捨てられた魔法道具師は天才だった。究極の道具で国を救いますよ?

みなわなみ

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番外編 カイの目覚め

リヒトとカイ

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 リノが事故にあった一か月後、リヒトは家族を連れてカイの病室を訪れた。

 王都の英雄である兄が、何故こんな場所に、とカイは顔を歪める。
 だが、リヒトは穏やかな表情で、カイの前に立った。

「カイ、話があるんだ」

 何をしに来たかわからないリヒトに、カイはただ黙っている。

魔道具キャリパーに魔力を注いてくれているんだね。ありがとう」
「……」
「リノ、おいで」

 ドアの近くでエレンとともに立っていたリノが、ベッド近くへ進む。

「お前の叔父さまで、命の恩人だ」
「おじさま!リノです。ありがとうございます!」

 あどけない笑顔を見せるリノに、カイは首をひねる。

「カイ、礼を言う。一か月前、リノは、俺の娘は、大怪我を負った。命に係わるほどの。
…でもな、カイが助けてくれたんだ。お前の魔力を注いだ魔道具キャリパーが癒してくれた。その魔導士も、カイ様の魔力だから力が一番発揮できると言っていた。
 ありがとう。本当にありがとう…。リノがこうやっていられるのはカイのおかげだ…感謝する…」
「僕は英雄様の魔道具に魔力を注いだだけだ」

 自嘲気味にカイはつぶやいた。

「実は、カイのような魔力を探していた」
「…なんだと?」
「夜の間広く王都を照らす魔道具を作る計画があるんだ。
それは広範囲なので、魔石を使わなくては魔力のバランスが崩れてしまう。
そのためには、どうしても純粋で質の高い魔力を流した魔石が必要なんだ。いろんな人にお願いしたけれど、カイのように淀みなく素晴らしい魔力は見つからなかった」

 リヒトは、ゆっくりと続ける。

「私が王都を救えたのは、アポクリフォスという、魔力を無に帰す剣があったからだ。
この剣は、魔力のない私だからこそ使えた。
でも、私はリノの怪我の前には無力だった。魔力を貯められる魔道具マナ・キャリパーは作れても、貯める魔力はなかった。
助けてくれたのは、カイの魔力と魔導士たちの力だ」

 リヒトはリノを抱きかかえ、彼女の小さな手をカイに見せた。

「カイの魔力は無意味じゃない。
リノが元気に走り回れるのは、カイが魔力を込めた魔道具キャリパーのおかげ。今度作る魔道具もカイの魔力がないと完成しない。私は、カイの魔力がなければ、何もできない」

 その言葉に、カイは息をのんだ。
 リヒトは、自分の功績を誇るのではなく、自分の無力さを語り、そして、カイの存在が、どれだけ重要かを語っていた。

「叔父様、あれはなぁに?」

 リノが小さな箱を指さした。

「オルゴールだね」

 カイに代わってリヒトが答える。

「オルゴールも作っているんだね。私はカイの作るオルゴールが好きだったよ。
とても温かい音がしていた。カイは、私とは違う才能を持っているんだなといつも思っていたよ」

 エレンが、小さな男の子を抱いてベッドに近づく。

「はじめまして。エレンと申します。この子を見ながら、主人は近頃、小さな頃のカイ様の話をよくしております」
「フィオというんだ。何故だか、魔力がありそうで。
私には魔力がないから、時期が来れば魔力の使い方とか教えてくれないか」

 その言葉に、カイの瞳から、一筋の涙が溢れ出した。
 彼は、自らの才能を誇り、リヒトを見下していた過去の自分を思い出した。
 そして、今、その兄に、心の底から感謝されている。

「…兄さん…僕は…僕は、兄さんに…」

 言葉にならない嗚咽が、カイの喉から漏れた。リヒトは、そんな彼の肩に手を置いた。

「カイ。もう一人で背負わなくていい。一緒にやろう」

 その温かい手に、カイは震える手で頷く。
 カイの肩に置かれたリヒトの手は、かつてのようにお互いを競い合わせるような冷たさではなく、確かな絆と温かさを感じさせた。

 カイは、自分の居場所を、再び見つけた。

 それは、アルバス家の後継者という重圧でもなく、ましてや英雄の影でもない。
 ただ、リヒトの弟として、そして、彼の最高のパートナーとして、存在する場所だった。


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