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番外編 母イリス
イリスの後悔 6
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面接はうまくいき、その日から、私は、家庭教師として働き始めました。
大きな商会も営んでいるリード子爵のお嬢様のリゼッタ様。
近頃、男爵から子爵に上がったばかりのため、お母様は平民で、ご友人も下位貴族や平民の方が多く、なかなかマナーや歴史などが身につかないと困っておられました。
でも、実用的な知識はこちらも驚くほど。
(これは、領地経営のサポートには生きるはず)
それらを中心に教え始めると、みるみるうちにリゼッタ様は素晴らしい淑女に育っていきます。
リゼッタ様と私の教え方の相性も良かったのでしょう。
お嬢様の変わりように驚いたご友人たちが、「私も教えてほしい」と声を上げたようで、家庭教師の仕事が順調に増えました。
お嬢様方の小さな弟妹にも教えるようになりました。
幼い方々の瞳が、知識を求める輝きを宿しているのを見るたび、私の心に温かい光が灯ります。
私は、子どもたちを守ることができなかったけれど、今からでも、この小さな輝きを育て、誰かの未来を照らすことはできるでしょうか…。
家に帰りついたら、まず小さなランタンを灯すのが日課になりました。
その柔らかな光が、私の心に明日への希望を灯してくれるのです。
(カイも好物には目を向けてくれたし…明日も頑張りましょう)
義父も夫も相変わらずですが、カイに差し入れできるくらいの余裕ができました。
◆◆◆
ある日、最初に雇ってくださったリード子爵さまから、お声がかかりました。
「お呼びでございますか?」
「あぁ、先生! まずはお礼を。リゼッタがハーグリーブ伯爵家の嫡男に見初められました」
「それは、おめでとうございます」
「知人の伯爵家の養女にして嫁がせるつもりです」
「それがようございますね」
(貴族には立場の優越感でしかものを見ない人も多いもの。以前のアルバス家のように…)
「リゼッタは、再来月には、あちらの家に越すことになりまして…。あ、とは言っても、ここから近いタウンハウスです」
これでおしまいかしら…と、何も言えずにおりましたら、子爵さまがこう続けられました。
「あちらのお家に行っても、娘の家庭教師を続けていただきたいことと、もう一つ、あちらにも小さな娘さんがおりましてな」
「はい」
「むこうの奥様が、『ぜひ、うちの娘の家庭教師も』と仰っている」
「ありがたいことでございますわ」
「領地にいることが多いゆえ、飛び飛びになるかもしれんが…、あなたならうまくやるでしょう」
「承知いたしました」
「旦那様、ザックが参っております」
話が終わるのを見計らって、執事が声をかけます。
子爵さまが「今行く」と返事されたあとに私に向き直り、再び頭を下げられました。
「本当に本当にありがとうございます。何もかも先生のおかげです」
「お嬢様の努力が素晴らしかっただけですわ」
「いえ、見事なお導きでした。改めてお礼をさせていただきます。では」
リード子爵さまの後ろ姿に、私も頭を下げます。
本来なら出会わなかった関係…身分については何も言及せず、ただ私を褒めてくださったことがありがたいのです。
大きな商会も営んでいるリード子爵のお嬢様のリゼッタ様。
近頃、男爵から子爵に上がったばかりのため、お母様は平民で、ご友人も下位貴族や平民の方が多く、なかなかマナーや歴史などが身につかないと困っておられました。
でも、実用的な知識はこちらも驚くほど。
(これは、領地経営のサポートには生きるはず)
それらを中心に教え始めると、みるみるうちにリゼッタ様は素晴らしい淑女に育っていきます。
リゼッタ様と私の教え方の相性も良かったのでしょう。
お嬢様の変わりように驚いたご友人たちが、「私も教えてほしい」と声を上げたようで、家庭教師の仕事が順調に増えました。
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私は、子どもたちを守ることができなかったけれど、今からでも、この小さな輝きを育て、誰かの未来を照らすことはできるでしょうか…。
家に帰りついたら、まず小さなランタンを灯すのが日課になりました。
その柔らかな光が、私の心に明日への希望を灯してくれるのです。
(カイも好物には目を向けてくれたし…明日も頑張りましょう)
義父も夫も相変わらずですが、カイに差し入れできるくらいの余裕ができました。
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ある日、最初に雇ってくださったリード子爵さまから、お声がかかりました。
「お呼びでございますか?」
「あぁ、先生! まずはお礼を。リゼッタがハーグリーブ伯爵家の嫡男に見初められました」
「それは、おめでとうございます」
「知人の伯爵家の養女にして嫁がせるつもりです」
「それがようございますね」
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「リゼッタは、再来月には、あちらの家に越すことになりまして…。あ、とは言っても、ここから近いタウンハウスです」
これでおしまいかしら…と、何も言えずにおりましたら、子爵さまがこう続けられました。
「あちらのお家に行っても、娘の家庭教師を続けていただきたいことと、もう一つ、あちらにも小さな娘さんがおりましてな」
「はい」
「むこうの奥様が、『ぜひ、うちの娘の家庭教師も』と仰っている」
「ありがたいことでございますわ」
「領地にいることが多いゆえ、飛び飛びになるかもしれんが…、あなたならうまくやるでしょう」
「承知いたしました」
「旦那様、ザックが参っております」
話が終わるのを見計らって、執事が声をかけます。
子爵さまが「今行く」と返事されたあとに私に向き直り、再び頭を下げられました。
「本当に本当にありがとうございます。何もかも先生のおかげです」
「お嬢様の努力が素晴らしかっただけですわ」
「いえ、見事なお導きでした。改めてお礼をさせていただきます。では」
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本来なら出会わなかった関係…身分については何も言及せず、ただ私を褒めてくださったことがありがたいのです。
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