捨てられた魔法道具師は天才だった。究極の道具で国を救いますよ?

みなわなみ

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番外編 母イリス

イリスの後悔 2

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 街中で少しずつ用事を済ませ、最後に出かけるのが、魔道具店。

「ここね」

 街の一等地にある大きなリヒトの魔道具の店です。
 中に入って、一つずつ見て回りました。

(どれも生活を便利にするもの…。アベル様やカイは考えもつかないでしょうね)

 生活をする中でどんな作業があるのか、それが分からないと作れない品ばかりです。


「オーナー!お待ちしておりました!」

 ふいに若い男性の声がしました。
 見ると小さな女の子を連れ、赤ちゃんを抱いた女性が入口にいます。

「オーナーはやめてって言ってるでしょ」
「失礼いたしました。奥様」

 私は、その女性に手を引かれている小さな女の子に目が釘付けになりました。

(リヒト…)

 髪の毛の色こそ違うものの、巻き毛の様子や顔つきが小さい頃のリヒトにそっくりなのです。

(じゃぁ、この人がリヒトの…)

 リヒトを助けた村は「始まりの村」と呼ばれるようになり、リヒトはそこで家庭を持ったようです。

ほがらかな女性ね)

 奥様と呼ばれた女性は、それはそれはコロコロとよく笑います。

(あのような方が我が家にいてくれたら、少しは気が明るくなるかしら)

 明るい笑い声を聞くと、我が家との違いに複雑な気分になりました。

(早く買って帰ろう… でも、いろいろあるのね。どれがいいのかしら…)

「これはね、こうやったらつくのよ。こっちはね、こうやったら、ほら~」

 悩んでいると、リヒトに似た女の子が近づいてきて実演をしてくれます。
 女の子がレバーを動かすと、ランタンが明るくなったり暗くなったり…

(へぇ、便利そうね)

 続けて、
「こっちは…」
  と女の子が手を伸ばしたところに、女性の声が飛んできました。

「リノ!お店のものを勝手に触ったらダメ!」

 母親に叱られて、女の子がシュンとします。

「叱らないでください。私が迷っているのを助けてくれたのです」

 私がそう言うと、店員が飛んできて説明しようとしました。

「いえ、お嬢ちゃんの説明がとてもお上手でしたの。続けて教えてもらっていいかしら」

 私の言葉を聞いた、少女の顔がパァァっと明るくなりました。

「ママ、いい?」

 ちゃんとお母さんに許可を取って、次の製品に女の子は手を伸ばします。

「こっちは、ここをこう回すの」

  と、小さな手がつまみを回すと明かりは一点を照らしたり、周りに拡がったり…

「どれも便利そうね…どうしましょう…迷ってしまうわ」
「みんなパパが作ったのよ! パパが『迷ったときにはこれ!』って、言ってました!」
「リノ!」

 ドヤ顔をする女の子リノちゃんを、おかあさんがたしなめます。

「申し訳ありません。おせっかいで…」

 若い女性が赤ちゃんを抱いたまま、頭を下げます。

「いえ、私も初めてなので、本当にわかりやすかったです。お気になさらず。…こちらが使いやすいのですね?」

 オーナーとも呼ばれた奥様に確認をします。

「はい。リヒトが最初に作って、だれでも使えるように改良を重ねてきたものです」
「そう。では、こちらをください」
「ありがとうございます」
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