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第2章 さて、こうして町に僕は向かい、彼女達と出会う

94、呪い

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 どうやら女神様が何かを教えてくれたらしい。
 でも僕としては、

「もう少し手伝ってくれてもいいような気もする」

 と呟くと狐耳の長に笑われてしまった。
 
「女神様は我々人の手でできる事にはあまり干渉しないようですよ。もっとも、最近は“げーむ”とやらに夢中なようですが」

 そういえば新作ゲームがといっていた気がする。
 こんな適当でいいのかなと思っているとそこで、犬耳の小さな子供が一人やってきて、

「この人が、そう?」
「ええ、そうですよ。女神様の客人です」
「この人なら、リリをどうにかできるのですか?」
「そうですよ」
「そうすれば、アン姉ちゃんも帰ってくるかな」
「帰ってきますよ。……だからリリの傍にいてあげてくださいね」
「分かった……」

 といった会話をして、子供は去っていく。
 どういうことなのだろう、僕に何の関係があるのだろう、そう僕が思っていると狐耳の長が、

「どうしましょうか。どこからはなしましょうか」

 困ったようにつぶやくのを聞きながら僕は、

「リリをどうにかできる、とはどういうことなのでしょうか?」
「ええ。実はその、アンの妹であるリリが、たまたまその……“呪い”のかかった道具に触れてしまったらしく、倒れてしまったのです」
「……え?」
「それを解除するために、宝珠を求めてどうやらアンは“魔物使い”と手を組んでしまったようなのです。我々ではお恥ずかしながら解除できませんでしたから」
「それが、僕では解除できると?」
「そう女神様から聞いております。“青の眠りを妨げる風”といった魔法だそうです」
「……分かりました。先に癒しましょう」
「事情の説明などを先にしなくてもよろしいのですか?」

 驚いたように狐耳の長が言って、どうして驚かれるのか僕には分からなかったけれど、

「少しでも苦しむ時間が短い方がいいと思います。僕に出来る事でそうなるならば、そうしたい」

 僕はそう答えたのだった。
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