公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優

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117話

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  「馬車、用意してくれてありがとう」

   「伝えずに進めて悪かった」
   
   「ううん。大丈夫!」

   「俺、念の為確認してくるから、ティアナとフィーネはここで待っていて」

    「分かった。気をつけて行ってきてね」

リアムはステラを引き連れて、木陰からこちらを伺っている男性に近づいて行った。何やら2人は少し話をしていた。話が終わると、リアムは大きく手を振り私たちを招いた。

  「こちらが、今回馬車を引いてくれるハジンだ」

リアムは、初対面の私たちに紹介してくれた。ハジンと紹介された男性は、おどおどしながらも体型は騎士のように体格が大きい。これが、いわゆるギャップなのだろうか。

   「安全運転で送らせて頂きます」

 安全がわかると御者に馬車まで案内してもらい、城壁より少し離れたところに馬車がとめられていた。
公爵家付近に馬車を停めるとなると、見張りの騎士に怪しまれてしまうからだろう。

 馬車の外見は、アステールけが所有している馬車とは違い、豪華さはないが頑丈な資材でら作られているようだった。内見は、座り心地もよく長時間乗っても痛くならない柔らかい素材の椅子であった。

   「それでは、出発致します」

 その号令と共に、私たちは内緒のお出かけが始まった。

  「わぁー!」

馬車に揺られ少し時間が経つと、アステール領から出て自然豊かな土地になった。窓を開け乗り出すと、爽やかな風が上半身を覆った。とても落ち着く香りであり、一面に広がる菜の花畑は、黄色い絨毯のようだった。風に揺れる花びらが美しいと感じた。

 窓から身を乗り出して、身体で自然を満喫しているとステラが割って入るように身を乗り出した。

 これ、なんだか既視感があるな。
あ、これ、あれだ。車の窓から身を乗り出してベロを出している犬だ。ステラは、フェンリルというよりも超大型犬って感じだもんね。

   「風気持ちいいね!」

   「あぁ!」

 風の音で掻き消されてしまうため、大きな声を出してステラ会話した。

   「ティアナ、あんまり外に乗り出すと危ないぞ」

   「だねー」
 
 風を満喫したところで、私とステラは再び席に着いた。暴風を直に当たっていたため、ステラの毛並みが乱れていた。当然私も。

   「ティアナも、ステラも楽しそうな姿になっているな」

   「えへへ」

 フィーネ、心優しく微笑んでいる。私の隣に座っている、フィーネが私の乱れている髪を優しい手つきで直してくれた。ステラのことをリアムが直そうとしたが、自分でやると言って拒んた。

 「皆様、到着致しました」

御者が、馬車を道端に寄せて停車した。馬車の扉を開けると、先にリアムが外へ出た。その流れで、リアムは私に手を差し出した。

  「ありがとう」

 リアムは、高位貴族の令息なため礼儀もなっている。エスコートされるのも初めは驚いたが、今はもう慣れたものだ。

全員が、馬車から降りると馬車は来た道を戻って行った。

  「馬車帰っちゃうよ?」

 「行きと帰りで違う馬車を使用しようと思っているから大丈夫だ」

  「用意周到だね」

 ティアナは、走り去る馬車を見送っていると、リアムは「危ないから」と言い、手を繋いだ。リアムは照れくさそうにして、前を向いている。

   「そうだね」

 私は、少し面白かったがリアムを小馬鹿するような発言はしなかった。夕方から夜にかけて行われる闇オークションは、今から行くのにはまだ時間が早かった。昼食を食べてからすぐに公爵邸を抜けたため、まだ陽が照りつけている。

  「あ、そうだステラ。ちょっと小さくなってくれない?ぬいぐるみになってっていう訳じゃないけど、子犬のように振舞って貰ってもいいかな」

  「我は別にこのままでもいいが」

 ステラは、自信満々にティアナの周りをぐるぐると回っている。

  「色々と、目立ったら大変だしね、念の為、念の為」

 私は、ステラの機嫌を損ねないように優しくステラを撫でながら目立たないようにして欲しいことを伝えた、

  「我は、高貴な存在だしな。仕方がない」

 すぐに納得すると、ステラは小さな子犬サイズになった。か弱そうな小さな可愛い犬。

 「ティアナと、リアムの外見は高位貴族そのものだから、少し細工した方がいい。少し加える」

 フィーネは、私たちの外見を左右に見ながら魔法を加えた。すると、一瞬のうちにリアムの見た目が変わった。

  「髪の毛の色、紫なってるよ!すごい、服も変わってる!」

リアムの髪の毛は、ピンク色から薄い紫の髪になった。服装も、貴族特有の衣装ではなく、街の子供の姿になった。

  「ティアナもな」

 私は、自分の艶のある長い髪を両手で持った。

  「金髪だ!すごい、すごいよ!ありがとうフィーネ」  

 私は、嬉しさのあまりくるくると回りながら自分の姿に喜んだ。

   「よし、準備完了だな。まだ時間もあるし市場でも回ろうか」

  「え、行きたい!」

 私は、初めて来る領地に興奮が抑えられなかった。リアムの提案にすぐに乗り、栄えている市場に向かった。

 領地に来る途中で見た、自然豊かな風景と比べて、辺りを見渡すと帝都に劣らないぐらいの賑わいのある領地であった。

 闇オークションを開くにあたって、閑散している街では誰かしらに不審に思われてしまう。リアムから高価な物も取引されるって聞いたから、きっと貴族や裕福な平民が来るはず。人の多い街だから、いい衣を着ていてもその場に馴染むのだろう。

 ティアナは、行き交う人の服装や特徴を見ながらオークションについてのことを考えていた。

 
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