインドが開いているせいで、アリナ姉さんが具合を悪くしてしまった。

「だ、誰か! お父さん! シオンくん! レフくん! 来て!」
「莉緒? アリナ!」
 
 真っ先にきたのはお父さん。次にシオンくんとレフくんだった。
 
 わたしの部屋に入って、三人ともビックリした顔になって、アリナ姉さんのようにうずくまってしまった。

「えっ? どうして?」
「……月! 満月! 早くブラインドを下ろして!」
 
 レフくんが叫ぶ。
 けれど――うずくまっていたお父さんが、立ち上がった。

「いや、いい。いい機会だろう……。莉緒に『一族の血』のことを話すのに、満月のときがわかりやすい」
「パパ……」
「父さん」
 
 お父さんの言葉に従うよ、というようにアリナ姉さん、シオンくん、レフくんがゆっくりと立ち上がった。
 
 そして、そろりとエミルくんとレナちゃんもやってくる。
 
 お父さんたちは、真っすぐわたしを見つめて、言った。

「シオンから少し話を聞いたようだから……。驚くと思うけれど、これがヴォルグ家の『一族の血』なんだ」
 
 満月の光が部屋を、お父さんたちを照らす。
 柔らかくて温かい光に照らされたお父さんたちの体が――変化しだした。
 
 鼻が長くなって、全身から毛が伸びてくる。
 四つん這いになったかと思ったら、着ていた服が裂けて、床に落ちていく。
 その間にも毛が伸びて、顔立ちが変わっていった。
 
 写真やネットで見たことがある――狼だ。

「狼……?」
 
 でも、狼の姿になったのはお父さんとシオンくん。
 それとエミルくんとレナちゃん。
 アリナ姉さんとレフくんは、耳と尻尾が生えただけ。

「これが……『一族の血』……なんですか?」

「莉緒、私たちヴォルグ家の者は『狼男』の血を引いているんだ」
 
 お父さんが静かにわたしに告げた。




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