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番外編 母イリス
イリスのこれから
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「先生!」
「あ、おばちゃま!」
ああ、助け舟です。リゼッタ様がリノ様の手を引いて部屋へ入ってきました。
リゼッタさまが反射的に淑女の礼をします。
「リゼッタ様、あなたさまは伯爵令嬢となられました。今後、私に礼は不要です。けれど、また美しい所作になりましたね」
「ありがとうございます。先生にそう言っていただけるのが嬉しいのですが、今後は気をつけますわ」
立派になった生徒に微笑みを返します。
「リノ、あなたの先生よ」
「おばちゃま、先生になってくれるの?」
キラキラした目でカーテシーを真似ていたリノ様に、私は優雅にカーテシーをします。
そして、しゃがんでリノ様と同じ目線になって語りかけました。
「はい。リノさま。よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いします! リノにはお姉さまができたの!」
「それはようございました。嬉しいのですね」
「うん!…あ、はい!」
リノさまが「うん」と言った瞬間に、リゼッタ様が小さな声で「はい」とおっしゃいました。
よい関係を築けているようです。
「とても良いお返事ですね。リノさま。上手ですよ」
「はい!」
リノさまがリゼッタさまを見て、幸せそうに笑いました。
私が心を砕いていれば、リヒトとカイもこのような兄弟だったかもしれません。
「リゼッタさまも教え方が上手なのですね。もうそろそろ、私が教えることはないかもしれません」
「そのようなことをおっしゃらないでくださいませ。まだまだ先生に教えていただきたいことがたくさんあります。
ねぇ、お義母さま」
「ええ、私も楽しみにしています」
エレン様の微笑みに、私は緊張がほぐれていたのに気づきました。
◆◆◆
自宅へ戻り、小さな丸いランタンを灯します。
このランタンは、エレン様を通じてリヒトがくれた、私への赦しのような気がします。
いいえ、あれほどの酷いことをした私をリヒトは赦してはくれないでしょう。
赦されなくて当然です。
それでも、この柔らかな光が、希望を感じさせるのです。
(カイにオルゴールを作ってもらおうかしら)
オルゴール作りは魔力を必要としません。カイはこの頃、少し退屈そうな様子も見せるようになってきました。
気分転換になるかもしれません。
明日のカリキュラムの準備を始めて、ふとそんな考えが頭に浮かびました。
私は、顔を上げ、大きく息を吸い込みます。
前を向いて歩きましょう。この暗い館に、再び光を取り戻すために。
今度は柔らかな光にするために。
そして、いつか、リヒトとカイに、心から謝罪をしましょう。
二人がまた仲の良い兄弟に戻る日が来ることを願って。
【第2部 母イリスの章 了】
「あ、おばちゃま!」
ああ、助け舟です。リゼッタ様がリノ様の手を引いて部屋へ入ってきました。
リゼッタさまが反射的に淑女の礼をします。
「リゼッタ様、あなたさまは伯爵令嬢となられました。今後、私に礼は不要です。けれど、また美しい所作になりましたね」
「ありがとうございます。先生にそう言っていただけるのが嬉しいのですが、今後は気をつけますわ」
立派になった生徒に微笑みを返します。
「リノ、あなたの先生よ」
「おばちゃま、先生になってくれるの?」
キラキラした目でカーテシーを真似ていたリノ様に、私は優雅にカーテシーをします。
そして、しゃがんでリノ様と同じ目線になって語りかけました。
「はい。リノさま。よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いします! リノにはお姉さまができたの!」
「それはようございました。嬉しいのですね」
「うん!…あ、はい!」
リノさまが「うん」と言った瞬間に、リゼッタ様が小さな声で「はい」とおっしゃいました。
よい関係を築けているようです。
「とても良いお返事ですね。リノさま。上手ですよ」
「はい!」
リノさまがリゼッタさまを見て、幸せそうに笑いました。
私が心を砕いていれば、リヒトとカイもこのような兄弟だったかもしれません。
「リゼッタさまも教え方が上手なのですね。もうそろそろ、私が教えることはないかもしれません」
「そのようなことをおっしゃらないでくださいませ。まだまだ先生に教えていただきたいことがたくさんあります。
ねぇ、お義母さま」
「ええ、私も楽しみにしています」
エレン様の微笑みに、私は緊張がほぐれていたのに気づきました。
◆◆◆
自宅へ戻り、小さな丸いランタンを灯します。
このランタンは、エレン様を通じてリヒトがくれた、私への赦しのような気がします。
いいえ、あれほどの酷いことをした私をリヒトは赦してはくれないでしょう。
赦されなくて当然です。
それでも、この柔らかな光が、希望を感じさせるのです。
(カイにオルゴールを作ってもらおうかしら)
オルゴール作りは魔力を必要としません。カイはこの頃、少し退屈そうな様子も見せるようになってきました。
気分転換になるかもしれません。
明日のカリキュラムの準備を始めて、ふとそんな考えが頭に浮かびました。
私は、顔を上げ、大きく息を吸い込みます。
前を向いて歩きましょう。この暗い館に、再び光を取り戻すために。
今度は柔らかな光にするために。
そして、いつか、リヒトとカイに、心から謝罪をしましょう。
二人がまた仲の良い兄弟に戻る日が来ることを願って。
【第2部 母イリスの章 了】
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