童貞魔法使い 異世界へ

ミノル

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現代編

守ると決めたから

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 家の前で泣き崩れる娘を抱きしめ落ちつかせる。

 落ちついた頃、異変に気付く。

「消防車が来ない。」

 この事から全てを理解するまでそう時間は、かからなかった。

「あのクソボンクラ社長の仕業か……。」

 プチッ

 頭の中で何かが弾けた。
 我慢の限界だ。

 俺は、直ぐに消費者金融から借りられるだけのお金を借り、娘をホテルへ連れて行く。
 泣き疲れたのかもう寝ている。

「もう、安心だ。父さんが必ずお前を守るからな。」

 それだけ言って、ホテルを後にした。

 ホームセンターから空きビン、布、携行缶を複数買い、全てにガソリンを入れ社長宅へ向かった。

 社長の家は、3階建てのビルを買い取ったと聞いていた。

 真夜中だと言うのに、そのビルだけが明るくどんちゃん騒ぎしているようだ。
 どうやら、一階と庭で機嫌良く、金をばらまくボンクラ社長とそれを這いつくばって拾う従業員達が何か祝杯を上げてる声が聞こえる。

「バカなヤツですよね~。」
「がっちゅ、あんたぁけ死んで良かたっが。」
「家ごと燃やしてやった時は、最高の気分だったぜ。」
「ひぃ~!」
「ギャハハハハ」

 俺は、至って冷静だ。

「やられっぱなしのお前が悪い。」

 そう呟いた俺は、ビルの回りにガソリンを撒き散らす。

 俺は、魔法使いなんだ!

「喰らえ、ファイヤーボール!」

 前もって作って置いた火炎ビンに火を付け、ビルに投げつける。
 それに驚いた化け物どもがその場から逃げ出そうとする。

「逃がす分けねーだろうが!! ファイヤーフレーム!」

 撒き散らしたガソリンに火を付け、逃げ場を無くす。
 その間も攻撃の手を緩めたりしない。
 ありったけの火炎ビンを投げ続ける。

 頭の中でアナウンスが流れる。

大量の経験値を獲得しました。 レベルアップしました。

 そんな事を気にする余裕が俺にはない。
 暇なく火炎ビンを投げ続け、火炎ビンがなくなった頃ボロボロのボンクラ社長が人を踏み台にして炎の中から這い出して来た。

「一体、何なんだ。訳がわからない。 僕は偉いんだぞ。 誰か助けろ。」

 俺は、社長の目の前に立ち塞がる。

「ひ、ひぃ~や~。 止めろ殺さないでくれ。」 

「お前がやったことを許せる訳がない。 だが、娘に誠心誠意謝るなら殺さないでやる。」

「わかった。 謝る。 謝る。 あやまる訳ねーだろーが! レゴブロックの分際で調子に乗ってんじゃね~!」

 社長は、隠し持っていた包丁を取り出し俺を刺した。
 刺したはずだった。

「ば、ば、化物~。」

 包丁が折れ、俺の体には傷ひとつ付かなかった。

「お前何てパパが……。」
「死ね。」

 虫けらを踏み潰す。

経験値を獲得しました。 レベルアップしました。

 脳内にアナウンスが流れる。
 しかし、そんな事を気に出来るような精神状態では、ない。
 返り血を浴び、自分の炎により服は焼け涙が流れる。

「復讐、何て悲しいだけなんだな……。」

 娘を守るためではあったが、それだけじゃなく、自分の復讐をする為に娘を利用したんじゃないかと、そう思えて心がバラバラなりそうになる。

 ボロボロの状態で娘の待つホテルへ帰る。
 疲れきった心と体のせいか、部屋の入口で倒れ気を失った。


 朝、目を覚ますと俺は、パンツ一枚ベッドの上で寝ていた。
 今まで感じた事のない、柔らかい物が体に当たるので横を見ると、裸の娘が俺に抱き付いていた。

 状況を理解出来ないが、起こさないよう素早く離れようとするが、強く絡み合ってる為、なかなか離れない。
 童貞の理性は、崩壊寸前だ。
 あたふたしていると、娘が起きてしまった。

「おはよう! 部屋の入口で人が倒れる音がしてびっくりしたよ。 ボロボロの水無月さんが倒れてるんだもん。」

 どうやら、娘が汚れた服を脱がしてベッドまで運んでくれたらしい。
 しかし、なぜ、娘まで裸なんだ。

「ありがとう。 でもどうして、メイまで裸なんだ?」

「……?!」

 俺に言われてようやく、今の状況に気付いて恥ずかしそうに毛布にくるまる。

「水無月さんがうなされて震えてたから……。」

 顔を真っ赤にして言う娘は、目を合わせなくなっていた。

 バラバラになりそうになってた心が癒されていく。
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