志学の青春

八手 嵐佞

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夕焼け

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 「美味しかったね。」鶴川さんは口を紙で拭きながら言った。
「うん。また、来たいなぁ。」僕も満足気な顔してそう言った。
「じゃあ、また来る?」
「えっ?」目を丸くして鶴川さんを見た。
「一緒に行こうよ、今度。」鶴川さんは至って真顔。
「…うん。」僕は少ししてこう言った。
「約束ね。」鶴川さんは席を立った。僕も遅れて立つ。
「会計は僕が。」ここでも格好つけようと財布を出した。
しかし、「今度だしてよ。今回は私も払うから。」と流された。

 外は一層暗くなっていた。
「じゃあ、帰る?」僕は鶴川さんを見た。しかし、返事はない。
「まだいる?」もう一度聞いた。鶴川さんは顔を赤らめ頷いた。夕日の反射だからだろう。そう見えた。

 知らない人たちが住む知らない街の夕方。その疎外感がより強く二人の距離を近づけているように感じている。

 「どこ行く?」宛もなく歩きながら聞いた。
「すぐ近くの土手に行きたい。景色きれいだから。」そう言って左を指差した。
 その先には緑の壁のようなものが遠くに見えた。あっ、あれか。僕たちはその方へ歩きはじめた。
「さっき、景色が綺麗と言ってなかった?」
「うん、夕方のこの時間帯が一番綺麗。」

 土手の上に着いた。目の前には幅の広い川が流れていた。その川は偶然にもと言うらしい。
 西を向くと夕日が見えた。その夕日が目下を流れる鶴川に乱反射しキラキラと目に入る。さらに、そのだいだいの光は優しくべられた炎のようにも見え、幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「綺麗だ。」僕は思わず口にした。
「でしょ。」鶴川さんは陶然とした声で答えた。
 東を向くとさらに驚かされた。そこに在ったのは夜の世界だった。ずっと見つめていると引き込まれそうだ。
 光と闇の狭間に佇む二人は、それを前にしては僕ら二人は存在しないのも同然のようだった。僕は何か軽くなる感じがした。

 17時半を過ぎた。僕たちは急いで駅へ向かう。
 ちょうど、戻りの電車が到着したので乗り込んだ。二両編成の車内は寂しいかな、僕たちしかいなかった。M市はそんな街なのだと再び痛感した。
 ドア近くの二人席に腰掛けた。僕は通路側、鶴川さんは窓側に座っている。窓からはさっきまで見ていた夕日はまだ全体を見せていた。
「まだまだ、明るいね。」僕は黄身のような夕日を見つめていた。 
「ほんとだね。あっちに着いても明るいんじゃない?」
「きっとそうだよ。」僕たちは人気のない静かな空間を哀愁を剥き出しにして会話を続けた。
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